IV.欧州
(1)内政
92年9月の選挙で選出されたイリエスク大統領及び与党の社会民主主
義党は「穏健改革、社会保障重視」路線をとっており、バカロイウ内閣(92年11月成立。94年8月より国民統一党との連立に踏み切った。大ルーマニア党及び社会労働党が閣外協力)もこうした中道左派の基本的立場に基づき政策運営を進めてきている。
これに対し野党第一勢力の民主コンベンション及び第2野党の民主党
は、諸改革の推進の遅れ等を理由として政府批判を展開してきているものの、野党グループの結束も弱く、現政府の存立を揺るがすようなものとはなっていない。
経済面では、旧体制時代末期に疲弊した経済の再建と市場経済への移行が依然として最重要課題となっている。94年においては、インフレの鎮静化(月間平均約5%)、貿易収支の改善等マクロ経済面の好転が見られるものの、工業生産実績は対前年比で約2%増にとどまった。今後は工業生産の向上及び民営化の促進が大きな課題となっている。
(2)対外関係
ルーマニア外交の主要課題は西側諸国及びEU、NATO等旧西側機構
との関係強化並びに外国におけるルーマニアに対するイメージの改善で
あり、こうした観点から積極的な対米・西欧外交を推進している。
一方、原材料供給国としても重要なロシアとの関係は、ルーマニア系住民が多いモルドヴァ共和国に駐留するロシア第14軍の問題もありここ数年冷却化していたが、3月には両国軍事協力協定が署名され、また二国間基本条約交渉が行われる等関係改善の動きも見られる。その他の周辺諸国との関係のうち、まず旧ユーゴー問題については、若干セルビア寄りの立場をとっているが、国連安保理の対ユーゴー制裁の遵守に努めつつ、これに伴う経済的損失の補填の必要性を主張している。また、国内に少数民族問題をかかえるハンガリーとの関係では、ハンガリーにおける政権の交替等を契機として関係改善を図っている。
(3)日本との関係
ルーマニア側からは日本との経済関係の強化、中でも、依然漸減傾向の続いている貿易規模の増大及びルーマニア投資の誘致を望む旨が表明
されているが、法的側面の整備等ルーマニア側の努力も望まれている。