III.中南米
94年はエル・サルヴァドルにとり重要な政治日程をこなした歴史的な年に当った。まず、3月には大統領、国会議員、市長等の選挙があり、4月に大統領の決選投票が行われた。今回の選挙は、92年の和平合意後、民主化過程の中で実施された最初の選挙であったこと、大統領(任期5年)、国会議員(同3年)、市長及び市会議員(3年)の選挙が15年振りに一斉に実施されたこと、内戦中のゲリラ組織FMLNが和平合意に基づき公認政党として初めて国政に直接参加することとなったことから、国の内外の注目をあびた。FMLNが推した左翼連合の大統領候補は決選投票で敗退したものの、国会議員選挙では、FMLNが84議席中21議席を占め、一挙に野党第一党に躍り出た。これらの選挙の後、6月にカルデロン大統領を首班とする新政権が成立した。国会による最高裁判官及び14名の判事の人選に当っては、与野党間の協議が1か月にわたり難航したが、7月に新長官、新判事が選出された。カルデロン大統領は選挙キャンペーン中より和平合意の完遂を公約とし、また、就任演説において、教育、医療、環境分野での制度的改革と農業開発を強調した。経済は、5-6%の成長率を維持し、インフレも8%台に下落して全般的に順調に推移している。
外交面では、米国との間で、繊維製品の輸入割当撤廃交渉、及びメキシコとの間での自由貿易協定交渉につき努力が払われた。
日本との関係においては、上記大統領等の選挙に際し、国連からの要請により、国際平和協力法に基づき、15名の選挙監視員が3月、4月と二度にわたり派遣され、積極的な人的貢献として高い評価を受けた。