第2章 地域別に見た外交 

2 中央アジアとコーカサス

 中央アジア及びコーカサス諸国は、独立当初から政治的・経済的困難に直面しながらも一様に民主化・市場経済化を推進してきたが、独立後12年を経過した現在、政治・経済両面における多様化が進行している。中央アジア及びコーカサス諸国では独立後もソ連時代からの指導者が政権を率いる国が多いが、アゼルバイジャンやグルシアのように新世代の指導者も現れはじめた。経済面ではエネルギー資源の有無等により経済格差が増大する傾向にある。
 中央アジア及びコーカサス諸国はロシア、中国、南西アジア、中東に接するとの地政学的条件や豊富なエネルギー資源に恵まれた地域であり、その安定と発展はユーラシア大陸全体の安定と繁栄にとり極めて重要である。このような観点から、日本は、これら諸国が安定的で市場経済化を指向する民主的な国造りを推進することを重視しており、これまで、〔1〕政治対話、〔2〕経済協力・資源開発協力、〔3〕平和のための協力を三本柱として関係強化に取り組んできた。
 現在、これら諸国をめぐっては、米軍の中央アジア駐留や、ロシア、中国の動きなど戦略環境に大きな変化がみられる。このような状況を踏まえ、日本は、国際社会の責任ある一員として、この地域全体の安定に寄与することが重要であり、政府としては今後とも中央アジア及びコーカサス諸国との関係強化に努める方針である。
 2003年1月、日本は中央アジアで4公館目となる在キルギス大使館を開設したほか、土屋外務大臣政務官のウズベキスタン及びキルギス訪問(1月)、矢野外務副大臣のカザフスタン及びアゼルバイジャン訪問(2月)、ラフモノフ・タジキスタン大統領の訪日(3月)、森前総理大臣のカザフスタン訪問(6月)、サファーエフ・ウズベキスタン外務大臣の訪日(12月)等、活発なハイレベルでの人的交流を行った。
 2003年の地域情勢としては、グルジアにおける政変が特筆される。カスピ海のエネルギー資源を欧州等に輸送する際の要衝にあるグルジアは、NATO加盟を目指すなど親欧米路線をとる一方、アブハジア問題や隣接するロシア連邦チェチェン共和国の独立派武装勢力をめぐりロシアと緊張関係にある。政権内の腐敗及び経済停滞に対し国民の不満が高まっていたところに実施された議会選挙(11月)は野党勢力による政権弾劾を招き、遂にはシェヴァルナッゼ大統領の退陣に至った。2004年1月に行われた大統領選挙においては野党統一候補のサーカシヴィリ氏が圧倒的な得票で当選し、国際選挙監視団(日本の選挙監視員を含む)を派遣した欧州安全保障協力機構(OSCE)が11月の選挙に比べ全般的に顕著な改善がみられた旨評価するなど主要国の歓迎を受けた。このように野党勢力の運動が流血を伴うことなく政権交代を促したのは中央アジア及びコーカサス諸国では初めてのことであり、この地域全体にとり画期的な出来事であった。
 その他では、アゼルバイジャンにおける政権交代(ヘイダル・アリエフ大統領が倒れ(その後逝去)、10月の大統領選挙で子息のイルハム・アリエフ氏が当選)、2001年以降米軍が駐留するキルギスにロシアが新たに空軍基地を開設したことが注目される。
 また、地域協力の動きとしては、カザフスタンがロシア、ウクライナ、ベラルーシとともに統一経済圏の創設につき合意した(2月)こと等が挙げられる。

 
▼在キルギス日本大使館開館に伴いアカーエフ・キルギス大統領と会談する土屋外務大臣政務官(1月)

▼在キルギス日本大使館開館に伴いアカーエフ・キルギス大統領と会談する土屋外務大臣政務官(1月)

 

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