【カナダ情勢】  内政面では、11月14日、与党自由党の党大会が行われ、ポール・マーティン下院議員(前財務大臣)が新党首に選出された。12月12日にはクレティエン首相が退陣し、同日マーティン自由党党首が新首相に就任した。  国内経済は、カナダ経済の中心地であるトロントを中心とした重症急性呼吸器症候群(SARS)の発生、BSEの発生、及びカナダ・ドルの対米ドル高等の影響により、2003年第2四半期にはマイナス成長(年率マイナス1.0%)を記録したが、個人消費と民間固定資本形成の伸びにより1四半期でプラス成長(年率1.3%)に転じた。ただし、輸出の減少が大きく影響し、2003年通年でのGDPの伸び率は1.7%(速報)と前年の半分の水準であった。財政面においては、上記要因等による歳入の減少とSARS対策やBSE対策などを含む追加的財政需要への対応により財政黒字見込額は減少したものの、2003年度においても1997年度以降の財政黒字が継続すると予想されている。  外交面では、3月の米英軍による対イラク武力行使に際し、クレティエン政権は安保理決議がないことを理由に支持せず、参加しないことを決定したが、その一方で、イラクの戦後復興に関し、輸送機を人道物資輸送に提供したほか、復興のための資金として3億カナダドル近い貢献を表明した。また、アフガニスタンにおけるテロとの闘いのための協力を通じて、国際社会へ貢献する立場を強調した。なお、一般にクレティエン首相は、対イラク武力行使への不参加によって、対米関係を後退させたと評価されているが、マーティン新首相は、首相就任以前から対米関係を改善する意向を表明しており、両国の関係の進展が期待されている。