I.アジア及び大洋州
(1)内政
(2)対外関係
金泳三大統領は、積極的な首脳外交を展開した。93年の米国訪問に続き、94年には、3月に日本及び中国を、6月にロシアを訪問し、これによっていわゆる「周辺四大国」の全てを公式訪問し、北朝鮮の核兵器開発問題解決のための協力関係の構築に努めたほか、11月、APEC非公式首脳会談に出席した機会に、フィリピン、インドネシア、豪州を公式訪問し、アジア太平洋地域の諸国との関係強化に努めた。また、韓国は、ASEAN拡大外相会議やAPEC等の地域協力において活発な外交を展開するとともに、国連安保理非常任理事国に初めて立候補したほか、世界貿易機関(WTO)に関しても年内に協定締結のための国内手続を終えるとともに事務局長候補を出すなど国際社会におけるその国際的地位に相応しい地位の確保のための努力を行っている。
(3)南北朝鮮関係
3月には特使交換のための南北実務者接触が再開されたが、北朝鮮側が、米韓軍事演習の中止、核問題をめぐる対北朝鮮国際協調体制の放棄等を求めたのに対し、韓国側は、韓国に対する誹誇中傷の中止、核開発問題の最優先討議を求めたため、交渉は平行線をたどった。こうした折り、北朝鮮側代表が「戦争が起きればソウルは火の海となる」と発言したため、同接触は決裂した。その後、6月に北朝鮮の金日成主席が、北朝鮮を訪問したカーター元米大統領に対して、無条件で南北の首脳会談を開催する意思があることを表明したのを受け、南北間の予備接触が行われ、南北首脳会談を7月25日-27日に平壌で開催することが合意された。しかし、7月8日、
北朝鮮の核兵器開発問題については、韓国政府は、問題の解決に向け、米国、日本をはじめとする関係国との緊密な協調体制の維持に努めるとともに、南北対話の必要性を強調したが、北朝鮮は一貫して米国政府とのみ交渉するとの態度をとったため、この問題をめぐる交渉は、米朝を中心に行われた。米朝協議については、一時、韓国国内では、「過去」の核疑惑解明問題に対して北朝鮮に譲歩すべきではないとの意見、米朝関係の改善が南北関係の改善に先行するのではないかといった懸念も表明されたが、米朝交渉の成果として10月に成立した枠組み合意では、北朝鮮の核活動の透明性を確保するとともに、南北関係を進展させる契機となり得るものとして、韓国政府はこれを評価している。そのため、韓国政府は、米朝合意に盛り込まれた北朝鮮に対する軽水炉支援において中心的な役割を果たす用意があることを明らかにし、政府関係省庁等で構成される「軽水炉事業支援企画団」を設立した。
(4)日本との関係
94年は、日韓首脳会談が3回、電話会談が11回行われた。両国の防衛分野においても、4月の韓国国防部長官訪日、12月の韓国海軍練習艦隊の日本寄港が行われたが、これらは、いずれも初めての交流である。過去の問題との関連では、先の大戦の認識に関する日本の閣僚発言をめぐる問題があった。一方、在サハリン「韓国人」の永住帰国問題につき、日韓共同による現地調査や実務協議が行われ、着実に解決に向けて進展している。また、日本は、8月に発表した平和友好交流計画の下で、今後の相互交流の活発化と歴史研究支援の強化を図ることとしている。なお、経済面では、韓国の対日貿易赤字が100億ドルを突破し、史上最大となっており、これをいかに改善するかが課題となっている。文化面では、日本政府は、94年秋に韓国において韓国政府の協力を得て、日本文化紹介事業「'94日本文化通信使」を実施した。具体的には、「現代日本文化の紹介」を主題として、日本語によるミュージカル「ジーザス・クライスト=スーパースター」公演、「現代日本伝統工芸展」、「現代日本デザイン展」等が行われた。韓国においては、依然日本文化に対する規制が存在しているが、この事業は、全体として述べ10万人以上の観客を動員し、韓国国民の現代日本文化に対する関心の高さを示した。