IV.欧州
内政面では、94年3月、最高会議の選挙が行われたが、選挙法の不備のため同年中に計3回の選挙、決選投票、再選挙が繰り返され、回を重ねるごとに有権者の関心が低下した(12月末で450議席中408議席が確定し、残る42議席は空席のままとされている)。
6-7月の大統領選挙では、クラフチェク現職大統領とクチマ前首相
の間で決選投票が行われ(投票率71.63%)、大方の予想に反してクチマ
が僅差で当選し、クチマ大統領は、7月の就任直後がら、精力的に内外
政治、経済改革に取り組み、新憲法採択までの暫定措置として、「小憲法」といわれる「国家権力・地方自治法」案を議会に提出した。10月にはIMFとの協議を経て民営化の推進、為替レートの統一等を内容とする経済改革案を発表した。経済実績の悪化傾向は、94年も続き、自国通貨価値の急激な低下、インフラの継続、工業生産の低迷、貿易赤字の拡大が続いている。
外政面における動向については、ウクライナ外政の最優先問題である
対ロシア関係では、独立、領土保全と国境の不可侵等を指針として対処している。中長期的施策としてのエネルギーの対ロシア依存(80%にも達している)からの脱却も図っている。黒海艦隊問題に関する交渉は難航しているが、旧ソ連在外資産・対外債務分割問題は、12月にウクライナ側が資産・債務の一括放棄を受け入れて解決した。ウクライナのNPT加盟問題は、11月に最高会議がこれを承認し、12月に加入した。
ウクライナの経済改革やNPT加盟の進展に応じ、先進主要国は、経
済改革、非核化、原子力安全などの面で支援を活発化させつつある。米国は、11月のクチマの訪米の際には、計9億ドルの支援を約束した。日本との関係では、3月に、ウクライナの核兵器廃棄協力協定が締結され、日本からの1,600万ドルの支援が約束され、現在、核物質管理のための制度の確立と核兵器廃棄要員向け医療機材供与の2分野での協力具体化のための協議が行われている。人道支援の分野ではチェルノブイリ関係で専門家の派遣・招待、200万ドル相当の医療機器の贈与が行われた。4月の国際赤十字社を通じての医薬品供与は、ウクライナの小児科病院の75%をカバーするもので、総額300万ドルであった。