2 2003年における動き (1)イラク問題に対する日本の基本的認識  イラク問題は日本の国益に直結する重要な課題であるとの認識の下、日本は積極的に取り組んできている。日本は原油供給の9割近くを中東地域に依存している。また、イラクは日本の1.2倍の国土に2,400万人あまりの人口を有する中東の大国であり、イラクの安定なしには中東地域の安定は確保できない。イラクの復興と安定は日本のエネルギー安全保障と繁栄にとり不可欠である。  加えて、テロとの闘いが継続し、大量破壊兵器の拡散防止が緊急の課題となっている昨今、イラクの復興が成功せず、テロ活動の拠点や大量破壊兵器の拡散の源となる破綻国家と化せば、日本を含む国際社会全体にとって重大な安全保障上の脅威となる。特に豊富な石油資源を有するイラクがテロリストの巣窟となり、彼らが大量破壊兵器を手にすると、その脅威は一段と大きなものとなることから、日本をはじめとする国際社会はテロに屈することなくイラクの復興支援に取り組んでいく必要がある。  イラク問題には国際社会が一致協力して取り組んでいくことが極めて重要であるとの考えから、日本は国際社会の協調体制の構築に向けて一貫して努力してきた。また、イラクの具体的将来を描きイラク国民に将来の希望を与えることが必要であり、戦後の廃墟から今日の繁栄を築いた日本が、混乱の中で復興に向け努力しているイラクに対してその国力に相応しい貢献を行うことは国際社会において果たすべき責務である。こうした認識を踏まえ、当面の支援として15億ドル、2007年末までの復興需要に対して、最大50億ドルの資金協力を行う旨表明しており、2003年末の時点で既に1億ドル近い人道・復興支援をイラクに対して実施決定済みである。また、7月に成立したイラク人道復興支援特別措置法に基づき、人道・復興支援活動を中心とした活動を行うため自衛隊の派遣を行うなど人的貢献も行っている。小泉総理大臣は、このような貢献を行うことについて、自衛隊の派遣を閣議決定した12月9日の記者会見において、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない(略)」と憲法前文の一部を引用して、日本として、この憲法の理念に沿った活動が国際社会から求められていると説明している。