IV.欧州

 国際的に権威ある米紙TIMEが94年に世界で最もその活動が注目された人物としてローマ法王ジョヴァンニ・パオロII世を挙げたように、同年のヴァチカン外交は際立った展開を見せた。
 94年にヴァチカンは、ミクロネシア連邦(1月)、スリナム(2月)、 ジョルダン(3月)、カンボディア(3月)、西サモア(6月)、イスラエル(6月)、ヴァヌアツ(7月)、トンガ(8月)、マケドニア(12月) の9か国との間で新たに外交関係を樹立した。これにより、外交関係を 持つ国は計156か国となり、また、ヴァチカンに実館を持つ国は59か国 となった。また、10月にはPLOとの間で、「真の、また、固有の外交関 係ではないが」、「恒常的で公的チャンネル」(ヴァチカン報道局発表) を開設した。
 さらに、9月のカイロ国連人口・開発会議へのヴァチカンの参加及び その基本姿勢が国際世論の注目を集めたほか、ヴァチカンは自らのイニシアティヴにより、2月にユダヤ教・キリスト教会議(ボスポラス宣言の採択)を実施し、11月には世界宗教者平和会議の開会式を初めてヴァチカンに招致し、積極的な活動を繰り広げた。総じて、ヴァチカンの外交活動は、平和・環境・女性の地位・諸宗教の対話などを軸に、広く東欧・中近東・アフリカ・中南米・アジアに配慮した、よりユニバーサルなものへと発展して行くと見られる。
 日本との関係では、ヴァチカンは、日本の国際的発言力の増加や民間企業ベースのシスティーナ礼拝堂修復工事への協力などを背景に、日本との友好関係の維持を引き続き重視している。こうした中、11月には、日本から白柳誠一東京大司教(日本人としては史上4人目)が任命され、これにより日本人の枢機卿は里脇枢機卿とともに2人目となった。

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