VII.国際機関等

4.軍縮代表部

 94年は、核実験全面禁止条約(CTBT)交渉を中心とする軍縮交渉が精力的に行われた1年であった。これは、短期的に見れば核不拡散条約(NPT)の再検討・延長会議を95年に控え、核軍縮の分野を中心にして可能な限り軍縮の進展を図っておく必要があったためといえる。しかし、より中期的に見れば軍縮の推進は、冷戦後の世界の再構築に向けた努力の重要な要素である。
 軍縮会議(CD)に関しては、94年の最重要課題はCTBT交渉であったが、その関連では三つの大きな節目があった。
 まず第1は、日本がイニシアティヴをとり、年明け早々(1月)に交渉開始に持ち込んだことである。次の節目は、9月CTBT条約の議長案(いわゆるローリング・テキスト)が採択されたことである。各国の立場の調整がついていない箇所が多数残された案ではあるが、交渉を促進するための重要な一歩であった。第3の節目は、12月に検証手段の中核となる国際監視制度で採用する技術につき基本的に合意したことである。
 今後も可能な限り早急に交渉を妥結させるべく交渉を促進して行くことが重要である。
 その他の分野におけるCDの活動に関しては、「軍備の透明性に関する特別委員会」「宇宙における軍備競争の防止に関する特別委員会」「消極的安全保障(NSA)に関する特別委員会」が設立されたが、いずれも具体的成果は挙がらなかった。ただし、NSAに関しては、5核兵器国の間で協議が続けられているので95年早々にも具体的成果が挙がることが期待される。
 NPTの分野では、NPT再検討・延長会議の第2回準備委員会が94年1月にニュー・ヨークで、第3回準備委員会が9月にジュネーヴにおいてそれぞれ開催された。
 こららの会合では、手続問題に重点を置きつつ実質問題についても討議が行われた。その結果、会議の手続規則などについての検討が進むなどある程度の進展が見られたものの、手続事項を含めた多くの問題に決着しなかった。CTBT、NSAなど非同盟諸国が重視している分野で具体的成果を挙げ、NPTの無期限延長を円滑に行うため更なる努力が必要である。
 国連の関係では、ニュー・ヨークにおいて94年4月から5月にかけ国連軍縮委員会(UNDC)が開催され、10月から11月まで第1委員会が開催された。
 まずUNDCに関しては、「核軍縮」「科学技術の役割」及び「国際武器移転」の三つの議題が取り上げられ、特に最初の二つについては、大半の時間を割き密度の濃い討議を行ったが、コンセンサス文書の採択には到らなかった。
 第1委員会については、95年に予定されているNPT再検討・延長会議の前に開かれる最後の第1委員会であったため、熱気を帯びた会議となった。核軍縮関係の決議については、非同盟諸国が野心的あるいは対決的な決議案を提出したのに対して、核兵器国を中心とする先進国及び旧東側諸国は、核軍縮進展の機運が高まっていることを背景に、現実的立場から是々非々の態度で臨んだ。このような中で日本は、先進国の一員としての立場を貫くと同時に、唯一の被爆国としての国民世論を背景に「核兵器の廃絶に関する決議案」を単独で提出し、圧倒的多数の支持を得て採択された。NPT再検討・延長会議を来年に控え、日本が非核兵器国である先進国としての立場から核軍縮の在り方を明確な形で示したことは、日本の軍縮外交にとって大きな成果であったと考えられる。
 その他の分野では、対人地雷の規制強化を検討することを主な目的とした特定通常兵器使用禁止・制限条約に関する専門家会合(2-3月、5月、8月の3回開催)や生物兵器特別会合準備会議(4月)、生物兵器特別会合(9月)などが開催された。

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