IV.欧州
内政面では、ゴンザレス首相率いる社会労働党(社労党)政権は、94年、引き続く高失業及び汚職問題等のため、同首相が82年に政権に就いて以来最大の困難に直面した。4月には、前中銀総裁及び前治安警備総局長といった国家の中枢機関にいた人物が汚職容疑で逮捕され、この関連で現職2閣僚や党の有力議員が辞職するに至った。こうした状況の中で、6月に行われた欧州議会選挙では、全国レヴェルの選挙では初めて社労党が野党民衆党に敗れ、他の地方選挙でも社労党は大きく議席を減らす結果となった。
経済面では、92年以来の長い不況を脱し、94年には回復過程に入ったといえる(94年成長率政府見通し1.7%)。ただし、内需の回復は遅れており、また失業者数は376万人(第2四半期。失業率24%)と依然高水
準にある。こうした状況の中、社労党政権は欧州経済通貨統合に向け、財政赤字削減、インフレ抑制等経済体質改善を図りつつ、一方で景気の回復、雇用の増加に配慮した経済政策を採用している。議会では少数与党でありながら、年初には解雇基準の緩和等を内容とする労働市場改革法を成立させた後、95年予算も地方民族主義政党の支持を得て成立させ、上述のような困難な状況にありながらも政権の座を保持している。
外交面では、スペインは西欧主要国としての地位確立を目指し、94年
も欧州連合(EU)に積極的に関与するとともに、9月には欧州軍団へ
の参加を達成し、また他の欧州諸国と共に旧ユーゴーの国連保護隊
(UNPROFOR)への1,200人規模の部隊の派遣を継続した。
同時に、11月のゴンサレス首相の中近東・北アフリカ経済サミット出席をはじめ、北アフリカ地中海諸国及び中近東諸国への積極的外交を進めるとともに、EU内においてもその重要性を主張し、95年後半のEU議長国の間にEU・地中海諸国会議を開催することとなった。
日本との関係では、10月に天皇皇后両陛下が御訪問され、二国間の友好関係が大きく増進された。一方、年初には両国経済の不況を反映し、在西日系企業の事業縮小、撤退の動きが見られた。一時期は、特定日系企業の撤退問題が、政治・社会問題化したが、その後事態は鎮静化している。