第2章 地域別に見た外交 

【対外関係】
 ブッシュ大統領は、2003年年頭の一般教書演説において、外交の重要課題としてテロとの闘い、大量破壊兵器等の拡散への対抗、イラク、北朝鮮、アフガニスタン、中東和平、イランを挙げ、2002年に引き続きこれらへの取組を推進した。
 大量破壊兵器等不拡散の分野では、5月31日、ブッシュ大統領は、訪問中のポーランドで、大量破壊兵器等関連物資の拡散を阻止するための「拡散に対する安全保障構想(PSI)」を発表した。米国はその後の数次にわたる訓練等に日本を含む参加国とともに積極的に取り組んでいる。
 イラク問題については、米国は、武力行使及びフセイン政権崩壊後の治安活動の中核をなしてきただけでなく、安保理における関連決議の交渉、イラクにおける政治プロセスへの関与、復興支援における主要な役割等を通じ、国際社会を主導する役割を果たしてきた。
 2003年末においても、イラクでは連合軍等に対する敵対勢力からの攻撃が継続しているが、米国は引き続き約14万人の兵員をイラクに駐留させ、掃討作戦を展開するなど治安の確保に努めている。なお、2003年11月27日、ブッシュ大統領は感謝祭に合わせてバグダッドを電撃訪問し、現地に駐留する米軍兵士を激励した。12月14日には連合軍がティクリート南方でフセイン元大統領を拘束した。現在イラクは、安保理決議上の要請に従い、ブッシュ大統領が任命したブレマー行政官率いる連合暫定施政当局(CPA)の統治下にあるが、米国はイラク国民と緊密に意見交換しつつ政治プロセスの前進に努めている。
 イラクへの対応をめぐっては、フランス、ドイツ、ロシアなどが米国と異なる見解を表明していたが、イラクでの主要な戦闘の終結後は、エビアン・サミットの際に米仏首脳会談が行われ、関係の修復に向けた努力が示されたほか、6月25日に行われた米・EU首脳協議において、米・EUの良好な関係が強調された。
 米国は、治安確保や政治プロセスに加え、対イラク復興支援においても、最大の貢献を行っている。10月にマドリードで開催されたイラク人道復興支援国際会議において、186億ドルに及ぶ支援を表明したほか、12月には、ベーカー元国務長官をイラク債務問題担当大統領特使として日本、フランス、ドイツを含む対イラク主要債権国に派遣し、これらの諸国からもイラクの債務を削減する必要性につき合意を取り付けた。
 北朝鮮をめぐる問題についても、米国は引き続き、日本及び韓国をはじめとする関係国と緊密に協力しつつ、北朝鮮の核問題の平和的解決を目指し外交努力を継続した。ブッシュ政権は、北朝鮮との二者協議に応じず、日本、韓国、中国等関係国との多国間の枠組みにおける交渉が前提であるとの立場を堅持し、4月の米朝中三者会合、8月及び2004年2月の六者会合に参加した。米国は引き続き北朝鮮による完全、検証可能かつ不可逆的な核計画の廃棄がなされなければならないとしつつ、六者会合のプロセスを通じた平和的解決を追求している。また、日本人拉致問題についても、六者会合等において日本の立場を支持してきた。
 米露間においては2003年6月、サンクトペテルブルクで行われた首脳会談で、2002年5月に署名された戦略核兵器削減に関するモスクワ条約の批准書が交換され、同条約が同日発効するなど、協調・協力関係の強化が見られた一方で、イラクやイランの核をめぐる問題等では立場の相違に基本的な変化はなかった。また、9月にキャンプ・デービッドで行われた首脳会談では、両国が諸分野において進めていく協力事項を列挙したチェック・リストが作成され、今後定期的に進捗状況がチェックされることになった。
 中国との関係では、3月の中国の胡錦濤(こきんとう)国家主席率いる新体制発足後初めての首脳会談(6月、エビアン)で、両国間の建設的協力関係を改めて確認するとともに、北朝鮮の核問題の平和的解決の重要性、ハイレベルの相互訪問の維持・発展等につき一致した。台湾問題については、ブッシュ大統領は「一つの中国」政策に関する米国の従来の立場を改めて表明した。また、12月に温家宝(おんかほう)国務院総理が訪米した際に、ブッシュ大統領は、台湾の陳水扁(ちんすいへん)総統による公民投票等への動きは、現状の変更を一方的に決定しようとしている可能性を示すものであり、これに反対であるとの発言を行った。

 

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