III.中南米

 ボリヴィアは、94年には経済成長率4.3%、インフレ率8.5%という中南米諸国の中では極めて良好な経済指標を達成する見込みであり、現在のところ、経済・政情とも総じて安定的に推移している。サンチェス・デ・ロサダ現政権は、野党、労組、コカ農民団体との対話を重視しつつ大胆な社会・経済・行政改革を次々に打ち出して実行に移している。8月には史上初の民主的手続により、27年ぶりの憲法改正が実現し、憲法はより民主的で地方分権的な内容になった。行財政の地方分権化により国民の広範な政治参加を目指す「大衆参加政策」が実施に移され、また国営企業を外国資本の導入で活性化させその収益を国民に還元することを目指す「資本化政策」の実施に向けて法体制の整備等が進められている。
 ボリヴィア最大の社会問題である麻薬問題については、88年以来米国の支援の下で推進してきた代替(作物)開発計画の成果が上がらず、政府は、新たなコカ葉削減戦略の策定を国際社会から迫られることになった。
 外交面では、現政権は近隣諸国との関係強化を基本としつつ、対先進諸国との協力関係増進に重点を置いているが、先進諸国との関係では麻薬対策に特化してきた対米関係の貿易、投資等の他分野への拡大を追求する一方、欧州、アジア(日本、中国)との関係強化が図られている。また、域内外交では「海への出口」問題で断絶しているチリとの国交回復が懸案となっているが、南米経済統合プロセスの中で、南米共同市場 (メルコスール)諸国への接近を推進するなど積極的な外交を展開して いる。
 日本との関係は、94年9月のアントニオ・アラニバル外務大臣訪日を経て一層緊密化している。

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