V.中近東
政治的にはこれまで政権を担当してきた保守及び革新を含む主流政党に対する不満から、3月に行われた統一地方選挙ではイスラムの尊重を主張する福祉党(RP)の躍進が見られた。また、クルド人の非合法テロ組織であるクルド労働者党に対する軍事的掃討が行われるとともに、親クルドの民主党(DEP)に対する国会議員の不逮捕特権の剥奪等の一連の動きをめぐって、欧米よりトルコの人権問題に対する圧力が増大した。
経済面では、トルコ通貨の大幅下落等により、悪化・低迷した。政府は4月に経済安定化プログラムを発表し、IMFとスタンド・バイ取極を結ぶなどの対策を講じるとともに、長年の懸案であった国営企業民営化法案も成立させた。この対策は相応の成果を挙げ、経済は当面危機を脱したものと見られる。
対外関係における至近の重要課題は欧州連合(EU)との関税同盟加盟である。また、民族、歴史、宗教等の観点から関係が深く、また、トルコの安全保障上も重要な中央アジア、コーカサス地域及びバルカン、特にボスニア・ヘルツェゴヴィナ地域に高い関心を有しているほか、中東和平プロセスの進展に伴い中東諸国との経済関係強化を目的とした首脳外交も活発に行われた。対米関係については、米国議会等による人権問題に係る対トルコ批判にかかわらず、今後もトルコの対外関係の基軸であり続けると見込まれる。
日本との関係においては、トルコ各界との人的交流が活発化しており、トヨタ自動車の進出等日本からの民間投資も増えるなど、両国の関係は拡大基調にある。