IV.欧州
デンマーク内政は、ラスムセン首相率いる社民党主導内閣の存続如何を問う総選挙を軸に展開した。
93年1月に登場したラスムセン政権は94年12月に議会の任期満了を控
え、6月の欧州議会選挙で敗北し、特に野党自由党の支持率がエレマン・
イエンセン党首(前外相)の個人的魅力に引っ張られて大幅に上昇する中で、政権維持のために総選挙実施の機会をうかがいながらの困難な政策運営となった。
しかし、年初より実施した税制改革・労働市場改革の効果が徐々に表われ、国内の景気回復テンポが加速し、夏ごろから政府与党に対する支持が上昇傾向となった。こうした追い風を利用して短期決戦で臨んだ9月の総選挙において連立与党はかろうじて保守系野党の過半数獲得を阻止し(ただしキリスト教人民党は議席を喪失)、少数政権ではあるがラスムセン内閣(社民党、急進自由党、中道民主党の連立)維持に成功した。
EU拡大を推進してきたデンマークにとりオーストリア、スウェーデ
ン及びフィンランドのEU加盟が決定したことは歓迎すべきことであっ
た。一方、ノールウェーがEU加盟を果たせなかったことについては、
EU内での北欧協力が完全なものとはならないものの、デンマークの対
北欧、対EU外交に大きな影響を与えるものではないと思われる。
デンマークは更に、東へのEU拡大に積極的であり、特にバルト諸国
を中・東欧諸国と同時期にEUに加盟させたい考えである。
一方、社民党は党内に欧州反対派を抱えているがその社民党主導の政
権が継続したこと、6月の欧州議会選挙及び9月の総選挙でEU反対派
が大きく躍進したことから、マーストリヒト条約への留保の撤回問題には慎重とならざるを得ず、96年のEU政府間会合に向けて、困難な舵取りが予想される。
国連協力を外交の基本とするデンマークは、94年においても国連平和維持軍への参加、人道的支援の実施などを積極的に行った。
日・デンマーク貿易においては87年以降デンマークの対日黒字が継続しており(対日輸出の約半分は豚肉)、両国間には通商摩擦などの大きな懸案もなく、二国間の政治・経済関係はともに良好に推移している。
4月にはピーターセン外相が外務省賓客として訪日した。