第2節 イラクをめぐる問題 1 2002年までの動き  湾岸戦争以降も、イラクは大量破壊兵器の保有・開発疑惑を指摘されながら、一連の国連安保理決議に基づく国際機関による査察を拒否・妨害し、国際社会の平和と安定に対する大きな脅威であり続けた。特に2001年9月11日の米国同時多発テロ以降、国際社会においてテロ組織支援や、大量破壊兵器、ミサイルの拡散に関わっているとされる、いわゆる懸念国による大量破壊兵器、ミサイルの保有・使用の脅威が強く認識されたことにより、国際社会の平和と安定に対する脅威としてのイラク問題への対処が急務となった。  2002年1月、ブッシュ米大統領が一般教書演説において「世界で最も危険な政権(フセイン政権)が、世界で最も破壊力のある兵器を用いて米国を脅かすことを許しはしない」と述べて以降、イラクをめぐる緊張が再び高まった。同年9月の国連総会一般討論演説において同大統領は、イラクの安保理決議の不履行を指摘し、安保理を通じた問題解決の必要性を強調する一方で、イラクが不誠実な対応に終始する場合には、行動は不可避との考えを明確に示した。国際的圧力を前にイラクは、9月16日、無条件での査察の受入を表明した。これを踏まえ、11月8日、国連安保理はイラクに対し最後の機会を与え、すべての場所に即時・無条件・無制限の査察が例外なく実施されるべく強化された査察を受け入れることなどを強く求める安保理決議1441を全会一致で採択した。イラクは同決議の受諾を通報し、11月27日、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)及び国際原子力機関(IAEA)による査察が約4年振りに再開される運びとなった。 イラク情勢クロノロジー