I.アジア及び大洋州
94年1月、93年12月に死去したガニラウ大統領の後任としてマラ元首相が新大統領に就任した。2月には、議会解散に伴う総選挙が実施され、苦戦が予想された与党は、党首ランブ力首相に対する国民、伝統社会の根強い支持を基盤に選挙前よりも議席数を伸ばし引き続き政権を維持することとなった。8月には、内閣を改造し、蔵相、商業相の主要経済閣僚に実力派の人材を起用するなど、政治的安定性を確保し積年の問題である労働問題に本格的に対処する姿勢を見せている。また、11月に可決された95年度予算案では94年度に引き続き財政赤字の縮小を目指しているが、公務員給与の抑制、団体交渉権の制限に対し労働組合が激しく反発したため、12月、政府はこれら方針の取下げを決定した。
対外経済に関しては、砂糖産業を中心とする主要産業が新たな世界貿易機構体制の中で、いかに生き残る道を見出すかが今後の大きな問題となっている。また、オーストラリア、ニュー・ジーランドとの関係においては、南太平洋地域貿易経済協力協定の適用に当たり有利な条件を両国に認めさせたことは、外交上の収穫であった。経済面では、国内経済は観光、砂糖の二大産業が好調であるものの、成長率は健全な発展を遂げるために不可欠といわれる8%には程遠い3.2%と全般的に低迷している。この結果、新卒者の失業が大きな問題となっている。
対外関係では、日本、中国、韓国、台湾を中心としたアジア諸国との間の経済関係の緊密化に努めており、9月にはランブカ首相が中国、台湾を訪問し、10月には公式実務訪問賓客として日本を訪問した。