III.中南米
94年の内政面の中心は、憲法改正と95年の大統領選挙へ向けての動きであった。4月の制憲議会選挙では、改正に反対の野党拡大戦線(中道左派)が躍進したものの、賛成派の与党ペロン党と野党第一党の急進党が多数を占めた。その結果、5月からの制憲議会は順調に審議が進み、現職大統領の連続再選を可能にする新憲法は、8月に公布された。その後の政局は、95年の大統領選挙へ向けての各党の準備の動きが中心となった。
経済は、約6%の成長と約4%のインフレという順調な歩みを続けて
いる。しかし、選挙を控え、失業問題や社会政策への取組が焦点となる
一方で、労働法改正や一層の構造改革の推進に足踏みも見られる。経済
安定を定着させ、持続的成長につなげていくために、産業競争力の強化により貿易赤字を改善することと、財政均衡を保っていくことが、重要な課題となっている。
対米関係は、全体的に良好なまま推移したが、知的所有権問題等の個別案件の解決が課題となっている。欧州諸国との関係は、依然、緊密かつ良好であるが、対英関係では、マルビーナス(フォークランド)諸島近海での石油資源開発をめぐり交渉が続けられている。近隣諸国との関係も良好であり、95年1月には南米共同市場(メルコスール)が発足し、地域統合の動きも進展している。また、メネム大統領が、数度にわたり中東を訪問するなど、中東外交に力を入れた。
7月にイスラエル移民共済会館が爆破されるテロ事件が発生し、その
犯人と背後関係をめぐり、イランとの関係が緊張した。 日本との関係では、9月に河野副総理兼外務大臣が同国を訪問するなど、両国関係の緊密化の機運が、更に盛り上がった。