V.中近東

 94年、政府は影響力を増しつつある原理主義勢力への対応に腐心した。しかし、国民議会において一部原理主義議員が主張していた憲法の改正や男女共学を禁止する法律については、政府や世論の反対にあって成立するに至らなかった。
 経済面では、原油生産能力は約250万バレル/日に達し、石油精製能 力も湾岸危機前の水準に回復した。また、政府は外資導入策を講じつつあり、今後の国際戦略としては、アジア市場を重視している。財政面では、緊縮に努めているが、依然として大きな赤字を抱えている。
 対外関係では、10月のイラク軍のクウェイト国境付近への展開による国境情勢の緊張に際し、防衛取極に基づき米、英等より軍隊の派遣を得てイラクの脅威に対抗した。
 11月のイラクによるクウェイトの主権及び国境の承認に関しては、クウェイト自身はこれを正しい方向に向けた第一歩として一応評価したものの、経済制裁解除問題については米国等と共に、クウェイト人抑留者問題等を挙げて、イラクが国連安保理決議を完全に履行する必要性を引き続き主張している。
 なお、パレスチナに対しては、世銀等を通じた援助を開始しており、中東和平の実現に協力する姿勢を見せている。
 日本との関係では、クウェイトはイラク問題における同国の立場への日本の一貫した支持を評価しており、閣僚の訪日等の際に重ねて謝意を表している。貿易面では、クウェイトにとって日本は最大の輸出市場であり、その輸出額も順調に伸びてきている。また、日本はクウェイトにとり米国に次ぐ第2位の輸入先であるが、94年には円高により日本の輸出が減少した模様である。

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