V.中近東
イエメンは、90年5月に南北統一が達成されたが、サーレハ大統領を含む旧北イエメン出身者が独断専制の動きを強めているとの不満がイエメン社会党(YSP、旧南イエメン指導部)内に高まったため、南北間の確執が顕著になり、93年8月よりビード副大統領、アッタース首相等YSP幹部がアデン(旧南イエメンの首都)に引きこもったままという
深刻な政治危機が生じていた。これを打開すべく国内政治勢力間の対話委員会がまとめあげた政治合意が94年2月調印されたが、実行に移されず、5月旧南北勢力間の内戦に突入した。国連安保理は6月即時停戦と対話による政治的解決を求める決議を採択した。最終的には、軍事的に優勢な政府軍が旧南軍を南部・東部各州から駆逐し、7月最後のアデンが陥落して内戦は終結し、ビード副大統領以下YSP幹部は国外へ逃亡した。
何とか統一を維持したサーレハ政権は、憲法を改正し、複数政党制の定着、地方分権の拡大、経済・行政改革に力を入れんとしており、アデンを冬の首都と宣言して南部に重点を置いた戦後復興と国内経済の立て直しに取り組みつつあるが、必要資金の調達もままならず、少なくとも数年は苦難の道を歩まざるを得ないと見られる。また、歴史的対立関係にあるサウディ・アラビアとは新しいページを開きたいとして関係修復への意図を表明しているが、両国国境付近では、時折、軍事的緊張が見られてきている。