第4節 欧州 【総論】  2003年の欧州では、イラク問題をめぐってフランスやドイツ等と、英国やスペイン、及び欧州連合(EU)加盟を控えた中・東欧諸国等との間で立場が分かれ、欧州各国間の関係にも様々な影響を及ぼした。しかし、欧州各国は平和、自由、民主主義、法の支配、人権の尊重などの基本的価値観を共有しており、2003年も、欧州憲法条約の案文をめぐる交渉などのEU統合の深化やEU拡大に向けた動きが進んだ。また、イラク問題についても、イラク復興における国際協調の必要性については意見の一致を見ている。  現在、15か国により構成されているEUは、2004年5月に新たに中・東欧・バルト諸国等10か国が加盟し、25か国、人口4.6億人、日本の約2倍の国内総生産(GDP)を擁することとなる予定である。国際社会が直面するグローバルな諸課題への取組に関し統合と拡大を進めるEUは国際社会における影響力を一層増していくと考えられる。したがって、日本の外交を国際社会において効果的に進めていくためには、EUとの戦略的なパートナーシップを強化し、協調関係を進展させていくことが重要である。  また、日欧関係をさらに強固なものとし、日本外交の幅を広げていくためには、このようなEUとの関係のみならず、欧州各国との二国間関係の強化・推進を進めることが必要である。国連安全保障理事会常任理事国である英国やフランス、G8のメンバーであるドイツやイタリアといった欧州主要国との関係強化はもちろんのこと、経済的重要性を増している中・東欧諸国や国際社会での役割を強化しつつあるスペインやノルウェー等の諸国とも、政治・経済の両面において良好な関係を構築し、人的・文化的交流を深めていくことも重要である。  このような認識の下、2003年を通じ、日本は、EUや欧州各国と積極的に対話と協力を行った。今後も引き続き、日本の外交政策に対する理解促進と日欧関係の強化に努力していく。