V.中近東
81年以来の長期政権を維持しているムバラク政権にとって、内政上の最大の課題はイスラム過激派対策及び経済改革である。過激派対策については非常事態法の適用を更に3年間延長するなど、エジプト政府は強硬な姿勢で臨んだ。その取締りの結果、ガマーア・イスラミーヤ等の過激派によるテロは前年に比し減少した。また、9月のカイロにおける「国際人口・開発会議」を成功裡に開催し、内外に治安の良さを誇示した。また、91年以降、世銀、IMFと協調して取り組んでいる経済改革は、財政赤字削減、インフレ抑制、対外収支の安定といった面で一定の成果を上げたが、低成長に伴う失業の増大、経済自由化に伴う貧困層の圧迫といった難問が課題として残っている。
対外関係では、エジプトは、アラブ及びアフリカにおける大国としての主導的役割の遂行とキャンプ・デーヴィッド合意以来の緊密な対米関係の堅持を基軸としつつ、中東和平後も地域の大国としての役割を担うべくより積極的な外交を模索し始めている。
エジプトは、中東和平プロセスにおいて積極的にイスラエルとアラブの間の仲介努力を行っており、94年にはパレスチナ・イスラエル間のガザ・ジェリコ合意達成に尽力したほか、シリア・イスラエル交渉においても、シリアとの緊密な接触を通じて関係諸国間のパイプ役を果たさんとしてきた。
EU諸国との関係強化にも意を用いており、94年にはムバラク大統領
は欧州諸国を2度訪問した。
日本との関係では、5月に柿澤外務大臣が、また、9月の国際人口開
発会議カイロ開催の際に河野副総理兼外務大臣がエジプトを訪問するなど、高いレベルでの二国間の政治対話が進展した。また、エジプトは日本の経済協力における重点国であり、93年(暦年)の支出純額ベースで、無償資金協力の供与先としては第3位の地位を占めた。「おしん」の放映等を契機に一般国民のレベルを含め対日関心はますます高まっている。