III.中南米

 94年は、93年の国内政治危機が一応克服され、チャモロ大統領の指導の下、相対的に政治的安定、民主化、法治国家建設における進展が見られた年であった。特に国民議会審議の正常化、大西洋岸自治地域の民主的選挙実施、新軍法成立によるオルテガ軍司令官の退任決定、最後のレコントラ勢力(F-80)の解散、話合いによる交通ゼネスト等の解決、サンディニスタ国民解放戦線内部の穏健派拾頭等は、その進展を物語るものである。
 また、94年は96年の大統領選挙の行方に係る憲法改正問題を契機に、各党派の連合・分裂など政界再編が大きく始動した年でもあった。
 経済情勢は、干ばつによる被害等もあり基幹産業の農業生産が低迷し、依然厳しい状態が続き、成長率も1.3%程度の予測である。しかし、94年後半は、コーヒー等農産品の国際価格高騰、日本の円借款38.75億円を含む構造調整融資による新規融資流入、対外債務交渉の進捗、台湾、スペイン等からの投資流入等明るい要因も見られ、95年の経済状況改善に期待をつなげた。
 対外関係では、米国のクリントン政権が、凍結されていた対外援助を解除し、チャモロ政権を全面的に支援する姿勢を明確に打ち出したこともあり、政権の安定度は増大した。また、チャモロ政権は、新生民主主義国際会議(7月)、中米環境サミット(10月)等国際会議を開催し、民主主義政権としての同政権に対する国際的支持を取りつけることにも成功した。さらに、国連において復興再建国際援助決議を採択に持ち込む等国際社会の対ニカラグァ援助維持に努めた。
 対日関係では、日本の経済協力は高い評価を得ている。また、レアル外相訪日(94年7月外務省賓客)等人物交流は確実に活発化しつつある。

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