III.中南米

 94年は選挙の年だった。両院選挙(3月)では保守党が伸びたが、自由党の優位は変わらず、左翼諸派はほとんど壊滅した。大統領選(5-6月)では決戦投票でサンペール(自由党)が選出された。8月発足した新政権は、社会政策の充実と人権擁護を柱にゲリラとの和解路線を推し進めた。一方ゲリラ二大勢力(FARCとELN)は、和平交渉再開をにらみ新政権に圧力をかけるため、また地方自治体選挙(10月)に向けて住民に勢力を誇示するため、テロ攻勢を強めた。麻薬組織は脅迫と買収を通じて、政府機関への浸透を謀り、大統領選挙や国家警察に巨額の麻薬資金が流れたとする疑惑をめぐり、対米関係も緊張した。経済面は前政権の開放政策の成功、コーヒー市況の高騰もあって、GDP実質成長率は予想を上回る5.7%に達したが、消費者物価上昇率は21%を超え、政府見通し(19%)を上回った。原油生産は新油田発見が続き、既に50万B/D体制を確立し、増産に向けた設備投資が活発である。外貨流入も順調で、至る所で建設ブームが見られ、95年の経済も拡大基調が続くと予想される。
 対外関係では、NAFTA発足に刺激され、メキシコ、ヴェネズエラと 自由貿易協定(G3)を締結し、またアンデス・グループ中、ヴェネズエラ、コロンビア、エクアドル間で対外共通関税を導入する旨が合意、 カリコム(注1)諸国との自由貿易協定の締結など、地域統合を目指す外 交が顕著だった。第4回イベロアメリカ・サミット(注2)(6月)をカルタヘナで開催し、開かれた地域主義と統合強化の戦略を宣言(カルタヘナ宣言)した。

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