III.中南米

 94年5月に大統領、国会議員他を選ぶ総選挙が公正、かつ、平穏裡に行われ、野党民主革命党(PRD)のペレス・バヤダレス大統領候補が当選してPRDが約5年振りに政権に復帰した。新政権の政策目標は失業、貧困の解決であり、パナマの対外イメージの回復と外国投資誘致が大きな課題である。また、麻薬密輸取締り、治安回復、汚職撲滅を緊急問題としている。
 10月、軍隊を廃止する憲法改正案が成立した。右憲法改正は国の安全 保障は警察がその責を負うが、文民統制に服すること、及び侵略の脅威 がある場合の特別警察隊の一時的編成を規定している。また、11月には、2000年にパナマ運河管理権を米国から引き継いだ後に備え「パナマ運河管理庁」創設等を盛り込んだ憲法改正法が成立した。
 パナマ経済は94年は5%程度の成長が見込まれているが、失業率は依 然として高い水準にあり貧富の差も大きい。新政権は、10月国際金融機 関の融資再開を得るため社会・経済インフラの整備、国営企業の民営化、労働法の改正、運河返還地域の利用計画の策定等を盛り込んだ、新経済政策を策定した。また、GATT、NAFTA加盟を目指している。
 パナマのリオ・グループ復帰が8月に実現したが、中米経済統合への参加には余り熱意を示していない。二国間関係では、9月に米国との合意によりキューバ難民の米軍基地内受入れを開始し、10月には、国連、米国他の要請を容れハイティの民主主義回復への寄与を理由に、セドラ司令官の亡命を受け入れるなど対米協力姿勢が目立っている。

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