V.中近東
93年6月及び9月の国民議会総選挙後1年余が過ぎたが、政党内閣は未だ誕生せず、若年層の失業問題、貧富格差の是正等、社会面の改善も進んでいないため、ハツサン国王は国民の不満を解消するべく3月以来、野党に首相を渡し、組閣させるとの政権交替構想を打ち出す一方、政治犯の恩赦を実施するなど、民主化、人権尊重政策を採っている。また、住宅20万戸建設計画、青少年の雇用促進、農村開発等の社会政策を発表した。
経済面では、83年以来の構造調整政策が顕著な成果を上げている。経済成長率は年平均3.4%(84-93年平均)の水準にあり、特に94年は良好な農業生産によって11%の成長が見込まれている。また、財政赤字(対GDP)は82年の12.3%に対して93年は2.3%、経常収支赤字(対GDP)は82年の12.9%に対して93年は2.0%、物価上昇率は82年の105%に対して93年は5.2%、外貨準備高は83年の3.8億ドルに対して93年末には38億ドルへと改善された。
このような状況を踏まえて、政府は経済政策を国家主導から民間主導に移行させつつあり、国営企業の民営化、金融自由化、為替自由化等の政策を推進している。
対外関係面では、モロッコは、地中海沿岸における穏健・安定勢力としてその重要性が見直されている中、94年には、4月にマラケシュでガット・ウルグァイ・ラウンド閣僚会合を、10月にはカサブランカで中東・北アフリカ経済サミットを、更に12月には同じくカサブランカで第7回イスラム首脳会議(OIC)を各々開催、いずれも成功させ、国際的に評価と信頼を高めた。
また、中東和平プロセスの進展をにらみ、いち早くイスラエルとの間で相互に連絡事務所を開設する一方、パレスチナのガザにも連絡事務所を開設した。
最大の外交案件である西サハラの領有をめぐる問題は、国連の和平プランに基づく住民投票のめどが未だたっていない。
アルジェリアとの関係においては、8月にマラケシュ等で発生したテロ事件を契機に一時緊張したが、その後回復に向かっている。
日本との関係では、4月に羽田副総理兼外務大臣がGATTウルグァイ・ラウンド閣僚会議出席のため訪問した。