V.中近東
国家最高委員会は、1月国民会議を開催し、今後3年間を正常な憲法体制復帰までの移行期間とし、その間国家を統治する大統領、政府、移行期国家評議会(国会に当たる)の権能を定めた「移行期間に関する国民合意綱領」を採択した。また、同月、ゼルーアル国防相が大統領に就任した。
しかし、移行期国家評議会には主要政党は参加せず、また、イスラム原理主義過激派によるテロ活動が続き、一般市民のみならず外国人もその対象となるなど治安状況が悪化した。このため、大統領は8月、主要政党との政治対話の再開、またテロ停止を目的に旧FIS(注)幹部との接触を行ったが、特に進展なきまま、大統領は、10月末、大統領選挙を95年末までに実施すること、及び今後とも断固としてテロリズムと戦う旨
経済面では、石油価格の低迷による経済危機及び累積債務問題を打開するため、政府は4月にIMFと構造調整計画に合意し、6月にパリ・
クラブとの債務繰延べに合意した。政府はIMFとの合意に基づいて市
場経済化に向けた政策を推進しているが、4月に実施された40%の通貨
切下げなどが物価の上昇を招き国民生活を圧迫している。
対外関係では、モロッコとの関係において8月マラケシュ等で発生し
たテロ事件を契機に、両国が相互に査証取得を義務づけ陸路国境も閉鎖するなど、悪化が見られたが、その後修復に向かっている。
(注) FIS:イスラム教国戦線、91年12月に行なわれた国会議員選挙第1回投票で圧勝したが安全保障高等評議会により92年1月同選挙は中止され、FIS党員の大量逮捕、同党支持者と治安当局との衝突の発生等で混乱、2月9日全土に非常事態が宣言され、FISは4月29日最高裁判断により非合法化された。表明した。