IV.欧州

 94年9月総選挙で民社党が勢力を復活、3年間政権の座にあった保守中道連合は下野することとなり、10月カールソン首相の率いる社民党政権が成立した。また、11月国民投票で欧州連合(EU)加盟が僅差で支持され、12月議会は加盟法案を採択、95年1月よりEU加盟という歴史 的決定が行われた。
 政権の交替については、保守中道連立のビルト政権が規制緩和等による経済活性化を図り、失業緩和、財政赤字削減、福祉の見直し等に努めたが大きな成果を上げ得ず、雇用や福祉面でかつての実績を有する社民党に期待を寄せる向きが増した結果と見られる。カールソン新政権にとって国内の二大課題は巨額の財政赤字削減と失業率低下であり、有権者の側で福祉水準の維持を求める気持ちが強い中で財政再建を進めるために、少数与党政権として各野党側と労働組合の協力を取り付けることが政局運営の鍵となっている。
 経済は91年以来3年連続のマイナス成長期を脱し、94年はプラス成長 が見込まれている。92年のフロート制移行後のクローナ為替レートの下落による輸出増大が主な回復の原動力となっている。
 対外関係では、EU加盟決定の他に5月ビルト政権下において北大西 洋条約機構(NATO)との間でPFP枠組みを設定した。カールソン新政 権も軍事同盟不参加の方針を堅持する一方、欧州の新たな安全保障秩序 構築に積極的に関与し、国際平和・開発のための国際協力と北欧・バルト諸国との地域協力を従来通り活発に進める姿勢を明らかにしている。
 日本との関係では、9月に稲葉日本商工会議所会頭を団長とする使節 団が訪問し、経済交流促進のための話合いが行われた。また、12月に大江健三郎氏がノーベル文学賞を受賞、日本に対する新たな関心を呼ぶ機会となった。

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