IV.欧州
(1)内政
5月の第2院総選挙においてルベルス首相のキリスト教民主同盟
(CDA)は大敗を喫し、野党の地位に転落した。これにより1917年の
普通選挙導入以来常に連立政権に参加してきたキリスト教政党は初めて
政権から除外されるに至った。
これに対し、労働党は総選挙で大幅な議席減となりつつも第1党の地
位を得たことにより、選挙で躍進した自由民主国民党及び民主66党とともに、困難な連立交渉を経て8月に中道政党(CDA)抜きの左右政党による連立内閣を成立させ、コック労働党党首が首相に就任した。
新内閣は、発足以来、教育、原子力安全、社会保障等予算配分等の政策問題につき与党間の意見の相違が目立つこともあったが、現在のところほぼ安定した政権運営がなされている。
経済面では、欧州の景気回復による外需の寄与を背景として、93年のゼロ成長から94年に至って初めて回復基調となり、低いインフレ率
(2.5%)の下に約2%の経済成長が見込まれている。しかしながら、この景気回復は雇用の改善に明確に現れるに至らず、失業率(7.7%)
は93年(6.4%)よりも悪化していることが問題とされている。
(2)対外関係
94年は外交行事も総選挙、政権交替等内政の影響を受けたが、94年前半には、数年越しの懸案であった南アフリカ訪問を実現するとともに、人権問題をめぐり関係が悪化していたインドネシアへの訪問を果たし、これら各国との関係の改善を実現させたほか、旧ユーゴー問題に対する取組には顕著なものがあり、約3,000名の要員を派遣するなど、英仏に次ぐ貢献を行っている。年末には要員派遣国の参謀総長会議をオランダ で開催し、真剣な取組を更に印象づけた。
(3)日本との関係
日・オランダ関係は基本的に良好である。経済面では、日本の対オランダ投資は94年上半期は93年の約50%の水準に低下したが、全体として落ち込んでいる対EU投資において、オランダは引き続き日本の第2の 投資対象国となっている。貿易関係は全体として増加の傾向は見られるが、オランダの輸出全体に占める対日輸出の割合が極めて低いという状況及び日本の対南輸出が輸入の約5倍という圧倒的出超の構造は変わっていない。こうした背景の下に初めてオランダ政府主導の下で同国の輸出振興の努力を強化する計画(JAPTA)が94年に実施され大きな反響をよんだ。