【活発な地域経済統合の動き】  中南米諸国は、自由貿易協定(FTA)をはじめとする経済連携関係の強化を通じ、各国の経済発展を促すとともに、国内の構造改革を促していくとの経済戦略を取っており、また、地域経済統合の強化を通じグループとしての国際的な発言力、影響力を高めてきている。  米州においては、1990年代初頭より、北米自由貿易協定(NAFTA)や南米南部共同市場(メルコスール)、アンデス共同体などの多国間の地域経済統合に加え、数多くの二国間・地域間の自由貿易協定が締結されてきており、2003年にも活発な動きが見られた。  米州全体(キューバを除く)を包摂する米州自由貿易地域(FTAA)の創設に向け、11月にマイアミで閣僚会合が開催され、2005年1月までの交渉妥結を確認するとともに、全締約国に共通して適用される最低限の義務を定め、それ以上の自由化等については個別交渉を認める枠組みが合意された。FTAAが成立する場合には、世界最大(人口8億人、GDP合計約12兆ドル)のFTA圏が誕生することになり、域内の経済発展にも寄与することが期待される。  FTAA交渉をにらみつつ、中南米地域では、二国間・地域間のFTA及び中南米諸国と域外国とのFTA交渉が進展している。特に、米国に対抗するブラジルは、メルコスールの団結の強化、及びメルコスールとアンデス共同体の連携強化(12月にFTAに合意)を通じた南米諸国の団結を目指すとともに、メルコスール・EU間のFTA交渉をはじめとする域外との経済連携に努めている。地域経済統合を進展させる中で、ブラジルは中南米における政治力の強化を図っており、また、域外の開発途上国、特にインド、南アフリカ等との関係強化や、世界貿易機関(WTO)カンクン閣僚会合におけるG20の結成等を通じ、国際場裡での発言力を高めつつある。一方、米国は、メキシコ、カナダ、チリと既にFTAを締結しているほか、2004年1月には中米5か国との中米自由貿易協定(CAFTA)交渉を妥結している。さらに、アンデス共同体のうちベネズエラを除く4か国、ドミニカ共和国、パナマとのFTA交渉の開始を発表した。  このような経済連携の進展により、中南米全体で日本企業が欧米企業等との競争上不利な立場に立たされかねない状況が出てきている。実際、メキシコとのFTAが存在しないことにより、メキシコにおいて日本企業が欧米企業に比べ競争上の不利益を被っている。日本は、その解消のための法的枠組みを整備すべく、メキシコとの経済連携協定交渉を行っており、2004年3月には両国の関係閣僚間で協定の主要点について大筋合意に達した。  現在の日本と中南米諸国との経済関係は、豊富な鉱物・エネルギー資源や高い食糧生産力に恵まれた中南米の潜在力に比して、低い水準にとどまっている。前述の中南米地域における地域経済統合の進展と域外国との連携強化の動きも踏まえつつ、日本と中南米との経済関係を強化していく必要がある。FTAに特に積極的なチリとの間では、11月に第1回日本・チリ二国間経済協議を実施し、両国の貿易・投資関係等の更なる強化に向けた話し合いを行った。また、地域経済共同体であるメルコスール、カリブ共同体、中米統合機構との定期協議や、東アジアと中南米の関係強化を目的とする東アジア・ラテンアメリカ協力フォーラム(FEALAC)への参加等を通じ、中南米との幅広い関係強化に努めている。2004年1月30日、31日にフィリピンのマニラで開催された第2回FEALAC外相会合には、日本から阿部外務副大臣が出席した。 米州における地域経済統合