IV.欧州
内政面での最大の出来事であったEU加盟については、3月に加盟交渉を終えた後も反対派が優勢な状況で推移し、11月の国民投票は反対52.2%という結果となった。これにより、ノールウェーは1972年に引き続き、今回もEUに加盟しないこととなった。加盟反対の理由として、外交面での種々の制約の発生や福祉の後退、失業の増加等の国内面の影響が挙げられていたが、要は現状に満足し変化を望まない国民の多数が反対派を形成したものと考えられる。
この間、ブルントラント首相に対する国民の評価は変わらず高く、国民投票後に行われた世論調査で72%が首相として適任との意見を述べており、むしろEUに加盟しないことによって起こる問題の処理についてブルントラント首相に期待する声が大きい。
経済については94年は5.5%の成長が見込まれるものの、物価上昇率
は1.5%と予想され、安定した成長を続けている。このような欧州で1、
2の水準にある良好な経済状態は、北海の油田開発に依存するところが
大きいが、同油田の生産が引き続き高水準を維持していることから、当面維持される見通しにある。
外交面では、ノールウェー政府は、EUには加盟しないこととなった
が、欧州との協力は継続する意向を強調しており、今後、経済関係は、EEAを通じてEU諸国との貿易を展開し、安全保障については、NATO、WEUを通じてノールウェーの意向を反映させることを期待している。
国際協力では、1月に死去したホルスト外相の後任となったゴーダル
外相が中東和平交渉の一層の推進に積極的役割を果している。また、旧ユーゴー、レバノン等の国連平和維持活動(PKO)にも引き続き協力を
行った。途上国援助については、無償援助を中心とした積極的な対外援助を実施しており、援助総額は、94年もGDP比率で1%を超える見込
みであり、DAC加盟国の中で引き続き上位を占めると予想される。
日本との関係では、5月のブルントラント首相の訪日やオスロにおけ
る日本文化紹介事業の実施など良好な関係が続いている。また、日本、ノールウェーは共に海洋国家であり、捕鯨についても立場を同じくし、これらの面で友好協力関係も築かれている。