第1章 総括 2003年の国際情勢と日本外交 第1節 概観 1 2003年の国際情勢 【総論】  2003年は、イラクへの武力行使とその後の同国に対する復興支援への取組、イスラム過激派による相次ぐテロ及び北朝鮮問題への対応が国際社会にとっての大きな課題となった。イラクと北朝鮮に共通するのは大量破壊兵器やミサイルの拡散疑惑であり、この意味で2003年も国際社会の主たる関心はテロとの闘いと大量破壊兵器等の拡散防止にあったといえよう。  対イラク武力行使をめぐっては各国の立場の違いが表面化し、2001年9月の米国同時多発テロ以降、テロとの闘いにおいて維持されてきた国際協調体制が転機を迎えた一年となった。このような中で、同盟国である米国との緊密な連携の維持・強化という目標と幅広い国際社会の協調の実現という目標とをいかに両立させていくかが日本外交にとっての課題となった。また、国際協調体制が転機を迎えたことにより、国際社会全体の統治のあり方(グローバル・ガバナンス)が問われることになった。この関連で、世界唯一の普遍的・包括的な国際機関である国連が、イラクへの武力行使をめぐる安保理の分裂により期待された役割を十分に果たせなかったとの認識が広がり、そのため、国連のあり方が問われることとなり、国連改革の必要性が国際社会において強く意識されるようになった。  さらに、2003年は、世界各地で頻発するテロや重症急性呼吸器症候群(SARS)の急速な拡がり等国際社会が一致して取り組まなければならない諸問題の重要度が一層増した一年でもあった。また、牛海綿状脳症(BSE)や2004年に入って流行している鳥インフルエンザのような感染症による人体や「食」の安全への脅威の拡大といった問題へのグローバルな対応が、21世紀の国際社会が直面する課題であることを広く認識させた年としても記憶されよう。