III.中南米

 2月に4年に一度の大統領選挙が実施され、社会政策の充実を掲げポピュリスト的なスタンスをとった野党国民解放党のフィゲーレス候補が僅少差で当選し、5月に新政権が発足した。
 新政権は統合された社会の確立、民主主義の強化、自由経済体制の強化、政府機関の効率化、持続可能な成長を5大目標として掲げ、特に、医療、教育の立て直し、社会制度の充実、治安対策の強化等を強調し華々しく船出した。しかし、財政赤字が足かせとなり、結局は選挙公約を翻し大幅な増税パッケージを導入する方針を決定するに至り、年内は具体的な施策はほとんど実施できなかった。
 経済面では、新政権が明確な経済政策を打ち出さない状況を反映して、経済活動は前年に比し鈍化した。経済成長率は4%前後にとどまり、財政赤字も対GDP比で昨年の1.9%から一気に7%と大幅に悪化し、インフレも18%前後を記録した模様である(93年9%)。
 対外関係では、貿易の自由化についてはGATTのウルグァイ・ラウ ンド、メキシコとの自由貿易協定がそれぞれ国会で承認される等若干の 進展があったほか、他の中米諸国と共にNAFTAへの参入を目指している。また、新政権は「持続可能な発展」の考え方を前面に押し出し、環 境問題で中米域内においてはそのリーダーシップを発揮している。
 日本との関係では、中米域内産業育成センター」をはじめ経済技術 協力等を通じて日本・コスタリカ両国の関係は緊密化しているものの、両国間の貿易は依然として日本の大幅な出超(94年推定1:5)が続いている。

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