3. 東西経済関係の中のココム

第二次大戦後今日まで,国際政治は基本的に東西両陣営間の力関係を基礎として成り立ってきた。我が国を含む自由主義諸国は,このような事実認識の下に,共産圏諸国に対する戦略物資の無制限な輸出は,自由主義諸国の安全保障に悪影響を及ぼす脅れがあるとの判断から,その輸出規制の必要性を認めている。このような輸出規制は,各国が個々別々の基準でばらばらに実施するよりは,各国間で申し合わせた一定の基準によって,協議しつつ実施することが適当であり,このような考え方に基づいてココム(COCOM;Coordinating Committee for Multi-lateral Strategic Export Controlsの略称。1949年設立,日本は1952年以来その活動に参加)が設けられた。

最近のソ連におけるペレストロイカ,INF全廃条約にみられるような関係の安定化に向けての米ソをほじめとした東西間の動きについては,その成り行きを今後とも慎重に見守ってゆく必要があるが,以下の活動を行っているココムの必要性についての我が国を含む自由主義諸国の認識は現在も不変である。

ココムは戦略物資の対共産圏輸出規制についての自由主義諸国政府間の非公式の協議機関であり,パリに事務局を置き,現在16か国(米,英,仏,西独,イタリア,カナダ,オランダ,ベルギー,ルクセンブルグ,デンマーク,ノルウェー,ポルトガル,ギリシャ,トルコ,スペイン,日本)が参加しており,主として次の分野における活動を行っている。

(1) 規制対象品目(物資・技術)リストの作成と改訂(リスト・レビューないしリスト合理化)

(2) 規制対象品目の例外的輸出承認(特認)

(3) 輸出規制の執行振りについてのココム参加国間での協力・調整(執行協力)

(4) ココム規制の実効性を確保するための第三国への協力の要請(第三国協力)

ココムの活動がこのように対象国の軍事潜在力の強化に寄与する戦略的に重要な物資,技術を規制することにあるところがら,その活動の詳細については,参加各国の申し合わせにより具体的には明らかにしないことになっている。

今日の世界が基本的に東西両陣営間の力のバランスの上に成り立っていることは,今なお厳然たる事実である。戦略的に重要な高度技術面において西側にとっての優位性を維持していく一方,日進月歩の技術進歩の状況を踏まえ,既に戦略性が低下し,規制の必要の無くなった品目については規制の対象から除外し,東西経済交流に不必要な障害を設けないことは,東西間の安定した関係を構築していく上からも重要である。そのためにも,規制の対象は真に戦略的なものに限り,これらの品目については規制の一層効果的な執行・管理を行っていくことが必要である。

我が国は,87年に明らかになった東芝機械の対ソ不正輸出事件が,我が国を含む自由主義諸国全体の安全保障に重大な影響を及ぼすものとして深刻に受けとめ,外国為替及び外国貿易管理法改正をはじめとする我が国の輸出管理体制の強化に精力的に取り組んできたところである。

我が国は,また,ココム代表の水準の向上や増員を行い,ココムの場における各種の活動に積極的に参画してきており,今後共,参加各国と協調しつつ,自由主義諸国における先進技術国家としての責任を果たしていく必要がある。

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