I.アジア及び大洋州

8月の議会総選挙及び11月の大統領選挙において、腐敗政治の改革、福祉向上等を訴える人民連合(PA)政権が成立し、統一国民党(UNP)は77年以来続いた政権の座を明け渡すこととなった。
 クマーラトゥンガ新政権は、スリ・ランカにおける最大の政治課題であるシンハラ・タミール間の民族問題について、タミール過激派(LTTE)との和平交渉の推進を図り、10月には、本格交渉に向けて、LTTEとの間の第1回準備会合を開催した。そのほか新政権は、9月、腐敗・汚職に関する法律を改正し、12月には、腐敗・汚職を追及するための委員会を設立するなど政治改革を進め、現行の実権大統領制の廃止を含む憲法改正にも着手した。
 経済面では、民間部門の堅調な伸びを反映して、93年に、6.9%のGDP成長率を達成した後、94年も、引き続き堅調であった。しかし、福祉政策の強化、補助金増額等により財政赤字は増大傾向にある。
 対外関係では、インドその他の南アジアの近隣諸国との関係は、伝統的に最も重視されており、クマーラトゥンガ新政権成立後、カデイルガマール外相が、インド、バングラデシュ、モルディヴを訪問、南アジア地域協力連合(SAARC)重視の姿勢を示すとともに、新政権の政策を説明し、これら諸国との友好関係の維持・増進を確認した。
 日本は、スリ・ランカにとって86年以降最大援助国であり、貿易高は米国に次いで2位となっており、在留邦人数も93年の約560人から94年に約750人に増加している。また日本語学習者の増加等、文化面での交流が活発になってきており、93年12月には、当地在留邦人の間で日本・スリ・ランカ友好文化基金が発足した。

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