VII.国際機関等
3.ジュネーヴ代表部 |
(1)関税及び貿易に関する一般協定(GATT)
86年に開始されたウルグァイ・ラウンド(UR)交渉は過去7年余にわたり困難な交渉を重ね、紆余曲折を経ながらも93年12月15日に実質合意を達成し、94年4月15日にマラケシュ(モロッコ)において開催された閣僚会合においてUR交渉の合意内容を確定するためのUR最終文書への参加国代表の署名が行われ、交渉は正式に終了した。また、12月8日のジュネーヴにおけるUR合意の「実施のための会合」において世界貿易機関(WTO)協定の発効日については、各国の国内手続の進捗状況を踏まえ、95年1月1日とすることが正式に決定された(UR合意の主要点等は第1分冊P60~65を参照)。
日本については、UR交渉がWTO設立として結実することは、多角的貿易体制の維持・強化にとり重要との観点から、マラケシュ閣僚会合以降WTO協定の受諾及び関連国内法案の改正に必要な国内諸手続を鋭意進めてきた結果、12月8日(ジュネーヴにおける「実施のための会合」開催前)に国会承認・可決の運びとなった。今後日本としては、WTOの下に国際貿易の安定的な発展を図るべく、新生WTOの運営及び同協定の具体的実施に当たって積極的に貢献していくことが重要である。
(2)国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
94年、難民数は約2,000万人に膨れ上がる中、2期目を迎えた緒方高等弁務官の率いるUNHCRは、モザンビークやミャンマーにおいて難民の帰還を進める一方で、旧ユーゴー等では援助要請の安全確保・アクセスの確保等の問題を抱えつつ、引き続き緊急援助・保護活動を展開した。とりわけ7月のルワンダからザイールへの難民流出は、その規模、早さにおいてかつて例を見ないものであり、UNHCRも「サービス・パッケージ」(関連分野を援助国が直接担当するシステム)を提示して調整に当たった。
日本はルワンダ難民に対する緊急援助を積極的に支援するため、資金協力に加え、国際平和協力法に基づく物資協力及び自衛隊中心の国際平和協力隊のゴマへの派遣のほか、UNHCRのPARINAC(PARTNERSHIPIN ACTION)のプロセスにも合致する形で、NGOへの財政支援も強化してきている。
(3)赤十字国際委員会(lCRC)
そもそも戦時救済の中心的機関であるICRCは、アフリカ、アジア、旧ユーゴー、旧ソ連等全世界的に、捕虜と拘留者の訪問、救援活動、医療活動等を行うと同時に、国際人道法の尊重を呼び掛けているが、日本も資金拠出を中心に協力を行っている。
(4)国連人権高等弁務官及び国連人権センター
94年2月アヤラ・ラッソ駐国連エクアドル大使(当時)が初代国連人権高等弁務官に任命された。
94年、人権高等弁務官は、ルワンダの人権状況の改善のため、人権センターによる「人権フィールド・オペレーション」のイニシアティヴをとり、人権状況の調査、監視等の目的のためにフィールド・オフィサーを現地に派遣しているが、日本は本オペレーションに対し50万米ドルの財政支援を行い、積極的に貢献している。
(5)国連貿易開発会議(UNCTAD)
従来、UNCTADは南北の対立の場となることが多かったが、92年の第8回総会以来、具体的な分析に基づき開発問題に関する対話を行うフォーラムへと変身した。94年は(あ)貿易と環境と開発、(い)ウルグァイ・ラウンド成立後の貿易機会、(う)開発における企業の役割の三つのテーマについての作業グループが新たに設置され、作業を開始することとなった。
日本としては、同機関の討議に積極的に参加するとともに、特恵関税、一次産品等の分野でのセミナーの開催につき資金面を含め支援を行っているが、今後更なる協力・貢献が求められている。