V.中近東

 国連制裁が強化される中で、94年9月リビアは革命25周年を祝ったが、右式典への外国元首の出席が近隣4か国に留まったことは、リビアのおかれた孤立状況を何よりも物語った。カダフィ大佐は、年頭来国内各地を精力的に行脚して各部族及び各地域住民指導層からの忠誠の誓いを取り付けるなど、体制の安定に向け努力した。経済・社会面では、制裁の影響下で、実効的な対策が実施されなかったことから、インフレの昂進、汚職の拡大、ヤミ市場の急成長など、更に悪化した。
 リビア外交の課題は94年も、いかに国連安保理決議に基づく制裁による現下の苦境から脱するかであったが、解決に向かう兆候も表れていない。また、リビアは、中東和平プロセスに反対を唱え、イスラエルとの和平を進めているアラブ諸国に対する非難を繰り返した。また、チャドとの国境紛争については、2月にリビア軍撤退を決めたICJ判決が下り、リビアは同判決を遵守した。
 日本との関係では、日本も対リビア制裁国連安保理決議を遵守する立場より、政治的関係の拡大を行っておらず、経済関係についてもこれを反映して大手商社2社の事務所が閉鎖されるなど後退している。

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