III.中南米
ブラジル経済は、7月の新通貨レアル導入以来、インフレ率が著しく低下し、94年7月以降の累計インフレ率は22.7%となった。経済成長も実質5.67%を達成し、貿易黒字は100億ドルを越えるなど、経済活動は引き続き好調である。インフレの根本的解決に不可欠な税制、社会保障、中央と地方の関係等の構造的改革による長期的な財政均衡の達成は、95年1月に発足するカルドーゾ新政権下における憲法改正等を待たざるを得ない状況となっている。
10月には大統領、上院議員の3分の2、下院全議員、州知事、州議会
議員を改選する極めて大規模な総選挙が、平穏裡に行われ、ブラジルの民主主義が機能していることを印象づけた。この選挙でカルドーゾ元蔵相が国民の圧倒的支持を得て大統領に選出されたが、従来の政策がおおむね継続されるものと見られている。
外交面では、ブラジル外交の基本方針である特定の地域・国に依存しないとする「多角的外交」の推進に努める一方、米州サミットでは米州自由貿易地域(FTAA)に関する議論の取りまとめに貢献する等、積極的な活動を見せた。また、南米共同市場(メルコスール)の95年年頭の発足のために必要な交渉を妥結させるためにリーダーシップを発揮するとともに、自ら提唱した南米自由貿易地域構想に対する南米諸国の理解の取付けに努める等、リオ・グループの議長国として中南米地域の協力の推進に積極的に取り組んだ。
日・ブラジル関係は基本的には良好であり、日本の資金・技術協力もブラジル側から高く評価されている反面、民間ベースの経済関係は80年代半ば以降の停滞傾向がなお続いている。ブラジルには多数の日系人が存在し、その活動は評価されている。8月には河野副総理兼外相が外相としては9年ぶりにブラジルを訪問し、二国間会談及び第2回日本・リオ・グループ・トロイカ外相会合を行った。95年は日・ブラジル修好通商航海条約100周年にあたることもあり、両国関係が新たな発展に向けて活発化することが期待されている。