V.中近東

 89年の国内正常化プログラム「ターイフ合意」に基づき、シリアの影響力の下(現在4万人のシリア軍が継続駐留)民兵組織の解体・政府権限の強化といった国内正常化が着実に進んでいる。
 92年10月ハリーリ政権が誕生し、世銀、サウディ・アラビア、アラブ諸基金、イタリア、欧州連合(EU)等の援助により復興計画が作成されたものの、和平交渉の遅れ及びプロジェクトをめぐる宗派間の思惑の違いもあり、その実施は大幅に遅れている。しかし、年初の旧商業地区復興会社の資本金公募の好評、また、年央の政府によるユーロ・ドル債発行により、レバノン国民の政府への信頼感は高まっている。
 対外関係では、レバノンはシリアの強い影響下にあるため、和平交渉についてもシリアと緊密に連絡をとりつつ進めている。また、国内でもヒズボラ等による南レバノンでの戦闘、パレスチナ人同士の内輪もめ等の消極的な要素がある。したがって、レバノンにおける平和、安定は中東和平の進展と密接に関係している。そのほか、93年に引き続きアラブ湾岸諸国、欧米各国要人(イタリア、英、独、仏等の閣僚クラス)の訪問、商業使節団の来訪があり、各国との関係も強化されつつある。
 日本との関係は、これまで内戦と政情不安のため経済協力をはじめ極めて限定的であったが、情勢の好転に伴い、日本とレバノンとの関係強化、復興計画への経済・技術協力を行うため大使館を95年2月に再開した。

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