VII.国際機関等
6.OECD代表部 |
(1)経済協力開発機構(OECD)
OECDは、94年、経済のグローバル化に伴う様々な挑戦に対して先見性をもった効果的な対応がなしうるか否かが問われた。
失業問題については、丸2年にわたる検討を経て、94年6月の閣僚理事会に「雇用失業研究」が提出された。同研究は、規制緩和や技術革新の促進を通じた産業構造の改革、労働市場の機能強化、教育・訓練の強化等、雇用創出に向けた幅広い構造改革を提唱しており、7月のナポリ・サミットにおける議論の重要な基礎ともなった。同研究の成果を踏まえ、現在種々のフォローアップが進められている。また並行して、3月のG7雇用・失業ハイレベル会合の要請を受け、「技術、生産性及び雇用創出」に関する研究も着手された。
また、マクロ経済政策においては、景気回復の広まりに伴い、短期的な景気刺激策から、インフレなき持続的成長の中期的確保の観点から、財政・金融政策面での協調が図られた。さらに、多角的体制の強化の観点からは、閣僚理等の機会に世界貿易機関(WTO)協定の95年1月1日発効へのコミットメントをうたう一方、貿易と環境、貿易と労働基準等の新しいテーマに関する検討作業が進められている。OECDにおけるこうした作業は、必要に応じて新しい多角的ルールの策定にもつながっていくものもあり、例えば94年12月には、造船業における政府助成の削減等を規定するOECD造船協定が、5年余にわたる交渉を経て署名された。
アジア諸国等のダイナミックな経済発展や、世界的な市場経済化の進行は、OECDにとって域外国との関係をますます重要な課題としてきている。94年4月にはメキシコが25番目の加盟国として迎えられたのに続き、韓国についても、96年中の加盟を目指して、同国の準備が整うのを待って加盟交渉を開始することが合意されている。また、DNMEs(DynamicNon-Member Economies:韓国、シンガポール、マレイシア、タイ、香港、台湾、ブラジル、アルゼンティン、チリ)との対話については、10月にハイレベル非公式会合を東京で開催した。更に今後は、中国、インド及びインドネシアとの関係強化が図られる予定である。中・東欧、旧ソ連諸国との関係では、94年の閣僚理で、PIT諸国(ポーランド、ハンガリー、チェッコ、スロヴァキア)との加盟交渉が開始されたほか、初めてロシア外相との会合が開催され、同国との間で協力協定が締結された。
開発途上国との関係においては、最近の開発途上国援助の全体的減少傾向を背景に、援助の量よりも効果的・効率的な実施の観点からの検討が進められている。同様の観点から、ODA対象の基準となる開発途上国リスト(DACリスト)の見直し作業も続けられている。 94年は事務総長の改選の年に当たり、11月末、ペイユ現事務総長が1年半(96年5月末まで)、その後ジョンストン元大臣が5年間事務総長を務めることで合意が成立した。
(2)国際エネルギー機関(IEA)
94年のエネルギー情勢はここ数年来同様安定的に推移した。その中でIEAはグローバルなエネルギー安全保障の観点を踏まえて、主として地球環境問題及び非加盟国関連活動に力を注いだ。地球環境問題への対応では、94年4月にスイスのインターラーケンで同問題に関する非公式大臣会合が開催され、活発な議論が行われた。非加盟国関連活動では、メキシコ、韓国、PIT4か国の加盟申請に対する取組を開始するとともに、世界有数のエネルギー生産・消費国たるロシアとの間では、6月に協力協定が結ばれるなど、ロシアとの協力関係が顕著な進展を見た。一方、急速な経済成長とともにエネルギー消費量の増大も著しいアジア太平洋地域との協力関係の一層の強化が、今後の課題である。
なお、過去10年間にわたってIEAの長を務めたシュテーグ事務局長(独人)が94年9月に退任、11月に後任として英のプリドル元産業省次官が選出された。
(3)日本との関係
94年は日本のOECD加盟30周年に当たり、94年10月に、記念シンポジウム(テーマ:21世紀に向けての世界経済新秩序とOECDの役割)、DNMEsとの非公式ハイレベル会合、OECD新執行委(ECSS)東京会合といった一連の記念行事を東京にて開催した。IEAとの関連では、94年4月に、同機関設立20周年を記念して、京都において理事会及び記念セミナーが開催された。