4. 日本国政府が関与した主要な共同コミュニケ等
(91年4月18日) | |||
1 | エム・エス・ゴルバチョフ・ソヴィエト社会主義共和国連邦大統領は,日本国政府の招待により,1991年4月16日から19日まで日本国を公式訪問した。エム・エス・ゴルバチョフ・ソヴィエト社会主義共和国連邦大統領には,ア・ア・ベススメルトヌィフ・ソヴィエト社会主義共和国連邦外務大臣その他の政府関係者が同行した。 | ||
2 | エム・エス・ゴルバチョフ・ソヴィエト社会主義共和国連邦大統領夫妻は,4月16日,皇居にて天皇,皇后両陛下と会見した。 | ||
3 | エム・エス・ゴルバチョフ・ソヴィエト社会主義共和国連邦大統領は,海部俊樹日本国内閣総理大臣と,平和条約締結交渉を含む日ソ間の諸問題及び相互に関心を有する主要な国際問題について率直かつ建設的な話合いを行った。エム・エス・ゴルバチョフ・ソヴィエト社会主義共和国連邦大統領は,海部俊樹日本国内閣総理大臣に対し,ソヴィエト社会主義共和国連邦を公式訪問するよう招待し,この招待は,謝意をもって受諾された。訪問の具体的時期は,外交経路を通じて合意される。 | ||
4 | 海部俊樹日本国内閣総理大臣及びエム・エス・ゴルバチョフ・ソヴィエト社会主義共和国連邦大統領は,歯舞群島,色丹島,国後島及び択捉島の帰属についての双方の立場を考慮しつつ領土画定の問題を含む日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約の作成と締結に関する諸問題の全体について詳細かつ徹底的な話合いを行った。 | ||
これまでに行われた共同作業,特に最高レベルでの交渉により,一連の概念的な考え方,すなわち,平和条約が,領土問題の解決を含む最終的な戦後処理の文書であるべきこと,友好的な基盤の上に日ソ関係の長期的な展望を開くべきこと及び相手側の安全保障を害すべきでないことを確認するに至った。 | |||
ソ連側は,日本国の住民と上記の諸島の住民との間の交流の拡大,日本国民によるこれらの諸島訪問の簡素化された無査証の枠組みの設定,この地域における共同の互恵的経済活動の開始及びこれらの諸島に配置されたソ連の軍事力の削減に関する措置を近い将来とる旨の提案を行った。日本側は,これらの問題につき今後更に話し合うこととしたい旨述べた。 | |||
総理大臣及び大統領は,会談において,平和条約の準備を完了させるための作業を加速することが第一義的に重要であることを強調するとともに,この目的のため,日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦が戦争状態の終了及び外交関係の回復を共同で宣言した1956年以来長年にわたって二国間交渉を通じて蓄積されたすべての肯定的要素を活用しつつ建設的かつ精力的に作業するとの確固たる意思を表明した。 | |||
同時に,日本国と日本国に隣接するロシア・ソヴィエト連邦社会主義共和国を含むソヴィエト社会主義共和国連邦との間の相互関係における善隣,互恵及び信頼の雰囲気の中で行われる貿易経済,科学技術及び政治の分野での並びに社会活動,文化,教育,観光,スポーツ,両国国民間の広範で自由な往来を通じての建設的な協力の展開が,合目的的であると認められた。 | |||
5 | 双方は,政治対話の拡大が日ソ関係の増進にとって有益かつ効果的な方途であることを確信し,最高首脳レベルでの定期的な相互訪問による政治対話を継続し,深化させ,発展させるために努力するとの決意を表明した。 | ||
6 | 双方は,1966年に合意された両国外務大臣間の協議の定期的な実施の重要性を指摘し,少なくとも年1回,必要な場合にはより頻繁に,協議を行うことを確認した。 | ||
7 | 双方は,両国が,相互の関係において,国際連合憲章第2条に掲げる原則,なかんずく次の原則を指針とすることを確認した。 | ||
(イ) | その国際紛争を,平和的手段によって,国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように,解決すること。 | ||
(ロ) | その国際関係において,武力による威嚇又は武力の行使は,いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも,また,国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むこと。 | ||
8 | 双方は,今回の首脳会談が両国にとって極めて有益であったことにつき意見の一致をみた。双方は,実務分野における協力を拡大し及び活性化することの重要性を指摘し,これに関連して次の文書を作成した。 | ||
― | 日ソ政府間協議に関する覚書 | ||
― | ソヴィエト社会主義共和国連邦における市場経済への移行のための改革に対する技術的支援に係る協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定 | ||
― | 日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の1991年から1995年までの期間における貿易及び支払に関する協定 | ||
― | ソヴィエト社会主義共和国連邦極東地方との消費物資等の貿易に関する交換公文 | ||
― | 展覧会及び見本市の相互開催の勧奨に関する日ソ共同声明 | ||
― | 漁業の分野における協力の発展に関する日ソ共同声明 | ||
― | 航空業務に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の附属書Iの改正に関する交換公文 | ||
― | シベリア経由路線による航空業務の拡大に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の交換公文 | ||
― | 環境の保護の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定 | ||
― | 原子力の平和的利用の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定 | ||
― | チェルノブイリ原子力発電所事故の住民の健康に対する影響を緩和するための日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の協力に関する覚書 | ||
― | 1991年4月1日から1993年3月31日までの間における文化交流に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の実施に関する計画の承認に関する交換公文 | ||
― | 文化財の保護の分野における日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の交流及び協力に関する覚書 | ||
― | 現代日本研究センターの活動に関する協力に関する日ソ共同声明 | ||
― | 捕虜収容所に収容されていた者に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定 | ||
9 | 双方は,日ソ両国国民の生活水準の向上及び国際社会の一層の進歩に貢献することを目的として,友好及び互恵の基礎の上に,政治,経済,貿易,産業,漁業,科学技術,運輸,環境,文化及び人道を含む様々な分野において,均衡のとれた形でかつ可能な範囲で両国間の実務関係を更に深化させ及び発展させることの必要性につき意見の一致をみた。 | ||
10 | 双方は,日ソ政府間貿易経済協議及び日ソ・ソ日経済委員会の活動を高く評価するとともに,互恵の基礎に基づく両国間の貿易経済関係の一層の拡大を促進する用意があることを表明した。双方は,ソヴィエト社会主義共和国連邦におけるペレストロイカが今後とも推進されることがソヴィエト社会主義共和国連邦のみならず世界全体にとって意義を有することにつき認識の一致をみた。 | ||
11 | 双方は,漁業の分野における現行の政府間諸協定に基づく両国間の協力を高く評価するとともに,このような協力を長期的かつ互恵的な基盤の上に一層発展させるため,建設的な意見交換の継続が望ましいことにつき意見の一致をみた。これに関連して,双方は,市場経済の基礎の上に,日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦極東地方の企業及び団体の間における広範な関係の発展に賛意を表明した。双方は,世界の海洋における生物資源の保存,管理,再生産及び最適利用に関し,両国政府がともに参加している国際機関の活動を含む国際的協議の場を通じて密接な協力を維持し,発展させていくことの必要性を認めた。 | ||
12 | 双方は,科学技術協力委員会の活動及び互恵の基礎の上に両国間で実施されている科学技術分野の協力の着実な進展に満足の意を表明し,このような協力の一層の進展を図るとともに,双方によって必要と認められるその他の分野における協力を拡大することにつき意見の一致をみた。 | ||
13 | 双方は,近時両国間の文化交流が活発化し両国国民間の相互理解が深まりつつあることに満足の意を表明した。双方は,既存の協定に基づく両国間の文化交流が着実に進展していることを評価し,両国の伝統的及び現代の文化及び社会に対する相互理解を一層促進するための交流が重要であることにつき意見の一致をみた。 | ||
14 | 双方は,人道的分野における両国間の協力が,両国国民の相互信頼の深化に大きく資するものであることを認め,墓参,捕虜収容所に収容されていた者及びソヴィエト社会主義共和国連邦に常住する日本人の問題に係る協力が活発化していることに満足の意を表明した。 | ||
15 | 双方は,世界的及び地域的規模での国際情勢の改善の過程が不可逆的な性質を持ち,更に発展すべきであることに同意した。双方は,国際の平和及び安全の維持のために努力が継続されることの必要性並びに均衡のとれた形で可能な限り低い軍事力及び軍備の水準を達成するとの課題の重要性を強調した。この関連で,双方は,軍備管理・軍縮面で達成された成果を歓迎し,その誠実な実施の重要性を確認するとともに,この分野において進行中の二国聞及び多国間の交渉における速やかな合意の達成を支持した。 | ||
16 | 双方は,湾岸における危機の厳しい教訓を考慮し,核兵器,化学兵器等の大量破壊兵器及びミサイルの不拡散並びに通常兵器の移転に関する透明性及び公開性の増大並びに各国による通常兵器の移転の自主的な管理の強化について,国際の平和及び安全の維持の見地から,国際社会が努力を強化することが必要であるとの認識を共有した。 | ||
17 | 双方は,冷戦体制の終焉とともに急速に変化を遂げつつある現在の国際秩序の中で,国際政治及び国際経済において双方が占める地位及び双方が果たすべき責任にかんがみ,日ソ関係の完全な正常化を達成して飛躍的発展への展望を開くことが重要であり,その実現が両国の利益にこたえるのみならず,アジア・太平洋地域ひいては世界の平和と繁栄に資するとの点で一致した。 | ||
18 | 双方は,国際連合その他の国際機関の活動を高く評価するとともに,これらによる地域紛争の解決並びに世界における相互理解,信頼及び安定の強化並びに現代国際社会における建設的協力及び協調の拡大に対する重要な貢献を高く評価する。双方は,国際連合が政治,経済及び環境の問題並びに麻薬の不法な取引との闘いの問題を含む他の世界的問題の解決に果たす役割の重要性について意見の一致をみた。双方は,平和のための活動に係る国際連合の潜在力を十分に開花させ,国際連合が世界的問題に果たす役割を高めるよう支援するため,両国間で協力及び協議を更に進める必要性につき認識の一致をみた。 | ||
双方は,国際連合憲章における「旧敵国」条項がもはやその意味を失っていることを確認するとともに,国際連合の憲章及び機構の強化の必要性に留意しつつこの問題の適切な解決方法を探求すべきことにつき意見の一致をみた。 | |||
19 | 双方は,湾岸における危機に対して,国際社会が国際連合を中心として連帯し,協力したことがクウェイトの解放という成果を可能としたとの認識を共有するとともに,イラクが国際連合安全保障理事会の関連諸決議を早期に履行することにより,地域の平和と安全が回復されなければならないことにつき意見の一致をみた。 | ||
双方は,中東地域が国際平和にとり極めて重要な地域であることを認識し,中東地域のみならず世界の平和と繁栄の確保のために,地域の戦後の経済復興に対し,地域内の諸国の意向や活動を尊重しつつ,国際社会全体が協調して積極的に協力していくことが重要であるとの認識で一致した。 | |||
双方は,湾岸地域の危機後の建設に関する努力とともに,中東における他の尖鋭化した紛争の火種,まず第1に中東和平問題の早期解決及びそのための真剣な和平プロセスの開始を国際社会が支援することが極めて重要であると考える。 | |||
20 | 双方は,アジア・太平洋地域における平和と繁栄のための努力を評価した。双方は,これに関連して,同地域における紛争の平和的手段による公正で合理的な解決を支持するとともに,同地域の諸国家の自主性を尊重しつつ,これらの諸国の適切な自助努力に対し建設的な協力を行っていくことが重要であるとの認識で一致した。 | ||
21 | 双方は,朝鮮半島の平和と安定の確保について大きな関心を表明するとともに,その実現のために南北対話の進展が重要であるとの共通の認識に立って,南北間の総理会談の継続を支持した。これに関連して,日本側は韓ソ国交樹立を,ソ連側は日朝間の関係正常化に関する話合い開始を,いずれも朝鮮半島の緊張緩和に資するものとして歓迎した。双方は,朝鮮民主主義人民共和国がIAEAとの保障措置協定を速やかに締結することを希望する旨表明した。 | ||
双方は,国際連合安全保障理事会の5常任理事国及びカンボディアに関するパリ国際会議の共同議長によって作成されたカンボディア問題の包括的政治解決に関する諸協定案の重要性に言及した。これに関連して,日本側は,国際連合安全保障理事会の常任理事国としてのソ連の貢献を評価し,また,ソ連側は,包括和平案のカンボディア当事者による受入れを促進する日本の最近の努力を歓迎した。双方は,カンボディア包括和平の早期達成のため,今後とも引き続き努力することの必要性につき意見の一致をみた。 | |||
双方は,国際情勢における緊張緩和の傾向を更に強化することの必要性につき,また,アジア・太平洋地域の平和と繁栄を推進するとの見地から安全保障面を含む広範な問題について両国間の対話と交流を拡大していくことの重要性につき,意見の一致をみた。このための方途として,双方は,1990年12月に行われた両国外務省間の政策企画協議を高く評価し,同協議を更に継続することにつき賛意を表明した。 | |||
24 | 双方は,自由と開放性の原則の下に,アジア・太平洋地域の各国間において及び関連の経済的諸機構において,地域の繁栄のための協力が進められていることを評価した。これに関連して,日本側は,ソヴィエト社会主義共和国連邦が,上記の原則を共有しつつ太平洋経済協力会議の構成員になろうとする意向を有することを歓迎した。ソヴィエト社会主義共和国連邦側は,地域の経済発展を促進することを目的として日本国が行っている貢献を積極的に評価した。 |
1991年4月18日に東京で
日本国内閣総理大臣
海 部 俊 樹
ソヴィエト社会主義共和国連邦大統領
エム・エス・ゴルバチョフ
(2) 第13回国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会コミュニケ(要旨)
(91年6月3日) | ||
I. 歴史的変化に伴うエネルギー情勢の展開 | ||
今世紀末及びそれ以降を展望し,緊急時即応体制,エネルギー安全保障の挑戦,エネルギーと環境,非加盟国の4点が特に重要と認識。 | ||
II. 湾岸危機と緊急時即応体制 | ||
― | 湾岸危機に際し,IEAの緊急時対応メカニズムの価値が証明された。 | |
― | 湾岸危機に際し,消失したイラク,クウェイトの石油供給を補填するため増産した産油国の協力的精神を称賛し,石油精製業が果たした貴重な役割に留意。 | |
― | IEAは非加盟国に対し緊急時即応体制に関し助言する方途を探求すべし。 | |
― | OECDの輸入石油依存度,中東依存度が高まっていることに鑑み,石油供給中断に対する脆弱性軽減のため,石油代替,エネルギー効率向上,エネルギー資源開発が重要。 | |
― | 湾岸危機に際し,石油価格変動が阻害されずに転嫁されたことが重要な役割を果たしたことに留意し,緊急時対応における効果的市場機能の重要性を強調。 | |
― | 緊急時即応体制の継続的強化の必要性を認識。 | |
― | 備蓄取崩しが湾岸危機における緊急時計画の主要部分を占めたことに鑑み,必要な場合には,民間備蓄に対する政府管理を強化し,政府所有・管理下の備蓄を増加するよう勧告。また,全加盟国が90日の緊急時備蓄義務を満たすよう強く要請し,同備蓄を適宜90日以上に拡大し,需要抑制措置の有効性を改善するよう勧奨。 | |
― | 湾岸戦争中にイラクが行ったクウェイトの石油施設破壊に対し,憎悪の念を表明。 | |
III. 1990年代のエネルギー安全保障の挑戦 | ||
A. エネルギー供給の多様化 | ||
― | OECDの石油生産減少を最小限に食い止める努力及び世界的規模での国際石油生産のための投資の促進を勧奨。また,石油製品需要の量・構成の変化に対応する供給能力調整の必要性を強調。 | |
― | 天然ガスの需要増大が電力部門を中心に急速に増大することに留意し,供給源の多様化及び安定供給の必要性を強調。 | |
― | 今後の電力需要に対応する為には相当量の新規発電能力が必要。効果的電力使用奨励のため需要面の措置が重要であり,また,柔軟性のある発電能力と燃料源の多様化が必要。 | |
― | 石炭貿易における障壁・歪曲を減少させるべきことに留意すると共に,温室効果ガス排出問題を緩和するため,転換効率の高いクリーン・コール・テクノロジーの利用を勧奨。 | |
― | 閣僚は,原子力エネルギーがIEA諸国のエネルギー供給に対して果たす相当の貢献を認識。原子力施設の安全運転,廃棄物処理等への持続的かつ強化された国際協力を奨励。 | |
― | 再生可能エネルギーの商業開発,実証及びエネルギー・システムへの統合を要請。 | |
B. エネルギー効率 | ||
― | エネルギー効率と省エネルギーがエネルギー安全保障,環境,経済の目標達成に多大の貢献を行ってきたことに合意。 | |
― | エネルギー効率向上のための協調的アプローチ発展に対してIEAが支援を継続することに合意。 | |
― | 運輸部門の効率性向上を要請し,発電,電力利用におけるエネルギー効率の良い技術の適用率向上を約束。 | |
― | 熱電併給,地域暖房の効用につき注意喚起し,空間暖房における省エネルギーの可能性を指摘。 | |
C. エネルギー技術と研究開発 | ||
― | 今後数十年のためのエネルギー技術戦略における長期オプションの評価が必要。 | |
技術開発・移転に関する段階的かつ柔軟な戦略が温室効果ガス排出削減に役立つとの見解表明。 | ||
新規の及び改良されたエネルギー技術オプションの開発と市場への普及を推進するため,情報のクリアリング・ハウス・メカニズム及び革新的環境技術計画に関するデータ・情報の交換システム等の実際的提案につき早期に評価するよう要請。 | ||
非加盟国及び国際機関によるIEA実施協定参加助長のため適切な法的枠組みの開発を要請。 | ||
IV. エネルギーと環境 | ||
― | エネルギー安全保障,環境保護,持続的経済成長という目標追及のための統合された政策実施に対する強いコミットメントを再確認。 | |
― | IEAに対し,エネルギーと環境に係る政策,特にエネルギー効率向上政策強化の可能性とその影響を評価するよう指示。 | |
― | IEAに対し,IPCC及び気候変動枠組条約政府間交渉会議への支援を継続するよう要請し,OECDと共に国連環境開発会議(UNCED)の準備に積極的に参加するよう勧奨。 | |
― | 温室効果ガスの安定化・削減のため地球規模の協調行動が必要であること,OECD諸国が指導的役割を果たすべきことを認識。 | |
― | IEAに対し,温室効果ガス排出削減の技術的可能性と諸手段の費用・便益の評価を行うよう要請。 | |
― | 炭素税等の措置により生じる経済上及びエネルギー安全保障上の影響の評価及び温室効果ガス排出抑制に関するエネルギー分野における進捗状況の指標開発をIEAに要請。 | |
V. 非加盟国との協力 | ||
― | 世界エネルギー市場における非加盟国の重要性増大に鑑み,これら諸国との関係強化の必要性を強調。 | |
― | 中・東欧諸国の市場経済への動きとエネルギー分野の構造改革努力を歓迎し,IEAに対し,国別調査及びIEAの活動への参加を含め,エネルギー体制の自由化と改革を支援するための計画を追及するよう要請。 | |
― | ソ連は引き続き重要なエネルギー消費・供給国であるが,生産能力は限界に達しており,将来の生産は不確定。 | |
― | ソ連の抜本的経済改革の実施が進展する際,4機関作成の「ソ連経済報告」のラインに沿った幅広いIEAの活動が実行可能となろう。IEAに対し,同報告のフォローアップを行うよう指示。ソ連の石油・ガス部門が直面している問題に特別の注意を払うよう要請。 | |
― | 「欧州エネルギー憲章」案で表明された諸目的を達成するための広範な基礎を有する協調的努力が必要であることを認識。いかなる憲章及びそれに基づく議定書も非差別的に策定すべき。 | |
― | 世界のエネルギー需要は非OECD,特にアジアにおいて増加。IEAに対しDAE's及びアジアのエネルギー生産・消費大国との接触拡大を要請。 | |
― | 産油国との健全な関係の重要性を認識し,交流・理解の増進のため,石油市場の全参加者間の接触を発展させるべきことに合意。かかる接触拡大は,市場の透明性と効率性を高めるので有益。 | |
― | 市場により最適資源配分がなされるので,石油の生産量・価格は市場決定に委ねるべし。 | |
― | 湾岸戦争後,建設的討議の機会が存在し得ることに合意し,あり得るべき議題につき検討するよう要請。かかる討議は非公式かつ幅広い基盤を有すべし。 |
(3) 第30回経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会コミュニケ(要旨)
(91年6月5日) | |||
I. 政策課題 | |||
多元的民主主義,人権尊重,市場指向型経済というOECD諸国の基本的価値は世界で広く認知。これらの基本的価値を追及している非加盟国との経済関係を増進。チェコ・スロバキア,ハンガリー及びポーランドとの「移行期のパートナー」プログラムの開始を歓迎。 | |||
価格安定を伴った持続的景気拡大への復帰を目指す。積極的な構造政策は,決定的に重要。価格安定を伴った成長は,投資により多くの貯蓄を向けるためにも重要。 | |||
貿易,投資及び資金フローの自由かつ開放的な体制は,死活的に重要。ウルグァイ・ラウンド貿易交渉の実質的かつ包括的成果についての早期合意は最重要課題。あらゆる形態の保護主義と戦う決意を再確認。 | |||
技術的進歩は,経済成長に重大な貢献。経済・社会全般の継続的調整過程で企業及び個人が中心的役割。政府には政策の一貫性及び収斂を図るなどの責任。 | |||
経済成長の恩恵が全てに及ぶことが不可欠。幅広い持続可能な開発を支援する上で,OECD加盟国と非加盟国とが相互に補強し合う一貫性のある政策を,経済,環境,社会,技術の各分野で策定することが必要。開発途上国に対する強化された協力を再確認。 | |||
II. 経済情勢 | |||
― | OECD諸国の経済成長は過去1年大きく減速。需要の減退と金融引き締めはインフレ圧力を減少。湾岸危機・戦争による石油価格の上昇とコンフィデンス失墜は,需要の弱まりに拍車。 | ||
― | OECD域内の活動は,高い実質金利及び経済活動の減速のリスクはあるが,湾岸戦争の終結による不確実性の低下,石油価格の落ち着き,いくつかの国での金利の低下,対外不均衡の削減,及び日本・独の持続的成長等の要因に支えられ数ケ月の間に回復すると見込まれる。 | ||
III. マクロ経済政策の動向 | |||
― | 健全な金融・財政政策が持続的な世界的経済回復の基礎となることが重要。インフレが引き続き懸念される国においては,金融政策は引き続き慎重に運営されるべき。多くの国では,インフレ低下の進展により金利を引き下げる余地発生。 | ||
― | 高い実質金利の継続及びOECD諸国全体としての経常収支の赤字は,投資に対し貯蓄が不十分であることを示唆。開発途上国及び中東欧諸国の投資需要のため,OECD諸国全体としての貯蓄吸収削減が不可欠。 | ||
― | 財政政策は中期財政目標の枠組みの中で引き続き策定。執拗な財政赤字の削減と税の歪曲の是正は,全体としての貯蓄及び投資水準を高める。公共支出への圧力は公共部門の管理および配分の効率性の改善によって軽減。 | ||
― | 米国等が表明した財政不均衡を削減するための措置を歓迎。他の国における公的部門の貯蓄を増強する努力の必要性を認識。 | ||
― | 成長の回復は雇用を創出。失業を中期的に減少させるため,労働市場の硬直性を取り除き,教育,訓練の改善等の適切な構造政策が必要。 | ||
― | 政策の信頼性は不可欠。政策及び目標を明確にし,国際的整合性を確保する必要。国際経済協力の強化は,最優先の課題。密接な政策協力は,健全な世界経済環境をもたらし,この観点からOECDは有用な役割。引き続き為替レートに関する協力を行っていくことは,より安定的な為替市場につながり,国際金融体制のより良い機能に貢献。 | ||
IV. 世界的枠組みの中での構造上のプライオリティー | |||
― | OECDが構造問題の政策的連携を探究すること等を要請。 | ||
― | 構造問題の政策的連携を探究すること,政策形成過程で構造問題を考慮に入れる最も効果的な方法を評価すること,及び,現行の国際交渉の対象外の分野に関し実務的な取決めを作成することの実行可能性を検討すること。 | ||
A. 経済分野 | |||
a. 貿易 | |||
― | ウルグァイ・ラウンドの成功は決定的に重要。ラウンドが出来うれば本年末までに終結すべきことにつき合意。この目標を達成するため政治的決断が必要であり,夏の終わりまでに実質的に進展すべきことを認識。ガット体制の補完的な機構強化を決意。スタンドスティル義務を遵守し,ガット規則等に反する貿易措置によりラウンド成功の見通しを危うくしないことを決意。 | ||
― | 管理貿易,ユニラテラリズム,バイラテラリズム,セクター主義の拒否を強く再確認。 | ||
― | 地域統合は多角的貿易体制の維持強化に合致する要。OECDはこの分野における進展を引き続きモニター。 | ||
― | ウルグァイ・ラウンド後の貿易政策の新しい局面をとり上げる必要性を強調。経済活動が国際化する中で政策アプローチの収斂,新しい「ゲームのルール」の検討が必要。貿易政策と他の政策分野との対立を回避するための努力を同時に実施。 | ||
b. 農業 | |||
― | 農業改革における進展は,極く限定的。生産者補助金相当額(PSE)で計測した農業への支持は,90年には増加。世界市場価格の下落のため,輸出に対する助成は急増し,農産物輸出に依存している国の経済展望に深刻な影響を与える公算。 | ||
― | 農業に対する支持及び保護の実質かつ漸進的な削減を,特にウルグァイ・ラウンドとの関連で,中間レビューで設定された枠組みアプローチを通じて達成することのコミットメントを再確認。内国支持,市場アクセス及び輸出競争の分野において拘束力ある具体的なコミットメントを達成すること,並びに衛生・検疫問題について合意に達することを目的として交渉を行うことに合意。参加国の非貿易的関心事項が考慮の対象とされる。 | ||
― | 農業改革の実施状況のモニタリング,農業改革が社会・環境・経済効率に与える影響の分析等を通じ,農業改革のプロセスに対する支援を継続するよう要請。また,改革が非加盟国に及ぼす好影響を最大化するとともに,非加盟国の農業改革の推進を支援する。 | ||
農村地域開発 | |||
― | 農村地域の経済発展が停滞していることを懸念。1992年に行われる「農村地域開発プログラム」の報告と勧告を待望。 | ||
技術 | |||
― | 技術が経済成長及び福祉の持続に役立つことを強調。 | ||
― | 技術の問題(特に通信技術)の構造・貿易上の側面における活動のモニタリングの継続を奨励。 | ||
競争政策 | |||
― | 競争政策の国際的次元に関する作業,並びに競争政策と他の分野における諸政策との間の相互作用に関する作業の継続をOECDに要請。 | ||
産業補助金 | |||
― | 貿易歪曲効果を有する補助金の撤廃又は規律の強化に努力するべし。透明性の改善を歓迎。加盟国政府は,産業補助金の規律改善のための共同の努力を強化。 | ||
造船 | |||
― | 造船作業グループによる,造船業及び船舶修理業における正常な競争条件を尊重した合意案へ向けての作業の前進を歓迎。 | ||
輸出信用及びタイド援助信用 | |||
― | 輸出信用及びタイド援助信用による貿易及び援助の歪曲削減のための関係委員会等の議長報告を歓迎。遅くとも本年末までに残された障害を克服。 | ||
金融・資本問題 | |||
― | 資本市場及び海外直接投資に関し国際投資・多国籍企業に関する1976年宣言の強化を歓迎。内国民待遇インストルメントの強化に合意。海外直接投資の分野における国際的規律の強化拡大の決意を表明。 | ||
― | 各国政府は投資及びサービスの分野における自由化を引き続きコミット。 | ||
― | 米国の金融改革の意向を歓迎。 | ||
― | マネーロンダリングに関する金融活動タスクフォースの活動を更に発展させることに合意。OECD事務局サービスを提供。 | ||
B. 社会分野 | |||
― | 長期失業,機会の不平等,落ちこぼれ,所得移転への根強い依存,人口上の諸展開を含む社会問題に対処するための「積極的な」政策が必要。 | ||
労働市場政策と人的資源開発 | |||
― | 1990年11月の閣僚レベル教育委員会の結論を支持。 | ||
― | 構造変化を促す積極的労働市場政策,例えば失業者や失職に脅かされる労働者への訓練の提供を奨励。 | ||
― | 労働市場政策,社会政策,教育・訓練政策は,人的資源開発のための総合的なアプローチの一部,労働市場と労働力が社会経済変化に柔軟かつ効果的に対応できるようにすること。 | ||
社会政策 | |||
― | 社会サービスの供給の効率性の向上に対し社会政策強化が必要。 | ||
移民 | |||
― | 移民圧力が世界的に形成されているという広範囲に及ぶ懸念に留意。 | ||
― | OECDに対して,移民に関する作業を強化することを要求。 | ||
都市問題 | |||
― | 都市問題への解決策を明らかにするようOECDに要請。 | ||
C. 環境分野 | |||
― | 1991年1月のOECD環境大臣会合の成果を歓迎。 | ||
― | OECD諸国は1990年代の環境戦略を追求すべし。 | ||
― | OECD諸国の環境実績レビューの必要性につき合意。 | ||
― | 経済政策と環境政策の統合強化を環境大臣が打ち出したことを歓迎。 | ||
― | 環境配慮をすべての経済部門によりよく統合するよう要請し,OECDが政策の相互関連性の分析作業を継続するよう要請。 | ||
― | 「OECDガイドライン」に関する追加的作業を行うことを支持。 | ||
― | 地球環境問題のためのOECD諸国間及び非加盟国との間の国際協力の重要性の強調。その一要素としての環境関連技術の開発と移転の重要性。 | ||
― | 「貿易と環境」についての作業を継続し,明年の閣僚理事会で報告することを要請。 | ||
D. 行政管理 | |||
― | 各国の公的部門の効率性の向上及び政府の運営方法の再検討の必要性。 | ||
E. エネルギー | |||
― | 石油供給途絶に対する脆弱性削減努力の継続の重要性。エネルギー安全保障と環境保全及び経済成長を促進する総合的な政策の遂行の重要性。OECD諸国と非OECD諸国の利害関係の緊密化,特に,ソ連が抱えるエネルギー問題に対し特別の注意を払うべし。全市場関係者間の接触を発展させるべし。 | ||
V. 非加盟国との協力 | |||
― | 非加盟国との関係の強化を歓迎。 | ||
開発途上国 | |||
― | 効果的な政策を採用している開発途上国,特に後発開発途上国への援助の強化の必要性。途上国との協調は以下を目標とする。 | ||
(あ) | 持続的経済成長及び世界経済への統合の促進 | ||
(い) | 過度の軍事支出の削減 | ||
(う) | 生産活動への男女の参加,市場機構・民間の役割の強化及び利益の公平配分 | ||
(え) | 信頼しえる政府及び法の支配の促進 | ||
(お) | 環境面での持続性の確保 | ||
(か) | 麻薬問題への取組み | ||
― | 開発途上国との協力につきより一貫した政策アプローチをとる必要性。債務戦略強化の再確認,特に最貧国債務については,パリ・クラブで追加的債務軽減策について早急かつ妥当な結論が出されることを期待。中所得国債務については,パリ・クラブの枠組みで遂行されるべし。 | ||
― | ODA対GNP比0.7%目標及び海外直接投資の役割に留意。中東欧諸国支援,湾岸の開発は,途上国に対する協力の優先度を減じるものではないことの再確認。 | ||
― | 経済成長と公正,人権擁護及び政府の効率性の改善を含む参加型開発の必要を強調。 | ||
― | 先進国と開発途上国の間の関係に関する新しいアプローチを発展させるためにOECDの関連機関での作業を継続。 | ||
中東欧 | |||
― | 中東欧諸国の中央計画経済から市場経済への移行には抜本的な構造調整及び従来の思考パターンの大幅な変更が必要。効率的,効果的かつ透明性の保たれた形での支援が重要。中東欧諸国に対する純粋な無償援助,食糧援助及び人道援助以外のタイド援助信用の回避を支持。 | ||
― | OECD諸国の市場へのアクセス及びOECD諸国の持続的な経済成長は改革の成功に大きく貢献。民間投資を積極的に奨励。国際的な援助努力への各国の公平な参加を再確認。 | ||
― | 政策立案のための技術協力供与に関するOECDの役割を支持,強化。「移行する欧州経済に対する協力センター」による「移行期のパートナー」プログラムの設立の重要性を強調。 | ||
ソ連 | |||
― | 政策対話,技術協力,人道的援助がソ連における改革を支援し得ることに留意し,適切な場合には既存の国際機関が支援のチャネルとして使われるべき。OECDによるソ連及び適切な場合には各共和国に対する技術協力を歓迎するとともに,ソ連の経済政策及び改革のモニタリングの継続を要請。 | ||
アジアの活力ある経済 | |||
― | アジアの活力ある経済の経済パフォーマンスの良さを再確認し,同諸国との非公式対話を更に深める必要性を強調。特に政策協力,多角的貿易,投資体制の強化等を含む貿易政策についての論議を歓迎。 | ||
ラテン・アメリカ,特にメキシコ | |||
― | 中南米諸国は,経済状況の改善を果たし,世界経済の中でより積極的な役割を果たす立場。特にメキシコからのOECDとの協力関係の緊密化に対する希望表明を歓迎し,事務総長によるフォローアップ要請。 |
(4) 第17回主要国首脳会議(ロンドン・サミット)関連文書(仮訳)
(イ) 政治宣言一国際秩序の強化
(91年7月16日) | |||
1. | 我々7ヵ国の首脳及び欧州共同体の代表は,平和で,公正で,民主的で,かつ,繁栄する世界という理想に対する我々の確固たるコミットメントを新たにする。国際社会は,大いなる挑戦に直面している。しかし,同時に,希望を抱くべき理由も存在する。我々は,共通の問題を解決するため多数国間の取組みを強化しなければならず,国際連合がその憲章に基づき正に中核となる国際体制を強化するため尽力しなければならない。我々は,他の諸国の指導者に対し,我々のこのような試みに加わるよう呼び掛ける。 | ||
2. | 湾岸危機を通じて,国際連合安全保障理事会が,国際社会の支持を得て,国際の平和及び安全の回復並びに紛争解決のために行動するという自己の役割を果たすことができることを証明したことは,我々に希望を与え,我々を鼓舞するものである。過去40年間にわたる東西対立の時代を乗り越え,今や国際社会は,中東のみならず,危険と衝突の脅威があり又は他の挑戦に対応しなければならないところではどこでも,この新しい協力の精神を基盤としていかなければならない。 | ||
3. | 我々は,今や,国際連合にとって,その創立者の公約と理想を完全に実現するための条件が調っているものと信じる。再活性化された国際連合は,国際秩序を強化するに当たって中心的な役割を果たすこととなろう。我々は,人権を擁護し,すべての者にとっての平和と安全を維持し,及び侵略を抑止するために,国際連合を一層強力,効率的,かつ,実効的なものにすることを誓約する。我々は,潜在的な侵略者に対して侵略行動の帰結がいかなるものであるかを明らかにすることによって将来の紛争の回避に資するよう,予防外交を最優先の課題とする。平和維持における国際連合の役割は強化されるべきであり,我々は,これを強力に支援する用意がある。 | ||
我々は,イラク政府による暴力的抑圧がもたらした同国における人道上の問題の緊急かつ圧倒的な性格にかんがみ,国際社会が国際連合安全保障理事会決議688を受けて特例的な行動を起こす必要があったことに留意する。我々は,国際連合及びその関連機関に対し,今後状況が必要とする場合には,同様の行動をとることを考慮する用意を整えておくよう求める。飢謹,戦争,抑圧,難民流出,疫病,又は洪水による広範な人的被害が,緊急を要し,かつ,圧倒的な規模にまで達する場合には,国際社会としては,拱手傍観していることはできない。 | |||
バングラデシュ,イラク及びアフリカの角における最近の悲劇は,緊急事態に対処するために国際連合の救済活動を強化する必要があることを示している。我々は,すべての国際連合加盟国に対し,自発的拠出を求める事務総長の呼び掛けに応えるよう要請する。我々は,大規模災害に対する国際連合のすべての救済活動につき,調整を強化するための措置及び効果的な実施を促進するための措置がとられることを希望する。このようなイニシアティヴとしては,国際連合の実効性を強化するための全般的な努力の一環として,次の措置を挙げることができる。 | |||
(a) | 国際連合事務総長に対してのみ責任を負う高級職員であって,緊急事態に対する迅速かつ十分に統合された国際的対応を指揮する任務及び国際連合の関連する呼び掛けを調整する任務を有するものを指名すること。 | ||
(b) | 国際連合システム内の資源並びに援助国及びNGOからの支援を,危機に際して緊急の人道上の必要に応えるために動員することができるよう,制度の改善を図ること。 | ||
国際連合は,こうして,これまで時として欠けていた早期の行動を起こすことが可能となろう。国際連合は,また,差し迫った危機について国際社会に警報を発する期警戒能力を十分に活用すべきであり,緊急事態に対処するために利用可能な資源及び物資を事前に指定しておく問題を含め,緊急計画を準備する作業に当たるべきである。 | |||
6. | 我々が前回会合して以来,世界は,クウェイトに対する侵攻,その占領及びこれに続く同国の解放を目の当たりにしてきた。一小国に対する武力併合を覆すため国際社会が示した圧倒的な反応は,次の原則が広く受け入れられていることの証左であった。 | ||
― | 平和に対する脅威に対抗し及び侵略を鎮圧するために,集団的措置をとること。 | ||
― | 紛争を平和的に解決すること。 | ||
― | 法の支配を支持すること。 | ||
― | 人権を擁護すること。 | ||
これらの原則は,文明社会における国家間の関係を処理するに当たって基本的なものである。 | |||
7. | 我々は,湾岸諸国及びその近隣諸国がその今後の安全保障を図るために行っていることを支持する旨を表明する。我々は,安全保障理事会のすべての関連決議が完全に履行され,イラク及びその近隣諸国の国民が脅迫,抑圧又は攻撃の恐怖なしに生きることができるようになるまでの間,イラクに対する制裁を継続することとしている。イラク国民は,開かれた民主的な方法で自己の指導者を選択する機会を与えられて然るべきである。我々は,クウェイトにおける来たるべき選挙に期待するとともに,クウェイト及び域内における人権をめぐる状況の改善を期待する。 | ||
8. | 我々は,イスラエルとパレスチナ人を含むそのアラブの隣人との間に包括的,公正かつ永続的な和平をもたらすためのプロセスが開始されることこそ何よりも重要であると考える。そのような和平は,国際連合安全保障理事会決議242及び338並びに領土と平和との交換の原則に基づくものでなければならない。我々は,一方においてイスラエルとパレスチナ人の代表との間で,他方においてイスラエルとアラブ諸国との間で並行して行われる直接交渉を開始させる和平会議の考え方を支持する。我々は,和平プロセスを前進させるための現下の米国イニシアティヴを引き続き支持することを確認するとともに,これが,解決に向けて前進を図る上で最も希望を持たせるものであると信じる。我々は,紛争のすべての当事者に対し,相互的で均衡のとれた信頼醸成措置をとるよう,及びこのイニシアティヴに示された基盤に立って和平会議が招集されるために必要とされる柔軟な姿勢を示すよう求める。この関連で,我々は,アラブ・ボイコットは停止されるべきであり,また,同様に,占領地におけるイスラエルの入植政策も停止されるべきであると信じる。 | ||
9. | 我々は,レバノンにおいて治安の回復によってもたらされた事態好転の見通しに満足の意をもって留意する。我々は,すべての外国軍隊の撤退と自由選挙の実施につながる,ターイフ合意の完全な実施を達成しようとしてレバノン当局が行っている努力を引き続き支持する。 | ||
10. | 我々は,資本の還流,投資の増大及び貿易障害の削減を奨励するための自由化政策に基づく中東諸国間の経済的協力の進展を積極的に支持する用意があることを表明する。このような政策とともに,中東及び地中海地域に一層の安定をもたらすための包括的かつ長期的な努力が行われなければならない。 | ||
11. | 我々は,この一年間を通じ,中欧及び東欧諸国において,政治と経済の両面にわたる改革になお一層大きな進展が見られたことを歓迎し,これらの成果が,域内諸国自身による努力にも依拠しながら,経済制度の困難な移行期間を通じて維持される必要があることを認める。我々は,中欧及び東欧において市場改革及び民主主義が成功することに対し強い関心を有しており,これらの改革に対する全面的な支援を約束する。我々は,また,民主主義諸国の一員に加わることを目指してアルバニアが前進していることに留意する。 | ||
12. | ソ連における抜本的な改革のプロセスに対する我々の支持は,引き続き強固なものである。我々は,東西間の緊張緩和と多数国間の平和・安全保障体制の強化とに対して多大の貢献を行ってきたソ連の外交政策の新思考は,全世界にわたって適用されなければならないと信じる。我々は,国際協力のこの新しい精神が,アジアにおいても欧州におけると同様に十分に表れることを希望する。我々は,強制ではなく同意に基づいた,ソ連の諸民族の願望に真に応えるような新たな連邦を創設するための努力を歓迎する。この事業は壮大な規模のものである。それは,世界の安定と信頼を築く上で自己の役割を完全に果たすことのできる,開放的かつ民主的なソ連の建設である。我々は,開かれた社会,多元的民主主義及び市場経済を創設しようとするソ連の努力を支援するために,ソ連と力を合わせることを確約する旨を改めて表明する。我々は,ソ連と選挙によって選ばれたバルト諸国政府との間の交渉が,民主的,かつ,国民の正当な願望に従い,同諸国の将来を決定することを希望する。 | ||
13. | ユーゴースラヴィアの諸民族の将来を決するのは,同諸民族自身である。しかしながら,ユーゴースラヴィア情勢は,引き続き大きな懸念を惹起している。軍事力と流血は,永続的な解決をもたらす訳もなく,より広範な安定を危険にさらすばかりである。我々は,暴力行為の停止,軍隊の戦闘任務の解除と兵舎への帰還,及び恒久的な停戦を要請する。我々は,すべての当事者に対し,ブリオーニ合意を現行規定どおり遵守するよう求める。我々は,ユーゴースラヴィアの危機の解決を支援する欧州共同体及びその加盟国の努力を歓迎する。我々は,したがって,CSCE緊急メカニズムの枠組みの中でEC監視団をユーゴースラヴィアへ派遣することを支持する。我々は,国際社会の他の諸国とともに,ヘルシンキ最終文書及び新しい欧州のためのパリ憲章に謳われた諸原則,特に,少数民族の権利を含む人権の尊重の原則並びに国際連合憲章及び国際法の関連規範(国家の領土保全に関する規範を含む。)に合致する民族自決の権利の尊重の原則に従って行われる対話と交渉の過程を奨励し,支持するため,可能なあらゆることを行う。現在の事態が正常化される場合には,我々が,同国にとって不可欠な経済回復に貢献することができるようになろう。 | ||
14. | 我々は,遂にアパルトヘイトの法制上の根幹が撤廃されることとなった南アフリカにおける明確な進展を歓迎する。我々は,これらの重要な措置に引き続いて,アパルトヘイトが実体上も撤廃され,南アフリカ国民の最貧困層の置かれた状況に改善が図られることを希望する。我々は,人種差別のない民主主義社会を実現する新憲法に関する交渉が間もなく開始され,それが悲劇的な暴力事件の多発によって中断することがないことを希望する。すべての当事者は,暴力の問題を解決するため,なし得るすべてのことを行わなければならない。我々は,これまで暴力行為の一因ともなってきた,社会問題の増大と国民の多数にとっての経済見通しの悪化とによって,人種差別のない新しい南アフリカの基盤が損われることを懸念する。富と機会の不平等の緩和を促進するため,経済成長の回復を図る緊急の必要がある。南アフリカは,外国からの借入れをあらゆる筋から通常の条件で利用する途を開くような,新しい経済,投資その他の政策を追求する必要がある。南アフリカは,自ら行う国内的努力に加え,特に,教育,厚生,住宅及び社会福祉といった国民の多数が長年にわたって利益を享受することを拒まれてきた分野において,国際社会からの支援をも必要としている。我々は,我々の援助をこのような目的に向けて行くこととする。 | ||
15. | 最後に,我々は,テロリズムと人質行為を抑止するための精力的な努力を継続することにより,国際秩序を一層強化することを追求する。我々は,拘束されている地がどこであるかを問わず,すべての人質の即時かつ無条件の解放を求めるとともに,人質として拘束されたまま既に死亡している人がある場合には,そのようなすべての人々を明らかにすることを求める。我々は,人質犯に影響力を有する諸政府が人質の解放のために努力する旨約束したことを歓迎し,それらの諸政府に対し,そのための努力を強化するよう求める。我々は,人質として拘束されている人々の友人と親族に対し,同情の念を表明する。我々は,あらゆる形態のテロリズムに対する非難を再確認する。我々は,国際法及び国内法の枠内で可能なあらゆる手段によって,特に,国際民間航空の保安及びプラスチック爆薬を探知するための識別策の分野において,テロリズムを抑止し,これと闘うために,共に努力する。 | ||
16. | このサミットの場は,欧州,日本及び北米の代表にとって,今後直面する重大な挑戦について討議する貴重な機会を引き続き与える場となっている。しかし,我々だけで成功を収めることはできない。我々は,世界の他の諸国の指導者に対し,世界にあまねく大いなる正義と繁栄をもたらすよう努力していく上での前提条件である平和,安全,自由及び法の支配のために,現実的かつ持続的な貢献を行っていこうとする我々の努力に参加するよう呼び掛ける。 |
(ロ) 通常兵器の移転並びに核兵器,生物兵器及び化学兵器の不拡散
に関する宣言
(91年7月16日) | |||
我々7ヶ国の元首及び首相並びに欧州共同体の代表は,昨年のヒューストンにおける会合において,核兵器,生物兵器及び化学兵器の拡散並びに関連するミサイル運搬システムの拡散が国際の安全に対して与える脅威を強調した。湾岸危機は,これらの兵器の無統制な拡散及び通常兵器の過剰保有がもたらす危険を際立たせた。このような危険の再発を防止する責任は,武器供給国と武器受領国の双方が,また,国際社会全体が分かち合わなければならない。我々各自は,我々の中の何人かが共同で又は個別に行った諸々の提案に明らかなように,適当な場において,中東におけると他の地域におけるとを問わず,このような危険に取り組む決意である。 | |||
通常兵器の移転 | |||
1. | 我々は,多くの諸国が合理的水準の安全保障を確保するため武器の輸入に依存すること,及び自衛の固有の権利が国際連合憲章において承認されていることを認める。国際関係における緊張は,その根底にある利害対立の問題に取り組み,それを解決しない限り,存続しよう。しかし,湾岸危機は,いずれかの国が自衛のための必要を遥かに超え,近隣諸国に脅威を与えるような大量の兵器を蓄積することができる場合には,平和と安定が損われることがあることを明らかにした。我々は,このような乱用が決して二度と繰り返されることのないよう確保する決意である。我々は,透明性,協議及び行動の三原則をすべての国が実施するならば,前進することができるものと信じる。 | ||
2. | 透明性の原則は,通常兵器及び関連する軍事技術の国際的な移転について適用されるべきである。これに向けて一歩として,我々は,国連の下に武器移転の普遍的な登録制度を導入するという提案を支持するとともに,その早期の採択に向けて努力するものとする。このような登録制度は,いずれかの国が合理的水準を超えた通常兵器の集積を試みた場合には,国際社会に対する警報を発することとなろう。情報は,すべての国が,定期的に,かつ,武器移転が行われた後において提供しなければならない。我々は,更に,通常兵器の保有の全体について一層の公開性を求める。我々は,このようなデータの提供及び説明要求手続の設定こそ,信頼と安全を醸成する重要な措置であると信じる。 | ||
3. | 協議の原則は,主要武器輸出国の間において通常兵器の移転に係るガイドラインの作成のためにとるべき共通のアプローチにつき合意を図る目的で討議を行うという,最近とられたイニシアティブを早急に実施に移すことにより,直ちに強化されるべきである。我々は,本件に関する討議が最近開始されたことを歓迎する。これらの討議は,7月8日及び9日にパリで行われた国際連合安全保障理事会の常任理事国による有望な対話,及び欧州共同体の枠組みの中でその加盟国間で進行中の討議を含む。我々各自は,これらの場及び他の適当な場において,このような重要な過程における建設的な役割を引き続き果たしていく。 | ||
4. | 行動の原則は,我々すべてに対し,兵器の均衡を失した蓄積を防止するための措置をとるよう求めるものである。そのためには,すべての国が,不安定化要因となる,又は緊張を更に激化させるおそれのある武器移転を慎むべきである。先端技術兵器の移転,並びに特に懸念が持たれる国及び地域に対する売却については,特別の制限が加えられるべきである。同様の移転制限が適用され得る機微な物品及び先端兵器生産能力を定義するため,特別の努力を行うべきである。すべての国は,これらの基準の厳格な実施を確保するための措置を講じるべきである。我々は,本件につき引き続き綿密な注意を払っていく意図を有する。 | ||
5. | 行動の原則は,我々すべてに対し,兵器の均衡を失した蓄積を防止するための措置をとるよう求めるものである。そのためには,すべての国が,不安定化要因となる,又は緊張を更に激化させるおそれのある武器移転を慎むべきである。先端技術兵器の移転,並びに特に懸念が持たれる国及び地域に対する売却については,特別の制限が加えられるべきである。同様の移転制限が適用され得る機微な物品及び先端兵器生産能力を定義するため,特別の努力を行うべきである。すべての国は,これらの基準の厳格な実施を確保するための措置を講じるべきである。我々は,本件につき引き続き綿密な注意を払っていく意図を有する。 | ||
6. | イラクによる侵略及びこれに続く湾岸戦争は,国際社会にとって武力紛争のコストが如何に大きいものであるかを実証した。我々は,軍事支出水準の低減が,健全な経済政策と適正な施政にとっての重要な一要素であると信じる。すべての国が,乏しい資源をめぐって競合し合う多数の要請と格闘している状況の下では,あらゆる種類の武器に係る過度の軍備支出は,経済開発に取り組むという優先的なニーズに充てるべき資源の減少をもたらす。また,過度の軍備支出は,多額の債務を,その返済手段を作り出すことなく累積させるおそれもある。我々は,国際連合開発計画(UNDP)が最近刊行した報告書につき,また,最近若干の援助国において,被援助国の軍事支出が均衡を失している場合には援助計画の策定に当たりこの状況を考慮する旨が決定されたことについて,好意をもって留意するとともに,他のすべての援助国も同様の措置をとるよう奨励する。我々は,国際通貨基金の専務理事及び世界銀行総裁が,最近,開発途上国による過度の軍事支出に対して,非生産的な公共支出の削減との関連で注意を払っていることを歓迎する。 | ||
不拡散 | |||
7. | 我々は,核兵器,生物兵器及び化学兵器並びにミサイル運搬システムの拡散に対して深刻な懸念を有する。我々は,不拡散体制の強化と拡大によって,この脅威と闘っていく決意である。 | ||
8. | イラクは,その核兵器,生物兵器及び化学兵器による戦争能力並びにミサイル能力を,国際的な監視の下に,破壊し,撤去し又は無害化することにつき,また,将来にわたりそれら兵器システムに係るイラクの能力が開発されないことを確保するため検証及び長期的監視を行うことにつき規定した安全保障理事会決議687を完全に遵守しなければならない。我々は,国際連合の関連諸決議に従い,国際連合特別委員会及び国際原子力機関(IAEA)がその任務を十分に実施することができるよう,あらゆる支援を提供する。 | ||
9. | 原子力分野において,我々は, | ||
― | 核兵器の不拡散と原子力エネルギーの平和的利用の発展との間の権衡に立脚した衡平かつ安定的な不拡散体制を支持する旨のできる限り広範な合意を獲得するため,努力を行うという我々の意思を再確認し, | ||
― | 核兵器不拡散条約(NPT)の重要性を再確認するとともに,他のすべての非署名国に対し,同条約に署名するよう要請し, | ||
― | すべでの非核兵器国に対し,自国のすべての原子力活動を,国際的な不拡散体制の基盤を成すIAEA保障措置に係らしめるよう要請し, | ||
― | すべでの原子力供給国に対し,原子力供給国ガイドラインを採用し実施するよう求める。 | ||
我々は,ブラジル及びアルゼンティンが,IAEAとフルスコープ保障措置協定を締結すること,及びトラテロルコ条約を自国につき発効させるための措置をとることを決定したことを歓迎するとともに,南アフリカのNPT加入を歓迎する。 | |||
10. | 我々各自は,更に,次のことを達成するために努力する。 | ||
― | 1995年以降もNPT体制を維持し,かつ,強化するという我々共通の目標 | ||
― | IAEA保障措置制度の強化と改善 | ||
― | 汎用品に係る適切な輸出規制を確保するためにとられる原子力供給国グループの新規措置 | ||
11. | 我々は,9月に開催される生物兵器禁止条約再検討会議が成功し,同条約の信頼醸成措置の強化と拡大を図るとともに実効的な検証措置を講ずる余地について探求することによって,同条約の現行規定の実施の強化が図られるものと期待する。我々各自は,他の諸国による同条約への加入を奨励し,また,すべての締約国に対し同条約上の義務を厳格に履行するよう求める。我々各自は,同条約の実施の強化につながる再検討会議の成功は,生物兵器の拡散を防止する上で重要な貢献になるものと信じる。 | ||
12. | 化学兵器を禁止する強力かつ包括的で実効的検証の可能な条約の作成交渉が成功し,すべての国が署名を行うことこそ,化学兵器の拡散を防止する最善の途である。我々は,米国による最近の発表を歓迎し,それによってこのような条約の速やかな締結が可能になるものと信じる。我々は,交渉をできる限り速やかに成功裡に終了させることを希望する。我々は,同条約の原締約国となる旨の我々の意図を再確認する。我々は,できる限り早期に同条約が発効し得るよう,他の諸国に対し,最も早い機会に同条約の締約国となるよう求める。 | ||
13. | 我々は,生物兵器及び化学兵器の拡散につながるおそれのある輸出についても規制を強化しなければならない。我々は,オーストラリア・グループ参加国により,また,その他の諸国によって,化学兵器の前駆物質及び関連設備の輸出規制に係る措置がとられたことを歓迎する。我々は,すべての輸出国の慣行を一層収斂させることを追求する。我々は,すべての国に対し,このような努力を支持するよう求める。 | ||
14. | 我々の目標は,化学兵器及び生物兵器の全面的かつ実効的な禁止である。これらの兵器の使用は,人道にもとる暴虐行為である。我々各自は,いずれかの国がこれらの兵器を使用した場合には,その国に対し国際連合安全保障理事会及びその他の場において厳しい措置を課すことにつき即座に検討する旨同意する。 | ||
15. | ミサイル運搬システムの拡散は,世界の多くの地域における国際の安全にとって新たな不安定要因をもたらした。ミサイル関連技術輸出規制(MTCR)の創設者として我々は,過去二年間に,他の多くの諸国の参加によってMTCRが拡大したことを歓迎する。我々は,1991年3月のMTCR東京会合において発出された,すべての国に対してMTCRガイドラインの採用を呼び掛ける共同アピールを支持する。同ガイドラインは,平和的及び科学的目的の宇宙利用における協力を禁止しようとするものではない。 | ||
16. | 我々は,拡散及び通常兵器移転のもたらす危険を減少させるため,重要な貢献を行うことができる。このような問題に関する我々の努力及び協議は,他の供給国との間におけるものを含め,全世界にわたる抑制に係る新たな環境を醸成するよう,すべての適当な場において継続する。受領国を含む他の諸国の支持があってこそ,また,我々人類すべての者の安全を危うくしかねないこれらの脅威を除去するための新たな努力において国際社会が結束してこそ,我々は成功することができるのである。 |
(ハ) 議長声明
(91年7月16日) | ||
1. | 我々は,ジョン・メージャー議長の下,今次サミット会合の第一日を成功裡に終えた。我々は,二つの宣言を発出した。 | |
2. | 政治宣言は,国際秩序及び多数国間の取組みを強化する旨の我々共通のコミットメントという主題を強調するものである。我々は,国際連合を,例えば緊急災害時の救済活動の分野において,一層効率的かつ実効的なものにするよう,幾つかの考えを打ち出した。我々は,湾岸戦争を受けて,特に中東問題を取り扱うものである。(この関連で,我々は,アサド・シリア大統領のブッシュ大統領に対する最近の回答を歓迎するとともに,これによって,直接交渉につながる会議の開催へと進む途が開かれることを希望する。我々は,同地域を再び訪問するジム・ベーカーが,どこまでも成功を収めるよう祈念する。)我々は,また,中欧及び東欧諸国における民主主義の再生に言及するとともに,ユーゴースラヴィアにおける憲法体制に係る現下の混乱に言及する。我々は,変貌を遂げたソ連が確たる意志をもって国際社会に回帰するであろうという見通しを掲げているが,この問題につき,我々は,明日ゴルバチョフ大統領の見解を聴取する。我々は,南アフリカにおける改革の持続と成功のためには,アパルトヘイト撤廃後の同国にとって経済成長の回復が政治的に必要であることを強調する。我々は,人質問題につき前進をもたらし,また,テロリズムに対する闘いを粘り強く続けていく必要性を強調する。 | |
3. | 第二の宣言は,通常兵器の移転並びに核兵器,生物兵器及び化学兵器の拡散を取り扱っている。この宣言は,いずれかのグループや組織の排他的な役割を主張することなく,これらの重要な問題の様々な側面を結び付け,進むべき一つの道を示すものである。湾岸戦争により,我々すべてが我々の責任に言及すべき緊急性を切実に感ずるようになった。通常兵器については,我々は,国際社会が透明性,協議及び行動の三原則を実施することを提案する。我々7ヵ国は,国際連合の下での武器登録制度に関する我々の提案を強力に支持する。 | |
4. | 我々は,他の外交問題についても討議した。 | |
5. | 我々は,国際協力の新しい精神が,アジアにおいても欧州におけると同様に十分に表れることを希望する。北方領土問題の解決を含む日ソ関係の完全な正常化は,このことに大きく寄与するであろう。我々は,ASEAN拡大外相会議,アジア・太平洋経済協力(APEC)などのこの地域における既存の多数国間の枠組みが,対話と協力を通じて安定を確保する上で重要な役割を果たしていることを認識する。 | |
6. | 我々は,中国が,イラクによる侵略に対抗するに当たり,あるいは他の地域問題について,国際的な連合に協力してきたことを歓迎する。我々は,同国における人権をめぐる状況につき依然として真剣な懸念を有するが,同国において経済・政治改革の一層の進展が見られることを希望する。過去一年間に,中国の人々との接触が再び行われてきており,この傾向は継続されるべきである。米国が中国に対する最恵国待遇を無条件に延長することは,これらの目標の達成に資することになろう。 | |
7. | 我々は,南北朝鮮が国際連合に加盟すること及び両国間のハイレベルの対話が間もなく再開されることを期待する。北朝鮮が引き続き原子力保障措置協定の署名と履行を怠っていることは,依然として重大な懸念を呼ぶ問題である。 | |
8. | 我々は,カンボディアにおける,平和,独立,民主主義及び完全な人権尊重を可能とする包括的解決を歓迎するであろう。アフガニスタンについても,我々は,同様の結果を期待する。我々は,また,ビルマ(ミャンマー)において完全な民主主義への回帰が見られることを希望する。我々は,モンゴルが政治・経済改革に向けて前進を続けていることを歓迎する。これは,一層の支援を行うに値するものである。 | |
9. | 南アフリカについては,既に,政治宣言との関連において言及したところである。アフリカの他の地域については,我々は,幾つかの国において飢謹のおそれがあることについて,当然のことながら,大きな懸念を抱いており,明日の経済宣言には,このことが反映されることとなろう。我々は,民主主義,法の支配及び完全な人権尊重に向けた動きを支持する。アンゴラにおける和平合意を歓迎する。我々は,エテイオピアにおける和平への努力を奨励する。モザンビーク及びソマリアについても同様である。 | |
10. | 中南米における民主主義の強化とともに,健全な経済政策に向けた一層の前進を歓迎する。我々は,エル・サルヴァドル及びグァテマラにおける平和的解決に向けた交渉が成功することを希望する。我々は,また,キューバが,政治上及び経済上の支配的な潮流から著しく外れたままでいることをやめるよう希望する。 | |
11. | サイプラスについては,我々は,国際連合事務総長が合意の枠組みを策定しようとして継続している努力を支持する。当事者が,現在の機会をとらえて現実的な提案を提示するならば,国際連合安全保障理事会決議649が想定する,サイプラスの二つの社会・二つの地区による永続的解決に向けた前進の真の希望が生まれ得るであろう。 | |
12. | 以上述べたところから,我々が広い範囲にわたって討議を行ったこと及び我々の間に広範な合意があることが明らかであろう。そして,政治宣言に述べられているとおり,我々は,これらの問題のうち,少なくとも若干のものについては,向こう数ヵ月間のうちに我々すべてによる新たな努力の手応えが得られるものと考え,挑戦の志と希望とを,より多くの諸国と分かち合うものである。 |
(ニ)経済宣言―世界的パートナーシップの構築
(91年7月17日) | |||
1. | 我々主要先進民主主義7ヶ国の元首及び首相並びに欧州共同体の代表は,第17回年次サミットのため,ロンドンで会合した。 | ||
2. | 我々がヒューストンで祝福した自由と民主主義の広まりは,過去1年間に歩調を早めた。国際社会は,力を合わせて,湾岸における世界平和に対する重大な脅威を克服した。しかし,我々は,新たな挑戦と新たな機会に直面している。 | ||
3. | 我々は,共通の価値観に基づく世界的パートナーシップの構築と国際秩序の強化を追求する。我々の目的は,民主主義,人権,法の支配及び健全な経済運営を支えることであり,これらは相俟って繁栄への鍵となる。この目的を達成するため,我々は,確実で適応性があり,責任が広く公平に分担される真の多角的体制を拡充する。我々の目的の中核には,国連システムをより強力かつ効果的なものとし,兵器の拡散及び移転に対し一層の注意を向けることの必要性がある。 | ||
経済政策 | |||
4. | 過去1年間,我々の経済のいくつかは順調な成長を維持し、他方ほとんどの経済は減速し,景気後退に入ったものもある。しかし,世界的な景気後退は回避された。湾岸危機により生じた不確実性は,過去のものとなった。我々は,今や,経済回復の兆しが強まりつつあるという事実を歓迎する。貿易及び経常収支の最大の不均衡の削減にも進展が見られた。 | ||
5. | 我々の共通の目的は,経済の持続的回復と物価の安定である。この目的のため,我々は,経済政策協調過程を通じるものを含む,従来のサミットで支持された中期戦略を維持する決意である。この戦略は,インフレ期待を抑え,持続可能な成長と新たな雇用のための条件を創出してきた。 | ||
6. | 従って,我々は,各国の異なる状況を反映しつつ実質金利の低下の基礎を提供するような財政・金融政策を実施することにコミットする。この関連で,財政赤字削減を引き続き進展させることが不可欠である。このことは,民間貯蓄に対する障害を削減するためになされている努力と相俟って,投資需要を満たすために必要な世界的貯蓄の増大に役立つ。我々は,また,為替市場における緊密な協力と国際通貨制度の機能改善のための作業とを歓迎する。 | ||
7. | 我々は,また,経済協力開発機構(OECD)その他の機関の助力を得て,経済効率を改善しもって成長の潜在力を向上させるための改革を追求する。このような改革には以下のことが含まれる。 | ||
(a) | 規制の改革を含む我々の経済における競争の強化。これは,消費者の選択肢を広げ,物価を下げ,事業への負担を軽減し得る。 | ||
(b) | 歪曲的効果のある補助金は,資源の非効率的な配分をもたらすとともに公共支出を増大させるので,そのような補助金の透明性強化,撤廃又は規律強化。 | ||
(c) | 雇用制度の一層の柔軟性に貢献する政策,並びに就業中及び失業中の者の技能を高め機会を改善するための教育及び訓練の改善。 | ||
(d) | 例えば,より高い管理基準を通じる等の公共部門の一層の効率化。民営化と外部発注の可能性を含む。 | ||
(e) | 科学及び技術における進歩の広範かつ急速な普及。 | ||
(f) | 社会資本への民間及び公共部門による必要不可欠な投資。 | ||
8. | 我々は,環境を保護する上で費用対効果の高い,税,賦課金,取引可能な排出権等の経済手段を国内的及び国際的に開発する作業を奨励する。 | ||
国際貿易 | |||
9. | ウルグァイ・ラウンドの成功裡の終結は,他のいかなる問題にも増して世界経済の将来の見通しに広範な意味合いを有する。それは,信任を強化し,保護主義を押し返し,及び貿易の流れを増大させることによって,インフレなき成長を促進する。それは,開発途上国及び中・東欧諸国の多角的貿易体制への統合の促進にとり不可欠である。我々がラウンドを終結させることができなかった場合は,これらの全ての利益が失われる。 | ||
10. | 従って,我々は,先進国と開発途上国の双方が可能な限り広範な参加する,野心的,包括的かつ均衡のとれたラウンドの成果のパッケージにコミットする。全ての参加国は,1991年末より前にラウンドを完了させることを目指すべきである。各首脳は,もし相違点が最高レベルでしか解決できない場合には相互に介入する用意をしつつ,引き続きこの過程に個人的に関与する。 | ||
11. | 我々の目的を達成するためには,全ての分野で本年の残りの期間ジュネーブにおける交渉が持続的に進展する必要がある。主たる必要条件は,以下の分野が全体として早急に前進することである。 | ||
(a) | 市場アクセス。関税の相当程度の削減及び非関税障壁に対する並行する措置の一部として,いくつかの産品のタリフ・ピークを低減するとともに他のいくつかについてはゼロ関税に移行することが特に必要である。 | ||
(b) | 農業。非貿易的関心事項を考慮しつつ,内国支持,市場アクセス及び輸出競争の各分野で支持と保護の実質的かつ漸進的な削減が合意されるよう,これらの分野において具体的かつ拘束力のあるコミットメントを規定する枠組みが決定されなければならない。 | ||
(c) | サービス,サービス貿易に関する一般的合意についての協定が,サービス貿易に対する既存の制限を削減ないし除去するとともに新たな制限を課さないとの実質的かつ拘束力のある初期コミットメントによって,強化されるべきである。 | ||
(d) | 知的所有権。全ての所有権を守るための明確で実行可能な規則と義務が,投資と技術の普及とを促進するために必要である。 | ||
12. | これらの問題における進展は,繊維,熱帯産品,セーフガード及び紛争処理等の既に合意間近の分野における最終合意を促進する。紛争処理メカニズムの改善に合意することは,多角的ルールの下でのみ行動するとのコミットメントに繋がる。ガット規則の策定を含む,交渉のこれらの要素及び他の要素は,全体として,我々が追求している実質的かつ広範なパッケージとなる。 | ||
13. | 我々は,地域統合が多角的貿易体制と両立することを確保するよう努める。 | ||
14. | 我々がヒューストンで留意したように,ウルグァイ・ラウンドの結果が成功を収めることによって,多角的貿易体制の制度面での強化も必要となろう。国際貿易機関の考え方は,この文脈で検討されるべきである。 | ||
15. | 開放的な市場は,環境保護のために必要な資源の創出に役立つ。従って,我々は,貿易政策と環境政策が相互に支持し合うことを確保するOECDの先駆的作業を賞賛する。我々は,貿易措置がいかにして環境上の目的に適切に利用され得るかを関税と貿易に関する一般協定(GATT)が明らかにすることを期待する。 | ||
16. | 我々は,OECD加盟国が近い将来,いずれにせよ本年末までに,補助された輸出信用とタイド援助信用の利用の結果生じる歪曲の削減に関する合意を妨げている残された障害を克服しなければならないと確信する。我々は,輸出信用プレミアムの体系及び構成を検討するとのOECDのイニシアティブを歓迎し,報告が早期に行われることを待望する。 | ||
エネルギー | |||
17. | 湾岸危機で示されたように,石油の供給と価格は政治的衝撃に対し引き続き脆弱であり,このことは世界経済を攪乱する。しかし,これらの衝撃は,市場の効果的働き,いくつかの石油輸出国による歓迎されるべき供給増大,及び国際エネルギー機関(IEA)により調整された行動,特に備蓄の使用によって,封じられた。我々は,IEAの緊急時即応体制及びその支援措置の強化にコミットしている。危機が生産者と消費者の間の関係改善をもたらしたので,意志疎通,透明性及び市場原理の効率的働きを促進するために,全ての市場参加者間の接触を一層進展させ得よう。 | ||
18. | 我々は,エネルギーの世界的な安定供給を確保し,エネルギー貿易と投資に対する障壁を除去し,環境上及び安全上の高度の基準を奨励し,並びにこれら全ての分野における研究・開発に関する国際協力を推進するよう努める。我々は,また,エネルギー効率を向上させ,環境上の費用を含めた費用が十分反映されるように全ての源からのエネルギーの価格付けを行うよう努力する。 | ||
19. | この関連で,原子力発電は,エネルギー源の多様化及び温室効果ガスの排出削減に貢献する。経済的なエネルギー源として原子力を開発する際には,廃棄物処理を含め利用可能な最高の安全基準を達成し維持すること,及びその目的のために全世界で協力を推進することが不可欠である。中・東欧及びソ連における安全性の状況は,特別の関心に値する。これは緊急の問題であり,我々は対応策を調整するための有効な手段を策定するよう国際社会に要請する。 | ||
20. | 再生可能なエネルギー源の商業的開発と一般的エネルギー体系への統合も,これらのエネルギー源がもたらす環境保護上及びエネルギー安全保障上の利点に鑑み,奨励されるべきである。 | ||
21. | 我々全ては,署名国の平等な権利と義務を基礎とした欧州エネルギー憲章の確立のための欧州共同体の構想に全面的に参画する意図を有する。その目的は,特に商業的エネルギー投資にとり開放的で差別的でない制度を創設することによって,自由で歪みのないエネルギー貿易を促進し,供給の安全保障を高め,環境を保護し,並びに中・東欧諸国及びソ連における経済改革を支援することである。 | ||
中・東欧 | |||
22. | 我々は,多大の障害にも拘らず民主主義を築き市場経済に移行している中・東欧諸国の勇気と決意に敬意を表する。我々は,同地域一帯への政治的及び経済的改革の広まりを歓迎する。これらの変化は,大きな歴史的重要性を有する。ブルガリア及びルーマニアは,現在,ポーランド,ハンガリー及びチェッコ・スロヴァキアの先駆的歩みの後を追っている。アルバニアは,長期にわたる孤立から抜け出しつつある。 | ||
23. | 我々は,改革の成功が当事国の継続的努力に主として依存していることを認識しつつ,これら諸国の改革努力を支援し,これら諸国とのより緊密な関係を形作り,また,国際経済体制へのこれら諸国の統合を奨励するとの我々の確固たるコミットメントを新たにする。地域的イニシアティブは,我々の協力する能力を強化する。 | ||
24. | アルバニアを除く全ての中・東欧諸国は,今や,国際通貨基金(IMF)と世界銀行の加盟国である。我々は,IMFに支援されたマクロ経済安定プログラムを実施中の国々によりとられつつある措置を歓迎する。これらのプログラムが,国営企業の民営化と再編成,一層の競争,所有権の強化等の構造改革により補完されることが極めて重要である。我々は,民主主義にコミットした中・東欧諸国において開放的な市場指向経済への移行を助長し民間のイニシアティブを促進する権能を有する欧州復興開発銀行(EBRD)の設立を歓迎する。 | ||
25. | 外国及び国内の双方の民間投資にとり好ましい環境は,持続的成長及び各国政府からの外部支援への依存回避にとり極めて重要である。この観点から,我々の民間部門及び政府,欧州共同体並びに国際機関からの技術支援は,市場に基礎を置く極めて重要な転換を助けることに集中すべきである。この関連で,我々は,中・東欧の経済再編成の過程に環境的配慮を統合することの重要性を強調する。 | ||
26. | 輸出市場の拡大は,中・東欧諸国にとり決定的に重要である。我々は,市場経済への輸出が既に大幅に拡大していることを歓迎し,鉄鋼,繊維,農産物等の分野を含むこれら諸国の産品とサービスに対し我々の市場へのアクセスを一層改善することとする。この関連で,我々は,欧州共同体とポーランド,ハンガリー及びチェッコ・スロヴァキアとの連合協定交渉における進捗,及び米国が発表した大統領貿易拡大構想を歓迎する。これら全ては,GATTの原則に合致しよう。我々は,東西貿易の制約要因を明らかにしその除去を促進するOECDの作業を支持する。 | ||
27. | アルシュ・サミットにより開始されEC委員会が議長を務めるG-24のプロセスは,IMFに支援されたプログラムを下支えする国際収支支援を含め,これら諸国のために310億ドルの二国間援助を動員した。このようなプログラムは,ポーランド,ハンガリー及びチェッコ・スロヴァキアに適用されている。我々は,ブルガリアとルーマニアのために既に行われた貢献を歓迎する。我々は,G-24の調整過程を強化しており,また,世界的な支援努力において公正な役割を果たすという我々の共通の意向を再確認する。 | ||
ソ連 | |||
28. | 我々は,ソ連における政治上及び経済上の転換に向けた動きを支持し,ソ連の世界経済への統合を支援する用意がある。 | ||
29. | 市場経済を発展させる改革は,変化のための誘因を創出するとともにソ連の国民が自己の豊かな天然資源と人的資源を活用できるようにする上で,不可欠である。中央と各共和国とが各々の責務を遂行する明確かつ合意された枠組みは,政治・経済改革の成功の基礎である。 | ||
30. | 我々は,改革のための政策,その実施,更にはこのプロセスを我々が助長し得る方法につき討議するため,ゴルバチョフ大統領を我々との会談に招待した。 | ||
31. | 我々は,ヒューストンで我々が行った要請を受け,IMF,世界銀行,OECD及びEBRDがEC委員会と緊密に協議して作成したソ連経済に関する報告を賞賛する。この報告は,経済改革の成功のために必要な要素の多くを提示しており,それらには財政・金融上の規律や市場経済の枠組みを創ることが含まれる。 | ||
32. | 我々は,世界全体におけるソ連の外交政策の「新思考」を含め,改革が実施されている全体的な政治的文脈に敏感である。我々は,資源を軍需から民需へ振り向けることの重要性についても敏感である。 | ||
33. | 我々は,ソ連経済の悪化を懸念している。これは,ソ連内部においてのみならず,中・東欧諸国にとっても極めて困難な状況を惹起する。 | ||
中東 | |||
34. | 多くの国が湾岸危機の結果経済的に被害を受けた。我々は,湾岸危機資金調整グループが湾岸危機から最も直接的な経済的影響を被った国のために約160億ドルの援助の動員に成功したことを歓迎し,全ての援助国に対し迅速に支払いを完了するよう求める。地中海及び中東のために,サミット参加国,更にはIMF及び世界銀行により多大の援助が供与されている。 | ||
35. | 我々は,無差別及び開放貿易の原則を基礎とした,この地域における経済協力の強化がその被害を回復させ政治的安定性を強める上で役立ち得ると信じる。我々は,この地域の他の国々に資金援助を与えるとの主要石油輸出国の計画,及び湾岸開発基金を創設するとのこれらの国による決定を歓迎する。我々は,国際開発金融機関とアラブその他の援助国との間のより緊密な繋がりを支持する。このことは,必要な経済改革を促進し,資金フローの効率的な利用を助長し,民間部門の投資を育成し,貿易の自由化を促し,また,我々の技術面での技能や専門知識を活用することとなる共同プロジェクト,例えば水管理に関するものを促進すると我々は信じる。 | ||
開発途上国及び債務 | |||
36. | 開発途上国は,ウルグァイ・ラウンドを含め国際経済体制において益々建設的な役割を果たしつつある。多くの国は,政策の大胆な改革を導入するとともに,以下の原則を採用しつつある。 | ||
(a) | 人権及び法の尊重。このことは,各個人が開発に貢献することを促進する。 | ||
(b) | 民主的多元主義及び国民に責任を負う開かれた行政制度。 | ||
(c) | 開発を持続し人々を貧困から脱却させるための健全かつ市場に基礎を置く経済政策。 | ||
我々は,これらの国を賞賛し,他の国に対しその例に倣うよう求める。良い統治は,国内の開発を促進するのみならず,外部からの融資及び全ての資金源からの投資を引きつけることに役立つ。 | |||
37. | 我々が開発途上国を助けるとの確固たる約束を行うことは,我々の経済の息の長い,インフレなき景気回復及び市場の開放と相俟って,開発途上にある世界の繁栄を高めるための我々が有する最も有効な方法である。 | ||
38. | これらの多くの国々,とりわけ最貧国は,その開発努力を支えるために我々の資金的及び技術的援助を必要としている。開発の優先課題に対する我々の援助の量及び質の双方を拡充するために,追加的な援助努力が必要とされる。これらには,貧困の軽減,保健,教育及び訓練の向上,並びに援助の環境面での質の向上が含まれる。我々は,持続的進歩のための戦略を考案するに際し,人口問題に一層の注意が向けられつつあることを支持する。 | ||
39. | アフリカは,我々の特別の注意に値する。健全な経済政策,民主主義,及び責任の確立に向けてのアフリカの各政府の前進は,成長の見通しを明るくしつつある。このことは,民間部門の発展を促進し,地域統合を奨励し,譲許的資金フローを供給し,及び債務負担を軽減することに焦点を当てた我々の継続的支援により助長されている。世界銀行により調整されアフリカの20を超える国々の経済改革に対する支援を提供しているアフリカ特別プログラムは,その価値が証明されつつある。我々は,深刻な飢餓に直面しているアフリカの地域に対し人道的援助を供与し,この援助をより効果的なものにするために国連機構の改革を勧奨する。我々は,また,自然のものか内戦により引き起こされたかを問わず,飢餓その他の緊急事態の根底にある原因を関係国が除去する手助けを行う。 | ||
40. | アジア・太平洋地域においては,東南アジア諸国連合(ASEAN)及びアジア・太平洋経済協力(APEC)の加盟国を含む多くの経済が引き続き力強い成長を達成している。我々は,新たな国際的責任を担いつつあるこの地域のこれら経済による努力を歓迎する。他のアジア諸国は,改革努力を強化しつつあるが,引き続き外部からの援助を必要としている。 | ||
41. | 中南米については,我々は,真正な経済改革の実施における進捗及び地域統合の進展に意を強くしている。我々は,他の努力と相俟って直接投資,より自由な貿易及び逃避資本還流に適した環境醸成の手助けとなっている中南米支援構想の下で,多国間投資基金に関する検討が継続していることを歓迎する。 | ||
42. | 我々は,新債務戦略の下で達成されている進捗に満足の意をもって留意する。いくつかの国は,民間銀行の債務削減又はそれと同じ効果を有する措置と組み合わされた強力な構造調整から既に利益を得ている。我々は,銀行に対し重い債務を負っている他の国々に対して,類似のパッケージにつき交渉するよう勧奨する。 | ||
43. | 我々は,以下のことに留意する。 | ||
(a) | ポーランド及びエジプトに対する債務削減又はそれと同じ効果を有する措置に関しパリ・クラブで達成された合意。これは,例外的な事例として取り扱われるべきである。 | ||
(b) | いくつかの低中所得国の特別な状況に関するパリ・クラブによるケース・バイ・ケースでの継続的な検討。 | ||
44. | 最貧重債務国は,極めて特別の条件を必要とする。我々は,トロント方式で既に与えられている債務軽減をかなり上回る,これらの国に対するケース・バイ・ケースでの追加的な債務軽減措置の必要性につき同意する。従って,我々は,これらの措置を適切かつ迅速に実施し得る方法につき引き続き検討するようパリ・クラブに対し要請する。 | ||
45. | 我々は,開発途上国に対する適切な新規資金フローの必要性を認識する。我々は,維持不可能な水準の債務を回避するための適切な方法は、直接投資と逃避資本の還流を引きつけるための強化された政策を開発途上国が採用することであると信じる。 | ||
46. | 我々は,IMFの役割が鍵であることに留意する。IMFの資金は,第9次増資及びそれに関連付けられた第3次協定改正の早期実施により拡充されるべきである。 | ||
環境 | |||
47. | 国際社会は,今後10年間に環境面での重大な挑戦に直面する。環境の管理は,引き続き我々の優先課題である。我々の経済政策は,この惑星の資源の利用が維持可能なものであり,現在及び将来の両世代の利益を保護するものであることを確保すべきである。拡大する市場経済は環境保護の手段を最も良く引き出し得る一方,民主的な制度は適切な責任体制を確保する。 | ||
48. | 環境に対する考慮は,その経済的費用を反映するような方法で政府の政策全般の中に統合されるべきである。我々は,OECDが行っているこの分野における貴重な作業を支持する。この作業は,環境面での加盟国の実績についての系統的審査及び政策決定において用いられる環境指標の開発を含む。 | ||
49. | 国際的には,我々は,環境問題に対処するための協力的取組みを国際的に開発しなければならない。先進国は,自ら範を示し,もって開発途上国及び中・東欧諸国がその役割を果たすよう勧奨すべきである。地域的な問題についても協力が必要である。この関連で,我々は,南極大陸の環境保全の強化を目的とした南極条約環境議定書につき意見の一致を見たことを歓迎する。我々は,サハラ・サヘル観測所及びブダペスト環境センターの順調な進捗に留意する。 | ||
50. | 1992年6月の国連環境開発会議(UNCED)は,画期的な出来事である。環境に関する数多くの国際的な交渉は,ここで最高潮を迎える。我々は,会議の成功のため努力し,必要な政治的弾みをその準備に与えることを約束する。 | ||
51. | 我々は,UNCEDの開催までに以下のことを実現するよう目指す。 | ||
(a) | 適切なコミットメントを含み,温室効果ガスの全ての排出源と吸収源を対象とする気候変動に関する効果的な枠組み条約。我々は,条約を補強する実施議定書に関する作業を促進するよう努める。全ての参加国は,温暖化への適応を容易にする措置を含め温室効果ガスの純排出量を制限する具体的な戦略を策定し実施することを約束すべきである。先進国による顕著な活動は,交渉に不可欠な開発途上国及び東欧諸国の参加を促進する。 | ||
(b) | あらゆる種類の森林の管理,保全及び持続可能な開発のための原則についての,枠組み条約に繋がる合意。これは,熱帯林が生育する開発途上国にとり受入れ可能であるとともに,我々がヒューストン・サミットで定めた森林に関する国際的取決め又は合意の目的に合致する形のものであるべきである。 | ||
52. | 我々は,UNCEDとの関連で以下のことを促進するよう努める。 | ||
(a) | 開発途上国による環境問題への取組みを助けるための資金の動員。我々は,既存のメカニズム,特に地球環境ファシリティー(GEF)をこの目的で利用することを支持する。GEFは,開発途上国が新たな環境条約の下でその義務を果たすことを手助けする包括的な資金供給メカニズムになり得よう。 | ||
(b) | 商業的メカニズムを活用した,環境面で有益な技術の開発途上国への一層の普及の促進。 | ||
(c) | 地域的な海域を含む海洋に対する包括的取組み。海洋の環境的及び経済的重要性は,海洋が保護され持続的に管理されなければならないことを意味する。 | ||
(d) | 特にシエナ・フォーラムの成果を活用した,環境に関する国際法策定の進展。 | ||
(e) | 今後10年間における国連環境計画(UNEP)を含む環境に関係する国際機関の強化。 | ||
53. | 我々は,可能であれば来年締結される,受入れ可能な生物学的多様性に関する枠組み条約につき,UNEPの支援の下で交渉することを支持する。この交渉は,生物工学の前向きな発達を妨げることなく,特に,種の豊富な地域における生態系の保護に焦点を当てるべきである。 | ||
54. | 我々は,引き続き熱帯林の破壊に懸念を有している。我々は,ヒューストン・サミットを受けて示された協力の申し出に応えてブラジル政府が世界銀行及びEC委員会との協議のうえ準備した,ブラジルの熱帯林保全のための試験プログラムの策定に進捗がみられたことを歓迎する。我々は,EC委員会と協力して,経済的,技術的,社会的問題に十分な注意を払いつつ,かつ,適切な政策の枠組みの中で,世界銀行の支援の下での緊急な作業を一層進めることを要請する。我々は,民間部門,非政府機関,国際開発金融機関及び地球環境ファシリティーを含むあらゆる可能な資金源を活用して,試験的プログラムの予備的段階の実施を資金的に支援する。我々は,プログラムの詳細が固まった段階で,実地において進展が図られるよう,これらの資金を二国間援助で補完することを検討する。我々は,このプロジェクトにおける順調な進捗がUNCEDにおける森林の取扱いに有益な影響をもたらすことになると信じる。我々は,また,森林に重点を置いた債務・環境交換の普及を歓迎する。 | ||
55. | 湾岸における油井の炎上と海洋汚染は、環境上の大規模災害を防止しこれに対処する国際的な能力を高めることが必要であることを示した。国際海事機関(IMO)における合意を含むこの目的のための全ての国際的,地域的合意が十分に実施に移されるべきである。我々は,環境緊急援助のための試験的センターを設立するとのUNEPの決定を歓迎する。我々は,バングラデシュにおける最近の暴風雨の被害に鑑み,アルシュ・サミットで我々が要請した世界銀行の支援の下での洪水被害軽減のための作業を奨励する。 | ||
56. | 乱獲その他の有害な慣行により脅威にさらされている海洋生物資源は,国際法に従った措置の実施により保護されるべきである。我々は,効果的な監視と実施措置を通じた,海洋汚染の規制及び地域漁業機関により樹立された制度の遵守を求める。 | ||
57. | 我々は,環境科学・技術面の協力において,特に以下のことにつき一層の努力を要請する。 | ||
(a) | 宇宙衛星による監視及び海洋観測を含む,地球の気候に関する科学的調査。開発途上国を含む全ての国がこの調査努力に参画すべきである。我々は,地球観測データの利用者向け情報サービスにおけるヒューストン・サミット以降の進展を歓迎する。 | ||
(b) | 革新的技術計画の提案を含む,エネルギー・環境技術の開発と普及。 | ||
麻薬 | |||
58. | 我々は,ヒューストン会合以降のこの分野における進捗,とりわけ1988年の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約の発効に満足の意をもって留意する。我々は,国連麻薬統制計画(UNDCP)の発足を歓迎する。 | ||
59. | 我々は,総合的な麻薬撲滅行動計画の一環として麻薬に対する需要削減のための努力を強化する。我々は,コカインの惨禍と闘う努力を継続し,欧州及びアジアにおいて依然として主要な中毒性麻薬であるヘロインに対して一層の注意を向けることによってこれに見合う努力を行う。アジアにおけるヘロイン生産を削減しその欧州への流入を阻止するために,協力を強化する必要がある。中・東欧における政治的変化と国境の開放は,麻薬濫用の危険を増大させ不正取引を助長する一方,麻薬と闘うための欧州全体の協調的行動の余地を拡大した。 | ||
60. | 我々は,麻薬の生産と不正取引の問題に注意と資源を集中するための,欧州,北米及びアジアの政府からなる「ダブリン・グループ」の努力を賞賛する。 | ||
61. | 我々は,従来のサミットで創設され,益々多くの国に支持された作業部会の業績を賞賛する。 | ||
(a) | 我々は,全ての国に対し,資金洗浄に対する国際的な闘いに参加し,金融活動作業部会(FATF)の活動に協力するよう求める。我々は,資金洗浄に関するFATF勧告の各参加国による実施の進捗振りを相互に評価する過程についての合意を強く支持する。我々は,OECDによる事務局の提供を得てFATFが継続的に活動するべきであるとのFATF勧告を支持する。 | ||
(b) | 我々は,化学物質作業部会(CATF)の報告を歓迎するとともに,1988年の麻薬の不正取引に対する国連条約を踏まえ化学物質の流用に対抗するためにCATFが勧告した措置を支持する。我々は,ヘロインに焦点を当てたアジアでの特別会合,及びCATFの活動の制度的将来を検討する1992年3月に予定されるCATF会合の開催を待望する。 | ||
62. | 我々は,人と物の合法的な移動を妨害することなく麻薬の不法な移送を取り締まる法執行機関の能力の向上に関心を有している。我々は,関税協力理事会(CCC)に対し,この目的のために国際貿易・輸送業者の団体との協力を強化し,次回サミットまでに報告書を作成するよう懇請する。 | ||
移民 | |||
63. | 様々な政治的,社会的及び経済的要因による世界的な移民圧力に対し懸念が増大しつつあるものの,移民は,適切な条件の下では,経済的・社会的発展に貴重な貢献をしてきており,また,そうした貢献をし得る。我々は,OECDがこれらの問題に一層の注意を向けつつあることを歓迎するとともに,将来のサミットでこれらの問題を再び取り上げることを希望するかもしれない。 | ||
次回会合 | |||
64. | 我々は,1992年7月にドイツのミュンヘンで次回サミットを開催することについてのコール首相の招待を受諾した。 |
(5) | 日本国と欧州共同体及びその加盟国との関係に関するヘーグにおける共同宣言(仮訳) |
(91年7月18日) | |||
1. 前文 | |||
日本国並びに欧州共同体及びその加盟国は, | |||
― | 双方が共に自由,民主主義,法の支配及び人権を信奉するものであることに留意し, | ||
― | 双方が共に市場原理,自由貿易の促進及び繁栄しかつ健全な世界経済の発展を信奉するものであることを確認し, | ||
― | 双方の間の関係が益々緊密になりつつあることを想起するとともに,世界的な相互依存が増大しつつあり,その結果として国際協力の強化の必要性が生じていることを認識し, | ||
― | 世界平和の確保,国連憲章の原則と目的に従った公正かつ安定した国際秩序の構築及び国際社会が直面する世界的な課題への対処に向けて共同の貢献を行うために,双方の間の対話を深化させる重要性を認識し, | ||
― | 世界の安全保障,平和及び安定に対する双方の共通の関心を確認し, | ||
― | 欧州共同体が経済及び金融,外交政策並びに安全保障の分野においてその主体性を確立していく過程が加速化されていることに留意し, | ||
将来の課題に対応するため,双方の間の対話を活発化し,協力及びパートナーシップを強化することを決定した。 | |||
2. 対話及び協力の一般的原則 | |||
日本国並びに欧州共同体及びその加盟国は,双方が共通の関心を有する政治,経済,科学,文化その他の主要な国際的問題に関して,相互に通報し,協議するよう,確固たる努力を行う。双方は,適切な場合にはいつでも,立場の調整に努める。双方は,双方の間及び国際機関において,協力及び情報交換を強化する。 | |||
双方は,同様に,国際情勢及び地域的事項について,特に緊張緩和をもたらし,また,人権の尊重を確保するために共同の努力を行うとの観点から,協議する。 | |||
3. 対話及び協力の目的 | |||
双方は,可能な協力(適切な場合には共同の外交的行動をとることを含む。)の分野を共に探求することに着手する。双方は,双方の間の関係のあらゆる分野を全体としてとらえ,そのようなすべての分野において,公正かつ調和的な方法で,特に次の諸点について,協力の強化に努める。 | |||
― | 国際的な又は地域的な緊張の交渉による解決及び国連その他の国際機関の強化を促進すること。 | ||
― | 自由,民主主義,法の支配,人権及び市場経済に基づく社会制度を支持すること。 | ||
― | 核兵器,化学兵器及び生物兵器の不拡散,ミサイル技術の不拡散並びに通常兵器の国際的移転等の国際的安全保障に係る問題を含む世界の平和及び安定に影響を及ぼし得る国際的問題に関する政策協議及び可能な場合における政策調整を強化すること。 | ||
― | 世界経済及び貿易の健全な発展の実現を目的として,特に保護主義及び一方的措置への逃避を排し,また,貿易及び投資に関するGATT及びOECDの原則を実施することにより,開放的な多角的貿易制度を更に強化するための協力を追求すること。 | ||
― | 相応の機会を基礎に,相互の市場への衡平なアクセス並びに貿易及び投資の拡大を阻害する障害(構造的なものであるかどうかを問わない。)の除去を実現するための決意を追求すること。 | ||
― | 貿易,投資,産業協力,先端技術,エネルギー,雇用,社会問題及び競争規則等の分野における双方の間の多面的関係における種々の側面に関する対話及び協力を強化すること。 | ||
― | 開発途上国,特に最貧国が人権尊重を真の意味における開発にとっての主要な要素として促進しつつ持続的な開発並びに政治面及び経済面での進歩を実現するために行う努力に対して,国際機関により定められた目的を十分に考慮しつつ支援を与えること。 | ||
― | 環境,資源及びエネルギーの保存,テロリズム,国際犯罪並びに麻薬及び麻薬に関係する犯罪行為(特に犯罪による利益の洗浄)等の国境を越えた課題に対応するに当たって共同で努力すること。 | ||
― | 全人類の将来の繁栄にとって不可欠な科学的知識の促進に貢献するとの観点から科学技術分野における協力を強化し,適切な場合に共同プロジェクトを促進すること。 | ||
― | 知識を増大し双方の国民の間の理解を増進するために,学術,文化及び青少年交流の計画を拡充すること。 | ||
― | 自国の経済を安定させ,世界経済への完全な編入を促進するための政治・経済改革に取り組む中欧・東欧諸国に対して,他の諸国又は国際機関との協力を通じた支援を与えること。 | ||
― | アジア・太平洋地域諸国との関係において,同地域の平和,安定及び繁栄を促進するために協力すること。 | ||
4. 対話及び協議の枠組み | |||
双方は,本宣言に実質を付与するため継続的対話に取り組むことを決意する。このために,双方は,既存の定期的協議メカニズムの十分な活用に加え,地球的規模の及び双方の間の諸問題に関する協議のメカニズム及び実質的協力を強化することを決定した。 | |||
― | 特に,双方は,日本国又は欧州において,日本国総理大臣と欧州理事会議長及びEC委員会委員長との間の年次協議を開催することを決定した。 | ||
― | 日本国政府とEC委員会との間の閣僚級の年次会合が引き続き開催される。 | ||
― | 日本国の外務大臣と欧州共同体加盟国の外務大臣及びEC委員会の対外関係担当委員(トロイカ)との間の半年ごとの協議が引き続き開催される。 | ||
― | 日本国の代表は,欧州政治協力の議長国から閣僚級の政治協力会合について報告を受ける。また日本国は,欧州共同体の代表に対して,日本国政府の外交政策について通報する。 | ||
双方は,本宣言に実質を付与するため,本宣言の実施を定期的に検討すること及び日・EC関係の発展に新たなる活力を間断なく付与していくことを目的として,既存の及び前記の協議の場を活用する。 | |||
1991年7月18日 ヘーグにおいて。 |