III.中南米
94年5月に大統領選挙が行われバラゲル大統領(キリスト教社会改革党)が、2位のペニヤ・ゴメス野党ドミニカ革命党連合候補に2万2千票の僅少差で再選され、同年8月第7期目(ただし不連続)の大統領に就任した。
大統領選及び上下両院議会総選挙は、有権者の9割以上が平穏かつ整然と投票したが、ペニヤ候補が選挙人名簿等に不正があったとして中央選管委(JCE)に対して選挙結果の無効及び新たな選挙の実施を求めて抗議し、結局、バラゲル大統領は、ペニャほか野党指導者からの提案を受けて、憲法改正を前提とした政治合意に署名し、27年振りの憲法改正(新政権の2年間短縮化、両院議会選挙と切り離した2年後の大統領選挙の実施、大統領の2期連続再選禁止、決戦投票制の導入、JCEの刷新等)を経て、ようやく事態の収拾を見た。
経済状況は、大統領選挙及び選挙不正疑惑問題並びに対ハイティ経済制裁措置に大きく影響されて、下半期には財政赤字問題、通貨不安定、インフレ上昇等のマイナス要因が見られた。しかし、9月にペソ切下げ、財政赤字改善等の措置がとられた結果、下半期では総じて経済活動が回復し、年末には回復安定基調に乗った。貿易収支は恒常的入超を示し、94年の赤字幅は13億1,080万ドルと漸次拡大傾向にある。
外交面では、米国との関係維持、またNAFTA等の地域統合の動向を
踏まえつつ世界貿易機構参加に備えるための経済政策の策定が緊急課題となっている。特に、念願であったカリブ諸国連合の原加盟国(7月署名)になるとともに、マイアミでの米州サミットには、バラゲル大統領自らが出席し、米州自由貿易地域に参加し得る見通しとなった。一方、隣国ハイティとの間では、貿易関係の正常化をはかるとともに、国境地域での各種協力の可能性が検討されている。