III.中南米

 91年の軍事クーデター以来、事実上の軍による非民主的な支配と国連の制裁措置による経済的な困窮の続く中で、米国を目指すハイティの政治・経済難民は急増し、米国をはじめ国際世論に深刻な懸念を呼び起こした。94年5月の軍によるジョナサン暫定大統領の擁立を契機に、国際社会は対ハイティ制裁を更に強化する一方、国連安保理は多国籍軍の創設を認める決議を採択して、ハイティにおける民主主義の回復及び軍首脳の退陣に、武力の行使も辞さない強い態度を表明した。米軍主導の多国籍軍による軍事介入を目前に、カーター元大統領とハイティ軍首脳との合意が成立し、軍事クーデターにより国外に避難していたアリスティド大統領は米軍の保護の下に10月15日に帰国、新たな民主政権が発足した(第1分冊P12~15参照)。
 アリスティド大統領が、国民的和解による国家の再建を訴え、国際社 会に対し大規模な経済・資金援助を要請しつつ、国際協調の姿勢を表明 していることは、ハイティの歴史的な再出発として注目される。しかし、ハイティの極めて脆弱な社会経済構造を近代化し、民主主義を定着させるためには、何よりもハイティ側の自主的な努力が重要であり、当面の議会選挙の実施と経済構造の改善努力が注目される。日本はハイティの民主化と経済復興を支援するために、債務延滞金解消のための支援を行うとともに、ハリケーン災害緊急援助、世界食糧計画及び赤十字国際委員会を通じた人道援助を積極的に実施している。

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