I.アジア及び大洋州

 政治面では、93年9月のウインテイ首相の再選が最高裁裁定により無効とされた結果、94年8月に首相選挙が行われた。この選挙で連立組み替えが起こり、チャン政権が誕生、ブーゲンビル問題、州政府改革問題、政府財政問題等PNGの直面する諸問題の解決に向けてのチャン首相の指導力に対する国民の期待が高まった。
 内政上最大の問題であるブーゲンビル問題については、就任直後の9月初め、チャン首相自ら、分離独立をとなえる過激派ブーゲンビル解放軍(BRA)の指導者と和平交渉を行い、和平会議の開催、南太平洋平和維持部隊の受入れ等を内容とするホニアラ合意が両者の間で署名された。
 また、10月にはアラワにおいて和平会議が開催された。そこでは、主要なBRA指導者が欠席し問題の解決をもたらなかったが、会議に出席したBRA幹部、酋長、女性グループ等総ての者が平和を希求し、対話を推進していくことを確認しあった。
 経済面では、原油、コーヒー等主要輸出産品の価格が回復を見せたものの、原油生産量の落ち込みのため94年のGDP成長率は0.8%と見込まれ、前年(16.5%)を大きく下回った。
 チャン政権発足以来、変動相場制移行という思い切った経済政策を採り、また、国際収支ギャップを埋めるため、構造調整計画につきIMF及び世界銀行との協議を進めている。
 対外関係についてチャン首相は、ASEAN諸国、東アジア諸国との主に経済関係強化に努めるとともに、南太平洋島嶼諸国との関係も重視する姿勢を鮮明に示し、この南太平洋重視の姿勢をルックノース・ワークパシフィックと表現した。
 豪州に次ぐ第2位の二国間政府開発援助供与国たる日本への期待は大きく、94年は、教育施設の整備などを重点とした無償資金協力、人材育成を主眼とした技術協力を幅広く実施した。また、ラバウル火山災害に対する緊急援助も行った。

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