I.アジア及び大洋州

 91年3月に発足したバングラデシュ民族主義者党政権は民主政治の確立に向け着実に前進を続けてきたかにみえたが、94年春以来の野党の国会ボイコットと議員辞職により大きな試練を迎えている。話合いによる解決の道は未だ残されているものの、国民生活から遊離した与野党間の政争は国民の支持が得られないばかりでなく、経済面への影響も懸念されている。
 経済面では、政府は経済安定化に取り組んでおり、インフレ率の低下(93-94年度《93年7月-94年6月》1.9%)、経常収支赤字の削減(同対GDP比1.5%)、財政赤字の削減(同対GDP比5.0%)、外貨準備率の増加(93年度末:輸入の7.9か月分)等に見られるように引き続き改善を見ている。また、近年、サイクロン被害等の深刻な自然災害もなく、経済成長率(93-94年度4.9%)の上昇に加え、人口増加率の抑制(2%以下)、コメの自給をほぼ達成するなど全般的に改善の方向にある。しかし、国民一人当たりのGDPは225米ドル(93-94年度)と依然として開発途上国の中でも最も低い水準にとどまっており、経済の好調が国民の生活レベルの向上に結びつくまでには至っていない。
 外交面では、インドとの関係は、ガンジス川配水問題をはじめ表立った動きは見られなかった。バングラデシュは、先進援助諸国、中近東イスラム諸国、中国との関係を重要視しているほか、最近は、韓国、ASEAN諸国へのアプローチを図っている。ミャンマーから流入した回教徒難民問題は9月以降送還ペースが早まっており、95年末までの送還完結を目指している。
 日本との関係では、3月にジア首相が公賓として訪日した。経済協力面では、バングラデシュ国民の長年の宿願であったジャムナ橋の建設計画への円借款供与が決定された。

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