I.アジア及び大洋州
本年は、新憲法(90年秋施行)下でスタートした議院内閣制に基づく政治運営が定着していくかどうかについての大きな試練の年であった。11月の総選挙で、貧困撲滅、土地改革、福祉政策の拡充、対インド関係の是正等を掲げる共産党が下院第1党となり、単独少数政権を樹立したが、憲法の手続に従い平穏裡に政権交代が行われたことは、ネパールの民主化過程において一つの前進と言える。
経済面では、93/94年度(93年7月-94年6月)は食料穀物や主要工業の生産の伸びを反映して、前年度に比し国内総生産(GDP)が7.6%の伸びを記録したと見込まれる。一方、消費者物価上昇率は約9%を記録し、特に都市部カトマンズ盆地では12.8%と大幅に上昇し、国民不満の増大につながるなど政治問題の一つとなっている。
対外関係においては、不安定な内政動向を反映してか、特に大きな動きは見られなかった。日本の民主化支援、経済協力等の各施策を通じ、日本との関係は、一層進展しつつある。