4. 日本国政府が関与した主要な共同コミュニケ等
(1) 第26回OECD閣僚理事会コミュニケ(仮訳)
(1987年5月13日パリ)
1. OECD閣僚理事会は5月12日,13日開催された。議長は,西独のマルチィン・バンゲマン経済相が務め,副議長は,デンマークのウフ・エルマン・ジャンセン外相,ポール・シモンセン蔵相及びニュージーランドのロジャー・ダグラス蔵相が務めた。理事会は,ハーバード演説40周年にあたり,ジョージ・C・マーシャル将軍が枠組を築いた国際協力についての慧眼に敬意を表した。
I . 成長の見通し改善
2. OECD加盟国の経済戦略は,最近数年に亘って経済成長率をプラスに維持しつつインフレを過去一世代で最低の水準に下げた。安定的かつ持続可能な成長の見通しを強化するため,即ち,ほとんどの地域において受け入れ難い程高くなっている失業の水準を大幅に低下させるため,主要国の大幅な経常収支不均衡を是正するため・為替相場の一層の安定を達しつつ為替相場の改善を強固なものにするため,及び開発途上国の経済パフォーマンスを改善するため,長期的努力が探求されなければならない。世界の繁栄のためにOECD加盟国が成し得る最大の貢献は,多角的開放貿易制度のもとで力強い経済を育むことである。
3. これらの目標を達成するために,閣僚は次のような広範かつ相互に補強しあう行動に合意した。閣僚は共通の意志に基づき国際協力の可能性を最大限利用するとともに,マクロ経済政策と構造調整の相互作用を最善の形で引き出すであろう。両分野の改善された政策は,生産と雇用のより強い増加のための戦略において相互に連関する要素である。両方の政策が不可欠である。マクロ経済政策は,期待を安定させ,中期的な信頼を醸成し,そして,成長見通しを強化する。ミクロ経済政策は,よりダイナミックでかつ対応力のある環境を作り出すが,そのような環境の下で成長及び調整の力はより強まり,また,マクロ経済政策はより効果的となる。
II . マクロ経済政策
4. マクロ経済政策は次の三点のニーズに対し同時に応えなければならない。その三点とは,期待の安定と信頼醸成に貢献する中期的な方向性を維持すること・主要国の非常に大きい現在の対外不均衡を解決すること,インフレなき成長と一層の雇用創出の可能性を最大限追求することである。成長と為替相場の安定の見通しのなかで調整が実現するためには,政策の国際的補完性と整合性が不可欠である。各国はこのような共同努力に対しそれぞれの貢献を行うべきである。特に,「ルーブル合意」の種々のコミットメントと最近のG7コミュニケにあるコミットメントの効果的実施は,早急に達成されるものとする。OECD加盟国は協力を強化し,状況に応じた政策要請のレヴューを継続し,必要に応じ一層の措置を講じるであろう。
5. 金融政策は,財政政策の支援を受けて,低いインフレという目標と実質潜在成長力とに合致するような貨幣供給量の伸び及び金融市場諸条件の維持に引き続き向けられるべきである。金融政策は,また,為替相場の秩序ある動きにも貢献すべきである。多くの国においてインフレ見通しが低いことを勘案すると,これらの国におげる金利の一層の低下,特に市場主導型の長期金利の低下は有益であろう。
6. 金融政策のみによる見通し改善の可能性は限定されているので,その可能性は財政面における一層の行動により高められる必要がある。
7. 米国においては,連邦政府の財政赤字は1986年の対GNP比5.2%から87年には4%以下に減りつつあるが,この赤字削減のプロセスは今後数年は継続しなければならないし,また,継続するであろう。このプロセスを断固として維持していくことは,対外的及び国内的理由から不可欠である。米国及び他のいかなる国においても経済主体の自信といったものは財政赤字削減に大きく依存している。つまり,低い金利及び安定的為替相場の見通し,生産的投資への十分な資金フローを伴った健全な経済活動,並びに保護主義の誘惑に陥ることに対する抵抗といったものは,結果的には財政赤字削減に大きく依存している。政財赤字削減の非常に有益なこれらの効果は,時間の経過とともに,米国におけるいかなる短期的デフレ効果をも上回ろう。為替相場の変化は米製品の費用競争力を改善してきたし,純輸出に良い効果を有するものである。
8. 日本にとっての目標は,既に生じている相当程度の交易条件の改善に合致した形での迅速な輸入の増加を伴いながら,生産を上回る内需のより迅速な拡大を図りつつ,より力強い成長を達成することである。外国の財及びサービスに対する国内市場へのアクセスを一層改善するとの日本政府の意図が再確認されたことも歓迎される。日本の関係当局は,内需の伸びを強化するため一層の相当規模の財政上及びその他の措置を講ずるであろう。これは中央政府の中期財政目標を損なわないであろう。この点に関し,最近発表された日本の内需拡大のためのイニシアティブは,日本経済の新たな方向付けのための広範な長期的努力の一環として注目される。
9. 西独においても内需の増加,特に民間投資の増加は,生産の潜在的な生産の増加を相当程度越えなければならない。成長及び対外調整を支えるために・西独政府は予定されている減税の一部を1988年1月1日に繰り上げるであろうこと,また,1990年にはより幅広い税制改革を実施するであろうことを既に発表した。このことは投資に好ましい影響を与えよう。更に,補助金の削減を含む構造調整のための諸措置が一層講じられるであろう。これらの措置は全体としてみれば,現在と1990年の間に一般財政赤字の対GNP比の増加につながろう。最近数年に亘る節度ある財政政策はこのような行動を可能としている。内需・特に民間投資の持続的拡大に深刻な危険がもたらされる場合には,成長とより高い雇用をめざす中期戦略は結果として調整されることとなろう。
10. 大幅な経常収支黒字を有する他のOECD加盟国においても,持続可能な生産に見合った内需の拡大を助長するための適切な措置をとるべきである。
11. いくつかの国は,財政政策に関しては厳しい制約に直面している。大幅な財政赤字を有する国は,引き続き財政赤字是正に高い優先順位を与えてゆかなければならない。もっとも,欧州においては,財政赤字は大きくないが,国際収支上の考慮から政策に制約がある国が少数ある。かりに,主要な貿易相手国において需要が強まるならば,これらの国における財政上の措置の余地は広がり,成長の見通しは改善されるであろう。後者の点に関して,またひとつの例として,EEC諸国の協調的経済戦略は,加盟国間の相互依存関係を活用することが可能であり,また,他の欧州諸国との共同歩調もあり得る。
III. 構造調整政策
12. 閣僚は,「構造調整と経済パフォーマンスに関する報告書」を歓迎した。ここ数年の改善にもかかわらず,OECD経済は依然大きなひずみと硬直性により阻害されている。これらは,現在のマクロ経済問題を複雑にし,成長を遅らせている。製品市場における競争の強化,要素市場における対応力の増加及び公共部門の効率改善は,すべての国において経済成長力に大きく貢献しよう。構造政策を再編するに際しての優先順位は,異なった国内事情のみならず国際的要請を反映し,各国で異なる。従って,協調行動が共通の原則に導かれることが不可欠である。改革からの最大の便益を確保するため,行動は広範,大胆,持続的で,かつ可能な範囲で国際経済協力に基づく必要がある。このような行動の効果は,主として中期的に現れるであろう。現在,行動をとることは,機会を拡大し,将来への自信を醸成することを通じて,インフレなき成長の強化及び失業減少のための現在の努力を支えることとなろう。構造調整の成功は,同時に公正さを増すとともに,すべての人にとり機会の改善を提供しうる。社会的対話の増加は,このプロセスの不可分の一部分である。
13. 産業に対する補助金は,国内及び国際的な経済歪曲及び構造調整に対する障害の源泉となる程のものである場合は,削減されるべきである。従って,産業補助金についてOECDが着手した作業は奨励され積極的に推進されることとなろう。
14. 構造調整に関する報告について経済政策委員会が作成した結論が承認された。この結論は,今後数年の行動を導くであろう。事務総長は,ミクロ経済と構造問題に関するOECDの作業について,適当な間隔をおいて次回以降の閣僚理事会で報告するよう要請された。
〔貿易政策〕
15. 国際貿易は,競争を通じて,経済の効率性と成長を高めるための最も強力な手段となる。国際市場の機能を阻害し,または,歪曲する措置は,構造調整を妨げ,時代遅れの経済構造を維持し,消費者利益を損ない,効率的な投資に対するインセンティブを弱め,また,それらのことにより経済成長を制約する傾向がある。従って,特に,二国間のまたは差別的な貿易制限措置を指向する最近の動きをくつがえし,多角的開放貿易体制の強化,拡大のために決意をもって行動することが,至上の重要性を有する。OECDは,貿易政策の種々の側面についてのモニタリングを強化する。
16. ウルグァイ・ラウンドは,1990年代及びそれ以降の貿易についての改善された枠組作りにとり,またとない機会である。保護主義の新たな兆候及び二国間ベースでの紛争処理がプンタ・デル・エステ宣言あるいは同宣言により開始された交渉過程への信頼を損なうことのないようにすることが不可欠である。閣僚は,これらの動きに抵抗し,先進国及び開発途上国の全てにとり利益となる均衡のとれたグローバルな成果に向けての交渉の迅速な,持続的かつ実質的進展のため作業するとのこれらの国々の決意を確認した。OECD加盟国は,種々の交渉分野を含む包括的な提案を数ケ月以内に提示し,スタンドスティル及びロールバックについて既に合意した各国のコミットメントを履行し,及び国内保護主義圧力に対抗することによりその決意を明らかにしよう。プンタ・デル・エステ宣言を遵守するにあたって,閣僚は「交渉の実比及び結果の実施は一個の事業全体の一部分として取り扱われる。然しながら,交渉の早い段階で達成された合意は,交渉の正式な終結を待たずに,合意により暫定的あるいは確定的に実施することができる。早期に合意がなされたとしても,右は交渉の全体的なバランスを評価するにあたって勘案されなければならない。」ことを再確認した。
17. 閣僚は,サービス貿易に係わるOECDの作業における歓迎すべき進展に留意した。これは,ウルグァイ・ラウンドにおいてサービスが含まれることになったことに照らして極めて重要である。サービス貿易の自由化の概念の精緻化のための一層の関連作業及び「貿易外取引及び資本移動の自由化に関するOECDの規約」の強化のための関連作業の継続が必要である。これは積極的に取り進められる。
18. 閣僚は,1984年及び1985年のOECD閣僚理事会の指示に応えて,「公的に支持された輸出信用に関するガイドライン取極め」の参加国間において最近達成された合意を歓迎する。その合意により,取極めは大幅に強化され,貿易及び援助に対する歪曲の危険性が減少することとなろう。閣僚は,また,これに関連するDACガイディング・プリンシプルについての最近の合意を歓迎した。これらは,困難な時期における協力の目に見える証しである。
〔農業〕
19. 貿易委員会と農業委員会との共同報告(C/MIN(87)4最終版)が承認された。この重要な作業は,主要農産物の市場における深刻な不均衡を明確にしている。供給は,農民に対する市場のシグナルの適切な伝達を妨げてきた政策により増大され,有効需要を大幅に上回っている。農業政策のコストは,政府予算にとっても,消費者にとっても,また,経済全体にとっても大きい。更に,行き過ぎた助成政策は,世界市場における競争を一層歪曲し,国際貿易の根源である比較優位の原則に逆行し,また,多くの開発途上国の状況を著しく害している。この悪化の一途にある状況は,技術変化や低経済成長,為替相場の大幅な変化といった要因と相まって,国際貿易に深刻な困難をもたらしており,農業貿易の領域を越えて拡がる危険性を有している。
20. 現在の状況下においては,いかなる国も何らかの責任を有している。状況の悪化は喰い止められ,反転されなければならない。いくつかの国あるいは国のグループは,この方向に沿って行動を開始した。しかし問題は広範かつ緊急性を有する故,農業政策についての協調的改革が均衡のとれた方法で実施される。
21. 改革は,次の原則に基づくものとなろう。
a. 長期的な目標は,農業助成の漸進的かつ協調的な削減及び他のあらゆる適切な手段を通じて,市場のシグナルが,農業生産の方向づけに影響を与えうるようにすることである。このことにより,資源のより良い配分がもたらされ,消費者及び経済一般を利することとなる。
b. 農業改革の長期的目標を追求するにあたり,食糧の安定供給の確保,環境保全あるいは雇用全般等の純経済的でない,社会的及びその他の要請に配慮することができる。長期的な目標を達成するための政策の漸進的是正には時間を要するであろう。このことからも,遅滞なく政策の是正に着手することが一層必要である。
c. 最も緊急に必要なことは,現在の市場不均衡のこれ以上の悪化を避けることである。次のことが必要である。
―需要面では,OECDの域内及び域外における見通しをできる限り改善すること。
―供給面では,生産刺激的な保証価格及びその他の措置を削減することにより・生産量の制限を課すことにより,あるいは,その他の手段により,供給過剰の拡大を回避する措置を実施すること。
d. 行政的な決定により生産制限が課され,あるいは農業生産資源が引き上げられる場合には,そうした措置がその経済歪曲効果を最小限にするような方法によりとられるべきであり,また市場メカニズムがよりょく機能し得るような方法で立案,実施されねばならない。
e. 農民の所得支持は,価格保証,あるいは生産,または生産要素に結びついた他の措置を通じて行われるよりも,むしろ,適切な場合には,直接的な所得支持を通じて行われるようにするべきである。このような方法は,特に恵まれない地域の,また農業部門における構造調整の影響を受ける低所得の農家の必要に応えるうえで格別に適したものと言える。
f. 農業部門の調整は,農村地域での様々の活動の発展のための総合的政策により支援されるならば,促進されるであろう。こうした政策は,農民及びその家族が,補完的な,または,代替的な所得を得ることの一助となろう。
g. 以上の原則を実施していくに際して・政府は,そのコミットメントを達成するための必要な手段の選択に柔軟性を保持する。
22. ウルグァイ・ラウンドは,決定的な重要性を有する。プンタ・デル・エステ閣僚宣言とその諸目的は市場アクセスの改善と農業貿易障壁の軽減をもたらし,多国間及び多品目ベースでの農業の助成及び保護の漸進的削減を含むOECD諸国の閣僚によって合意された農業改革に当たっての原則の実行に必要な方策のかなりの部分に枠組を提供するであろう。パラグラフ16で合意されたようにウルグァイ・ラウンド交渉は,他の分野におけると同様この分野においても精力的に遂行され,包括的な交渉案が今後数ケ月のうちに提出されよう。ウルグァイ・ラウンドにおいては,一方的になされた行動に適切な考慮が払われるべきである。
23. 現在の緊張を緩和し,もって,ウルグァイ・ラウンド全体につき可能な限り早期に進展する見通しを強めるため・OECD加盟国政府は,スタンドスティル及びロールバックについてのコミットメントを速やかに履行するとともに,より一般的に,交渉の雰囲気を悪化させるような行動を差し控える。各国政府は,特に,過剰農産品の生産を刺激し,国内市場をより一層国際市場から隔離する結果となるような行動を新たにとることを差し控える。加えて,各国政府は,余剰在庫の処理につき責任ある行動をとり,対立的であり安定を損なう貿易慣行を差し控える。
24. 農業改革は,独りOECD加盟国の利益となるものではない。農産物輸出国である開発途上国は,世界市場の回復により利益を得ることとなろう。農産物輸入国である開発途上国は,自国の農業部門を強化することにより,その経済発展の基礎をより堅固な基盤の上に置くことを奨励されよう。
25. 農業改革は,OECD加盟国にとり,大きくかつ困難な問題である。これらの克服のためには,国際協力の強化が必要である。OECDは,その作業を一層掘り下げることにより問題の解決に貢献し続けるであろう。即ち,OECDにおいて開発に着手され始めた分析手段は,最新のものとし,また,更に改善することにより,多くの点でとくに有益なものとなるであろ先また,上記の種々の行動及び原則の実施状況をモニターする。事務総長に対し,1988年の閣僚理事会において進捗報告を提示するよう要請する。
〔金融市場〕
26. 金融市場及び金融機関の自由化のプロセスは継続されなければならない。こうしたプロセスから派生する明白な利益を確かなものとし,市場の活力と安定性を確保するため,市場の健全性確保の見地からの監督に関し,政策の整合性と収斂を増強することを目指して,適切なフォーラムで努力が強化されるであろう。
〔税制改革〕
27. 大部分のOECD諸国が,大きな税制改革を実施したか,あるいは,検討している。適切に立案された税制改革により,マクロ及びミクロ双方のレベルで経済パフ才一マンスはかなり強化され得る。税制改革にあたっては,簡素,公平,並びに勤労,貯蓄及び投資の意欲に与える歪曲効果の軽減を主眼とするべきである。OECDの関係諸委員会は,加盟国における税制改革の検討に積極的に寄与し,国際的な側面に然るべく留意しつつ税制改革を実施するための最良の方法について考慮することになろう。
〔技術の変化〕
28. 技術の開発と普及は,生産力,雇用,及び生活水準向上の鍵である。技術変化のプロセスは,利用されるべき種々の機会を提供する。こうしたプロセスの種々の要素を分析,解釈することに関し,OECDでは既に多くの作業がなされてきた。技術進歩をより良く理解しより良く活用するため分析を深めるべく,様々の技術関連問題に統合,包括的なアプローチを定めることが現在必要に思われる。このようなアプローチを発展させ遂行するとの事務総長の意図は歓迎された。1988年の閣僚理事会に経過報告がなされよう。
〔雇用と社会,経済改革〕
29. ほとんどの国において失業問題が深刻であることに鑑み,三つの領域での社会・経済改革が特に重要である。これらは全て様々な度合いで政府だけでなく民間部門・労使にも関係がある。第一に,多数の国において,教育訓練制度の質を改善し,急速な構造変化をしている社会経済のニーズにより適合したものにしていくことは,緊急に必要である。第二に,構造変化や技術変化が加速するにつれ発生する新しい仕事に就くことを容易にするために,より柔軟な労働市場が必要である。第三に,離職者や失業者に所得補償を与えるだけでなく,特に訓練を通じて労働や地域雇用イニシアティブのような他の有益な活動に復帰するための機会とインセンティブを提供するように雇用及び社会的保護政策が発展する必要がある。これらの領域におけるOECDの活動は強化されるであろう。その主目的は1986年11月に開催された労働大臣会合で合意されたように,今後の労働市場政策の新しい枠組みを準備することにある。
〔環境〕
30. 持続的な経済発展のために必要な資源基盤を維持するだけでなく,生活の質を守り改善するために,環境問題は政府の政策の中で高い優先順位を与えられなければならないとの一般的合意がある。OECD加盟国は,環境的配慮を政策決定過程のなかにより体系的かつ効果的に組み入れるためのアプローチと方法をOECD内で発展させよう。大事故に起因するものも含め,環境に有害な物質の放出をより効果的に防止するために必要とされる政策について作業が強化されることとなろう。この関係で国際協力が強化されるべきである。最近提出された国連・環境開発世界委員会の「我々が共有する将来」と題するレポートが加盟国政府とOECDにおいて詳細に検討されるであろう。
〔エネルギー〕
31. 昨年は,石油,ガス,及び石炭の価格が大幅に下落した。低エネルギー価格は幅広い経済的利益をもたらす一方・エネルギー消費を増加させ,エネルギーの域内生産を減少させる傾向がある。チェルノブイリの原子炉事故は,原子力の安全性の側面を強調した。これらの出来事は,1990年代に予想されるエネルギー市場の逼迫の度を強める可能性がある。国際エネルギー機関理事会は,1987年5月11日閣僚レベル会合を開催し,エネルギー及び石油の低価格によりもたらされる全般的な利益を引き続き確保しつつエネルギー政策の目標を推進するために,多くの分野における現在の諸政策を強化することを合意した。これらの分野には,域内エネルギー生産,エネルギーの効率的な使用,発電における使用を始めとする一次エネルギー源の多角化,自由かつ開かれたエネルギー貿易の推進,石油供給途絶への対応策,環境問題に対する適切な認識等が含まれる。
IV . 開発途上国との関係
32. 相互依存関係の高まりを特徴とする世界において,開発途上国の経済問題及び経済パフォーマンスは益々多様化している。多くの開発途上国,特にアジアの国は大きな前進をした一方で,他の多くの国はここ数年経済的後退に苦しんできた。開発途上国との経済協力は,開発・貿易,債務及び融資といった重要な分野における様々の能力とニーズに対応したものでなければならない。先進国は,より一般的な国際経済の利益だけでなく開発途上国の利益のためにも,開発途上国の成長と輸出のためのより良い環境を確保することに尽力すべきである。この点に関し,このコミュニケに述べられている政策方向と目標を実施することは,より良い世界的見通しのためのOECD諸国による重要な貢献となるであろう。
33. 開発途上国自身の経済政策がその経済活動においてひとつの重要な要素であり続けるであろう。国内外の信頼,貯蓄及び投資はこれらの経済政策に大きく依存している。健全な開発プロセスを確立するため経済政策改革を現在実施している多くの開発途上国は,改革された市場アクセス及び政府開発援助を含むすべての可能な手段により支援,激励されなければならない。この点に関し,政府開発援助の質及び効率の改善だけでなく,援助の量を維持し,可能な限り増やすことが重要である。経済力が既に大きな開発途上国は,多角的貿易制度の権利と義務において全ての役割を徐々に果すようになるべきである。民間部門が提供する可能性を十分に活用することが重要である。
34. 多額の債務負担は,多額の債務を負った中所得国における成長にとり依然として大きな障害である。これらの問題解決のために採用された協調的戦略に代わりうる代替案は今のところない。すべての関係者,即ち債務国及び債権国政府,国際金融機関及び民間銀行を巻き込んだ,ケース・バイ・ケースでのより緊密な協調的行動が成長促進的環境の中でこれらの緊張を減ずる唯一の方法である。いくつかの国にとっては,このプロセスに注目すべき進展があった。しかしながら,調整と融資プロセスの諸困難は改善の必要性を示している場合もある。民間及び公的な融資双方における革新的かつより柔軟なアプローチに向かう流れが,債務負担をより扱いやすくし,資金フローを回復するために重要な役割を果すべきである。
35. 低所得国の債務問題はより一層手詰まりな状況にある。強力な成長指向的調整プログラムを実施しつつある最貧国,特にサハラ以南アフリカの債務返済負担を軽減するための追加的行動について,OECD諸国は最近種々の提案を行った。現在行われつつある債権国政府間の討議から早急に結論が得られることが緊急に求められよう。
36. より貧しい開発途上国にとって,適切な譲許的資金の供与は不可欠である。この点に関するOECD加盟国の実績は既に相当なものであるが,一層高められるべきである。援助の量や形態は,政策改革プログラムやより広範な開発努力のために増大しつつある要請に呼応したものでなければならない。改善された開発政策やプログラムの支援のための援助の使用,また,開発途上国との援助調整の強化を目的としたDAC(開発援助委員会)の新ガイディング・プリンシプルは歓迎された。
37. 一次産品に依存する開発途上国は,多くの一次産品の見通しに鑑み困難な問題に直面している。世界の成長の加速は,これらの諸国の見通しを改善しその経済を多様化しよう。一次産品依存体質を構造面及び開発面における是正のための新たなる努力がなされるべきである。一次産品貿易を歪曲している施策を除去する行動は,一次産品に依存する開発途上国の輸出見通しに重要な貢献をするであろう。
38. UNCTADVIIは,世界経済の主要問題や政策問題に関し,貿易と開発について共通の認識と効果的な政策を促進することを目的として開発途上国と討議するための機会である。