I.アジア及び大洋州

 台湾においては、87年の戒厳令解除前後を境に急速に民主化・自由化が進展しており、94年には7月に台湾住民の直接選挙による「総統」選出を行うための憲法改正、12月には台湾省長、台北・高雄市長の直接選挙が実施され、初の民選省長が誕生したほか、野党民進党が台北市長を獲得するなどの新しい動きが見られた。  経済面では93年の実質経済成長率が6.3%と安定成長を維持した後、 94年も6.4%の成長が見込まれている。貿易総額は93年に1,620億ドルと 最高額を更新したが、94年はこれを上回る見込みである。
 中国・台湾間の交流は種々の分野で活発化しており、93年4月のシンガポールでの民間代表機関同士のトップ会談以降、定着したルートとして両機関の間で事務レベル協議、準トップ会談が継続的に行われている。
 また、対外的には貿易・投資の増進、文化・科学技術の交流等を通じて各国との実質的関係強化を図っており、94年には「総統」、「行政院長」等によるいわゆる「首脳外交」を展開するなどの動きが目立った。特に、米国との関係では、米国が9月に対台湾政策の調整を発表し、台湾の在米事務所の名称変更を認めたほか、12月にはペニヤ運輸長官が訪台するなどの動きが見られた。アジア太平洋地域においては、台湾はAPECへの参加、ASEAN諸国等への投資を促進する「南向政策」などにより地域全体の繁栄に重要な役割を果たしている。また、台湾は各種国際組織への参加を目指し活動しており、WTO加入に向け各国との交渉を積極的に行っているほか、国連復帰運動も展開している。
 日本との関係では、こうした近年の台湾をめぐる情勢の変化を反映し、 経済・文化面における交流が進んでいる。日本は72年の日中共同声明に基づく日中関係の基本的枠組みの中で、台湾との実務関係をとり進めてきている。

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