V.中近東

 カタルは、ハリーファ首長の親政下にあるが、ハマド皇太子(国防相) 体制に移行するための準備期にあり、円滑な移行を期す努力が払われている。厳しい財政事情にもかかわらず、福祉水準は維持され、社会の世俗化、欧米化も抑制された範囲にとどまり国内は平穏であった。経済面では、ガス依存への移行を更に進め、97年からの日本への液化天然ガス (LNG)輸出開始へ向け、国家的大事業の体制整備をほぼ終えた。また、関税及び貿易に関する一般協定(GATT)加盟を果たした。
 対外関係では、イエメン内戦時、GCC内で孤立しつつも、統一イエ メン支持の立場を堅持した。対バハレーン領土紛争では7月に国際司法 裁判所(ICJ)より改めて共同提訴を促す決定が出されたため、両国は それぞれの主張を再度ICJに提出した。これを受けICJは12月に審理開 始の決定をした。中東和平問題には、軍備管理ワーキング・グループ会合をドーハで開催するなど、積極的に貢献している。欧米との関係では、米国との間で、92年の防衛協力協定から更に一歩進め、情報、査証、航空安全等の諸協定を結ぶなど急展開を見せたほか、仏とも8月に防衛協力協定を締結した。
 日本との関係では、LNG分野で中部電力が年間400万トンの買付契約 に調印したのに加え、本邦の電力・ガス7社が年間200万トン追加購入 の方向を決めた。11月には皇太子同妃両殿下がカタルを公式訪問された。

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