IV.欧州

 内政面では、中道派の社会民主党(PSD)を基盤とした現シルヴァ政権は、85年の政権獲得以来、政権の安定を確保してきたが、94年6月の欧州議会選挙で野党社会党と互角の得票率(共に34%台)を確保する等、引き続き政権の安定を保持していくかに見えた。しかし、95年10月の国会議員選挙、96年早々の大統領選挙を前にして、10月頃から国会における与野党間の攻防が徐々に激しくなり、大統領府と首相府との軋轢にまで発展し、国会解散等による現政権の進退を問わんとする動きも出てきている。
 経済面では、93年末から94年初めにかけて底入れした景気は、好調に推移する外需に支えられて、第2四半期以降、他のEU諸国に比してお おむね半年遅れて回復へ向けての動きが顕在化してきた。このため、昨年のマイナス成長から94年は約1.0%程度の経済成長まで回復するものと見込まれている。インフレは、引き続き低減傾向を維持したが、失業は昨年来の景気後退の影響を受けて増大した。景気回復の影響が雇用面で顕在化するまでには今暫くのタイム・ラグを要しよう。また、EUの 経済・通貨統合に向けて、財政赤字の削減が焦眉の課題となっている。
 対外関係では、ポルトガルは、外交の主要目標として、EUとの連帯 強化に努めており、右を通じて自国経済の近代化、発展を図ることを国家目標としている。また、NATOへ積極的に参加(原加盟国)するなど、国防・安全保障政策では英米等と共に大西洋主義を標傍しており、現在、欧州軍団には不参加の立場にある。他の地域での政策としては、アンゴラ、モザンビーク等アフリカ旧植民地諸国との関係強化に努めており、モザンビークへPKO(連絡通信部隊)を派遣したほか、アンゴラ和平では、米、ロシアとともにオブザーバー国として積極的な関与を行っている。
 日本との関係では、経済面で長年の懸案であったポルトガルの対日差別輸入数量制限(QR)撤廃が実施された。貿易は輸出・輸入とも低調 であったものの、投資は回復基調にあり、若干明るい見通しがもたれる。また、文化関係では、94年はリスボン市が「欧州文化首都」に指定され様々な文化行事が行われる中で、日本も多様な文化的事業を行った。

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