第1章 国際情勢認識

 

第1節 概観

 

 93年の世界は、一部を除き未だ回復の兆しの見られない先進国経済、旧ユーゴー等の地域紛争、北朝鮮の核兵器開発疑惑、大量破壊兵器及びミサイルの拡散、旧ソ連諸国の混迷などに有効な解決が見られないまま引き続き流動的で不透明なまま推移した。

 そうした状況の下、国際社会は、国連、日米欧、各地域機関といった様々な場で、平和と繁栄のための新しい枠組みを模索し、旧東側諸国、開発途上国とのパートナーシップの構築、平和維持、不拡散、マクロ政策協調、多角的自由貿易体制の強化等に向けて努力している。実際、93年には、新生カンボディアの再出発、イスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)の相互承認及びパレスチナ暫定自治の原則合意、ウルグァイ・ラウンドの実質妥結などそうした努力が実を結び、今後に明るい展望を開く動きも見られた。

 本章においては以下で93年の国際情勢を概観し、次に第2章でそうした状況の下で国際社会が平和で繁栄した人間的な世界に向けていかなる対応を行い、国際社会の責任ある一員として日本がその努力にいかに参画しているかを見ていく。

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